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12星座別恋愛小説

12星座別恋愛小説 ~おひつじ座~

作者: 黒やま

これはあくまで私の主観で書いたおひつじ座像ですので

この小説を読んで気を悪くしたおひつじ座の方がおられましたらご容赦下さい。

♈3月21日~4月19日生まれ Aries♈ 


*根性がある

*自己主張が激しい

*負けず嫌い

*正義感が強い

*理想の追求者



「では最後に、辻社長にとってこの会社はどういった存在ですか?」


「女手一つで育て上げてきた我が子も同然です、もちろんここで働いている社員もね。」


記者からの質問でそう答える女性、(つじ) 陽毬(ひまり)は若くして下着会社を立ち上げ


こうした雑誌にも記事が載るようになるまでに成長させた今注目の女社長である。


「陽毬さん!今のコメントかっこよかったです!シビレました~。」


「もう私嬉しすぎて涙が出そうでした~。」


「何言ってるんだか、ほら仕事するわよ!今日もバリバリ働きましょう。」


陽毬が手を叩くと一斉に社員たちがデスクに向かって仕事を始める。


最初は狭いビルの一室を借りて三人という少ない人数でスタートした会社も


今では社員百人を超えるものへとなり今も躍進を続けている。


「そういえば陽毬さん。さっきのインタビューって何の記事なんですか?」


「話題のアラフォー女性っていう記事よ。」


「そっか、今年で陽毬さんアラフォー世代突入ですもんね。」


「年を重ねていくにつれてますます綺麗になってるんじゃないですか。」


設立当時から共に働いている二人の部下は彼女を下の名前で呼び


プライベートでも親しくしている。


「褒めても何も出てこないわよ。」


「ですよね~。」


若くして事業も成功し順風満帆な生活を送っているようにみえる陽毬だが、


こと恋愛においては失敗つづきであった。


自我が強く負けず嫌いな性格は仕事上ではプラスになるものの


それが恋愛関係ではマイナスな方向に働いていた。


さらに会社を大きくすることに専念してここ数年は恋という単語すら忘れかけている自分がいた。


この歳ともなると周りの友人は結婚し、すでに子供も設けている。


たまに食事をする機会があるのだけれども皆家庭の話でもちきりだ。


やれ旦那の帰りが遅いの、やれ子どもが言うことを聞かないの


そのほとんどが愚痴だ。


恋はいいが結婚はしたくないものだとつくづく思ってしまう。


しかしその恋ですらしていない状況にある。


仕事に一心不乱に食らいついていくことに精一杯だった。


だが今では名前も知られるようになり会社の地位も確固としたものになっている。


恋を始める季節にはぴったりだし、女としての自分も大切にしていきたい。


私の中の愛の女神(アフロディーテ)が新しい恋を始めたくてうずうずしている。


そんなことを考えていたせいか、横にコーヒーを置こうとする手には気付かなかった。


いきなり目の前に腕が突き出され思わず驚いて座っているイスを引いた。


それにまた驚いて腕をビクッとさせてその反動でコーヒーをひっくり返してしまい


陽毬の鮮やかな黄色のスーツに大きく茶色の染みが出来てしまった。


「すっすいません!社長のお召し物に染みをつくってしまって・・・。」


「また派手にこぼしたものね。」


「本当に申し訳ありません。もちろんクリーニング代は私が出しますので。」


「いいわよ、これくらい。大事な書類にはかかってないし、

 それにクリーニング代なんて軽く払えるほど儲かってるんだから。」


「でも早く染み抜きしないと・・・失礼します。」


と言いすぐさま床に膝をつきイスに座っている陽毬のジャケットの染みを恭しく


自分のハンカチで落とす作業にとりかかった。


さきほどまでは腕しか視野に入ってなかったが今は全身が陽毬の視界に入っている。


染み抜きをする男、たしか今年入社したばかりの男ではなかったか。


陽毬は社長という役職から社員の顔と名前は全員覚えるようにしている。


名前は春日(かすが) 伊吹(いぶき)、営業部に所属している。


下着を扱う会社ということもあってか社員は女性が大半を占める。


