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まずは学園モノで非日常

 「うぅ……」

 土煙が立ち込める中、顔を上げると、倒れている直人が見えた。

 慌てて駆け寄ると、どうやら息はある。気絶しているだけのようだ。

 俺を押したのは直人だったのか……。

 おかげで直撃は避けられたが、直人はそうではなかった。ボロボロになっている。

 それでも大したケガが無いというのが流石。伊達に鍛えているわけじゃない。

 「それにしても……」

 ――コロナのやつ、派手にやってくれたな……。

 コロナと金髪少女の戦闘により、旧校舎は壁が崩れ、窓ガラスも粉々。

 もう業者より、この二人に解体を任せた方が良さそうなくらいだ。

 ――とは言え、このまま戦闘を続けさせると、近隣の住民にも危害が及ぶかもしれない。

 さっきも俺達が危なかったからな。

 そろそろやめさせないと――

 


 「おい、小娘。そろそろやめにしないか?」

 俺の心中を察したのか、コロナがそう言った。

 「……そうね。あたしも一般人にまで危害を加えるつもりはないし」

 ――おい、俺に剣を向けておいてよく言うな……。

 「正直、このまま戦ってもあなたには勝てそうにないわ」

 「そうか、威勢が良かった割には、やけに(いさぎよ)いな」

 「着実と言ってちょうだい」

 「そうなら俺を吸血鬼と間違えるかよ……」

 思わずこぼすと、少女に睨まれた。

 「キッ!」

 しかもコイツ、キッて言った!そう言って睨むやつ、本当にいたんだな……。

 少女は「ふん!」と鼻を鳴らすと、コロナに向き直った。

 「後始末はあたしがやるわ。あなた達は帰ってくれていいわ」

 「それは助かる」

 後始末って、どうするつもりなんだろう。

 まぁ、彼女には考えがあるのだろう。ならば、任せておけばいい。

 「カナタ、帰るぞ」

 俺は、直人を背負う(直人の方が身長も体重もあるので、引きずることになる)と、コロナと家路に向かった。



 翌日、教室に入ると、顔に絆創膏を貼った直人が気だるそうな顔をしていた。

 「直人、おはよう」

 声をかけて、席に座る。

 先週にあった席替えで、俺と直人は隣同士の席になっていた。

 「おはよう、金太……」

 「何だよ、疲れているみたいだな」

 「ああ、なんだか昨日は寝過ぎたみたいなんだよ……。それに、変な夢も見たし……」

 直人は昨日のことをあまり覚えていないようだ。

 ふと、何だか寂しい気持ちになる。

 昨日のことを夢だと思っているということ――魔法も夢だと思っているのだろう。

 まぁ、それは仕方が無いことかもしれない。

 一般人の直人と、魔法使いの息子の俺とでは、何かが違う。そんな気がする。



 「みなさん、おはようございます」

 しばらくすると、担任の教師が入ってきた

 彼女は、今年度から採用されたばかりの新人だ。

 名前は『田宮(たみや) ユウコ』。

 新人で、若い女性ということもあり。へたに貫禄がある教師より親しみやすい。

 うちのクラスでは彼女を『たみちゃん』の愛称で呼んでいる。

 『ゆうちゃん』と呼ばないのは、『一応先生なので下の名前はダメだろう』ということからだ。

 ――あだ名で呼んでいる時点でどうかと思うけど……。

 先生は舐められているんじゃないかな……。良く言えば、それだけ打ち解けてけているってことだけど。



 「それでは、朝のホームルームを始める前に、転入生の紹介をします」

 田宮先生から飛び出したのは、学園モノでありがちな、テンプレ台詞だった。

 そして、クラスがざわつき始める。これもありがちな反応だ。

 まだ新学期が始まって一カ月しか経っていない時期に転入生――これもありがち。

 この後の展開を予想すると――

 転入生は超のつく美少女で、またクラスのみんながざわつく。

 そして、先生は『では、転入生さんの席は……。そうね、そこの空いている席を使ってください』というテンプレ台詞を言うのだろう。

 ――と、瞬時に想像してしまう俺はアニメの見過ぎだろうか。

 否、これはフィクションの影響ではない。純粋な非日常への憧れだ。渇望と言ってもいい。

 とにかく、俺の学校生活は、突如現れた転入生によって劇的に変わる――そんな気がしてならなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

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