ルリの日記:1
私は百年に一度の重要な仕事を女神さまに仰せつかった。綺麗な金の玉の依り代として選ばれた沙世さまとともに、この仕事を無事にやり遂げなければならない。後々のためにも記録をつけておこうと思う。
昨日、ようやく沙世さまを連れてティーダル島に上陸した。綺麗な金の玉を沙世さまに移す儀式も無事に済んでホッとしている。
沙世さまははじめ疑わし気なようすで、ティーダル島へ来ることを渋っているように見えた。しかし女神さまがうまいこと説得してくれたのだ。事前に調査してあった沙世さまのデータをもとに、心にもない労いの言葉をかけ、口先だけで丸め込んでしまった。さすがは女神さま。
綺麗な金の玉の依り代に選ばれるには条件がある。それは日本という国の未婚の女性であることだ。この条件に当てはまる人間でないと綺麗な金の玉が体に移らないそうだ。あとは女神さまの気分で候補が決まるのだが、女神さまは沙世さまの魂の色が気に入ったらしい。沙世さまは「素直で思いやりにあふれる色」をしているそうだ。
沙世さまとはまだ2日しか一緒にいないが、人間とはいろいろ面白いものだなと思う。誰も見ていないのに着替えるのを恥ずかしがったり、外で風呂に入りたいと言い出したと思えばまた見られるのを心配したり。さっぱり理解できない。
頬を抓らないと現実と夢の区別がつかないというのも不思議だ。人間の脳とはいったいどんな構造なのだろう。
とは言え旅は順調で、沙世さまにもご満足いただけていると思う。海で楽しそうにはしゃいでいたし、今日は美味しいと評判の定食屋でランチもした。本当にあの店の料理は絶品だった。これから美味しいものがたくさん食べられると思うと楽しみ、じゃない、沙世さまに楽しんでいただけるだろう。
沙世さまによると、人間は綺麗な景色を見ると嬉しいらしい。この島には美しい自然がたくさんあるから、きっと楽しんでもらえると思う。
私は女神さまに仕えて千年ほどになるが、こんな風に人間と深くかかわるのは初めてだ。これまでの私の役目は、女神さまの夫が浮気しないように監視することだったのに、急にこんな大役を仰せつかって最初は困惑した。だが、これは人間を知るいい機会だと思うことにしよう。
明日はあの洞窟に行く。あそこには少々困ったモノがいるが、たいした害はないだろう。
そんなことよりアレがちゃんと手に入るかが気がかりだ。明日も頑張って働こう。




