vending machine
「この世のすべてを手に入れられる自販機があるらしい」
そんな話を聞いたことはあるだろうか。
数年前から界隈でささやかれていた都市伝説だ。
掲示板に寄せられていた情報は様々だった。
場所は新宿だとか、渋谷だとか、はたまたどこかの駅のホームだとか・・・
俺だってバカじゃないから、そんなものは信じなかった。
だが、その自販機が今、目の前にある。
TIMEと書かれたアルミ缶に
Fameのプリントのペットボトル。
料金はどれも一律170円だった。
俺はまだ信じていなかったが、
確かめる価値はあると思った。
どうせ170円なんだから、間違っていても笑い話にはなるだろう。
とりあえず、マネー1000と書かれたエナジードリンク?のようなものを
買ってみる。
硬貨を順番に入れ、紫に光ったボタンを押す。
『ガタン!』
出てきた。
俺は少しの期待を抱えながら、缶を開ける。
『プシュッ!』
そして、飲む。
こういうのは勢いだから、一気に。
「ぷはぁ」
飲んだ。一気に。
そして、普通だった。
対して変わらないごく普通のエナジードリンク。
(うそ。ちょっとまずかった)
「やっぱ違うか。」
そういいながら、ダメもとで財布を見る。
「1000円札が1枚、2枚・・・あれ?」
一枚多い。確実にだ。
3000円しか持ってなかったのに、4000円ある。旧札だ。(←新札にしてくれ)
やった。やったぞ!
俺は見つけてしまった。なんでも手に入る自販機。
これがあれば何でも手に入るんだ。
金も、女も、何もかもだ。
「いけない。ここで欲におぼれたら、絶対にめんどくさいことになる。」
そう言いながらも、答えはすでに決まっていた。
自販機に札を乱雑に入れ、ひたすらボタンを連打する。
しかし、
『ピー』
ボタンは赤くなり、商品は出てこない。
おしまいだ。
フィクションだと絶対罰が当たる奴だ。
「クソッ!どうしてわかってたのに・・・」
「どうかしました?」
その時、横から男が現れる。
そして、自販機を見るなり言った。
「在庫切れですねぇ。今補充するので、ちょっといいですか?」
そういって男は鍵を取り出すと、自販機を開け、
飲み物を補充しだした。
俺が唖然としているうちに、男は手際よく仕事を済ませ、
「あざしたー」
と言いながら台車を押して去っていった。




