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吸血鬼が来た!

 「ただいまー……って、親父は出かけたのか」

 帰宅すると、明りは付いておらず、親父の気配も無かった。

 夕飯でも買いに行ったのだろうか。

 ピーンポーン!

 自室に戻ろうと、階段を上がろうとしたそのとき、玄関のチャイムが鳴った。

 「宅配でーす」

 この聴きなれた声、いつもの運輸会社だな。

 荷物は親父あてのものだろう。

 「はーい」

 返事をして玄関を出ると、やはり見馴れた運輸会社の制服が立っていた。

 用紙を受け取りサインをして返すと、トラックの荷台で待機していた二人が巨大な木箱を運び込んできた。



 親父は昔から魔物や聖遺物を収拾するのが趣味で、無職になった今でも続けている。(そのせいで母に愛想を尽かされたというのは言うまでもない)

 この木箱の中身もそういった(たぐい)のものだろう。

 それにしても、一体何が入っているのだろう?

 長さは二メートル、幅は七十センチほど。どれだけ大きなものが入っているのか、それとも複数の荷物が入っているのか。

 俺は『開けたい』という衝動に駆られたが、押し止まる。

 例え家族とはいえ、勝手に荷物の中身を見るのはいけないだろう。

 とりあえず、リビングにまで運ぼうと木箱を掴んだ。

 想像以上に重い、一人で運ぶのは無理そうだ。

 無理に動かすと床を傷つけるかもしれないので、木箱を下ろそうとした、その時――。

 メキッ!バキィッ!

 乾いた音を鳴らして木箱の底が抜けてしまった。



 「あー……やっちまった」

 木箱は底が完全に抜けて中身が出てしまっていた。

 中身は黒い箱――棺桶(かんおけ)だった。

 しかも、十字架を(かたど)ったレリーフがいかにもという雰囲気を漂わせている。

 「まさか……中に何かいるんじゃ……」

 ガタッ!

 「今、動いた!?」

 一瞬、棺桶が動いた気がしたが……棺桶は全くの沈黙、どうやら気のせいのようだ。

 とりあえず、気味が悪いので親父が帰ってくるまで触らないでおこう。



 夜になっても、親父は帰ってこなかった。

 仕方が無いので、コンビニで弁当を買い、一人で夕食を済ませた。

 「この時間になっても親父が帰ってこないのは珍しいな」

 時刻は二十二時、明日は休日なのでもう少し待っていても大丈夫そうだ。

 


 日付が変わっても親父は帰ってこなかった。

 「遅いな、一体どこに行ってるんだ……ふぁぁ……」

 大きなあくびが出た。自習練で魔力を使いすぎたのか疲れていたようだ。

 ちょっと早いけど、もう寝てしまおう。

 いつもなら深夜番組を見たりするのだが、今日は録画でいいや。

 戸締りを確認し、俺は自室のベッドに横たわった。



 「……ん、親父か?」

 一階からの物音で俺は目を覚ました。

 親父が帰ってきたのだろうか。 

 文句でも言ってやろうと、俺は音がしたダイニングへ向かった。

 ダイニングに行くと、冷蔵庫を(あさ)る黒い影が見えた。

 「おい親父、こんな時間まで一体どこに行ってたんだ!…………あれ?」

 おかしいな、親父はこんなに髪長かったっけ……。

 しかも赤い、まるで鮮血のような深紅。

 親父の髪は白髪混じりの黒髪。

 こいつが親父ではないことは俺じゃなくても解る。

 「お前、誰だ?」

 その深紅に()くと、身を(ひるがえ)してこちらを向いた。

 目が合った。

 燃える炎陽のような眼だ。

 その迫力に気圧(けお)され、俺は一歩後ずさる。

 「誰……だと?」

 炎眼を向けたまま立ち上がり、訊き返してきた。

 凛とした女の声。

 俺はさらに後ずさりして、テーブルに腰をぶつけた。



 女が一歩前に出る。

 そして、窓から射し込む月明かりでその容姿が(あら)わになった。

 髪と目から(さっ)してはいたが、日本人の顔つきではなかった。

 整いすぎていて、『人間離れした美貌(びぼう)』とでも表現すればいいだろうか。

 「ふふっ、そんなに(わたし)に魅了されてしまったのか?」

 俺は無意識のうちに見惚(みと)れていたことに気が付き、視線を逸らす。

 「なかなか愛い奴め、やはりギンジの息子だな……」

 ギンジ?こいつ、親父のことを知っているのか?

 「それはそれとして、訊くなら先に名乗るのが礼儀だぞ」

 「あ、すいません!」

 咄嗟(とっさ)に頭を下げる。

 女は「別にいい」といった仕草で、頭を上げるように(うな)す。

 「無礼には目をつぶって答えてやろう。妾の名はコロナ、吸血鬼でありながら太陽の属性を持つ、究極生命体だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっとヒロイン登場

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