なので余計に男性社員の名前は記憶しやすかった。


しかも彼はかの有名なM大学の文学部卒業である、


業績はうなぎ上りであるが大企業に並ぶにはまだ程遠い


しかも下着会社に何故就職を希望したかが陽毬には疑問だった。


「どうしましたか、辻社長。何か不備がございましたら何なりと仰ってください。」


見るからに好青年である伊吹は中身もなかなか感じが良い。


「いいえ、手際がいいと感心したのよ。もういいわ大分落ちたし、礼を言うわ春日君。」


「私の名前ご存じなのですか。」


「社員の名前を覚えるくらいどうってことないわ。」


「さすが社長です、感服いたします。」


「お世辞は結構よ。」


「私は真剣に申しております。本当に社長はすごい人だと尊敬しているんです。」


彼の表情はいたって大真面目である。


褒められて悪い気はしない、むしろ陽毬は上機嫌だ。


「もういいから、自分の仕事に戻りなさい。」


「では、これで失礼いたします。」


深く頭を下げると伊吹は仕事へと戻っていった。


彼のような人材を会社が獲得できたことは喜ばしいことだ。


それに顔も陽毬好みだ、彼の背中を見送りながらふと思った。


これはもしかして今まで頑張ってきた神からのご褒美なのではないかと。


そうであるならば利用しない手はない。






コンコンと会議室のドアを叩く音がする。


「入りなさい。」


「失礼します。」


中へ入ってきたのは伊吹、彼は陽毬に呼び出されたのだ。


社長からの呼び出しをくらった新入社員はやや緊張気味だ。


「あの、社長。やはりクリーニング代のことでしょうか。」


「そんな器の小さい女じゃないわよ、私は。春日君、今夜空いてる?」


「今夜ですか。」


「ええ、もし用事があってもキャンセルしなさい。こっちが最優先、飲みに行くわよ。」


「社長とご一緒してよろしいんですか、喜んで。」


夕方落ち合った二人はスーパーで酒やつまみを買い夜の公園へと向かった。


「もしかして花見ですか。」


「ご明察、夜の桜っていうのも趣があるでしょ。」


桜はライトアップされ薄ピンク色の花弁が一枚一枚はっきりみえる。


夜のせいかサラリーマンがやたらと多く


二人は隅に設置されているイスに腰を下ろした。


「「乾杯。」」


二つの缶ビールが触れ合う音がキンと響く。


「もしかしてかっこいいBARにでも連れて行ってもらえると思った?」


「とんでもない、こうやって奢っていただけるだけで感激です。

 けれど意外でした。私のイメージとは違っていたものですから。」


「ふふ、私も初めて。たまにはこういうとこも悪くないかってね。」


陽毬はつまみを取り出しさきいかを頬張り、伊吹に勧める。


「それより、私春日君に聞きたいことがあるの。」


「何でしょうか。」


「どうしてウチの会社受けたの?もしかしてどこにも受からなくて仕方なくとか。」


「まさかそんな気持ちで入社したわけではありません!私は辻社長の会社に入りたかったんです。」


「私の?光栄だけれども理由が聞きたいわね。」


「学生の時偶然見た雑誌に社長の記事が載っていて、それを読んで感動したんです。

 人一倍苦労しているのにそれを微塵も見せない姿に心打たれました。

 だから辻社長に逢いたくて入社したんです。それで今日私がしていいようなことでは

 なかったのですが、社長にコーヒーを淹れさせてもらいました。動機が不純ですよね。」


「そんなことないわよ。」


女神は私に微笑んでいる。


仕事も軌道に乗り目の前にはタイプの男がいて、条件は至極良い。


この好機を逃してはならない、タイミングは今。


「春日 伊吹、私とお付き合いしてくれる?」


「社長と私がですか?」


いきなりの交際の申し込みに伊吹はむせてしまった。


「ええ、けれど社長としての辻 陽毬ではなく一人の女性としての辻 陽毬と

 交際するかどうか。さぁ今すぐ答えなさい、社長命令よ。」


陽毬の命令口調めいた告白に伊吹はただ笑顔を向けこういうのであった。


「全く貴女には負けます。」

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