ルリの日記:5
私はいま、ものすごく腹を立てている。こんなに怒るのは300年ぶりくらいだ。
ランプの宿を早めに引き払うことになったので、今夜はコルーのピリ辛焼きを思う存分食べようと思っていたのに。ここのコルーはのピリ辛焼きは絶品だ。柔らかくジューシーな肉に絡む甘辛のタレ。ピリリと香辛料の効いたなかにも、どこかフルーティーな味わいがある。
なのに、手始めに5人前注文した直後、騒ぎが起きておあずけになってしまったのだ。ようやくありつけると思ったら、支給分はたった3人前しかなかったのである。
本当は10人前くらいは食べるつもりでいたのに。
あのときの絶望と怒りをどう表現したらいいのか、私には分からない。
それもこれも、この宿に嫌がらせをしたり、放火をしたりした不届き者のせいだ。そのせいで女将が倒れ、レストランの営業がとまったのである。
その不届き者とは、あの長い偽名を名乗る、黒いオーラをこびりつかせた女に違いない。証拠はないが、なくても分かる。あれは悪い思念にそうとう魂を食われている。自分勝手な思い込みで罪を犯し続けてきたのだ。
市場にいたときも、変な服装をして宿の主人におかしなことを言っていた。私は関わらないほうがいいと思ったのだが、沙世さまが気にしていたので、しかたなく私の探偵スキルを駆使して極秘に調査したのだ。
だがやってみると、久しぶりの探偵はなかなか楽しかった。
尾行も聞き込みも私は得意で、変装の術には特に自信がある。沙世さまにも教えてあげたので、今後の人生に役立ててもらえれば幸いである。しかし、女神さまの旦那さまの浮気調査でつちかったスキルが、まさか人間界で役に立つとは思わなかった。
そう言えば、女神さまとは相変わらず連絡が取れない。まさか旦那さまの浮気の証拠をつかんだのだろうか?女神さまのことだから、浮気相手に戦いを挑んだりしそうで心配だ。大切な綺麗な金の玉を運んでいる最中なのだし、あまり無茶なことはしないでもらえるとありがたいのだが。
本当は連絡がついて女神さまが来てくだされば、あんな女はすぐに成敗できるのに。神の裁きに物的証拠などいらないのだ。ただ魂を見れば良い。でも今の状況では仕方ないので私が成敗してくれよう。
あの女は頭が悪くてプライドばかりが高いから、少しつついてやればすぐにボロを出すだろう。きっと一日あればじゅうぶんだ。自分で自分の墓穴を掘らせてやろう。
滞在が伸びればそのぶんコルーのピリ辛焼きが食べられるし、一石二鳥である。




