JKとバス停と変態と
悠斗がバス停に着いたとき、そこには一人の女子高生がベンチに座っていた。彼女は制服を着ていて、どこか可愛らしい雰囲気をまとっている。夕方の柔らかな陽光が彼女の髪に反射して、まるで絵画のような光景を作り出していた。悠斗は一瞬立ち止まったが、躊躇うことなく彼女の隣に腰を下ろした。ベンチは狭く、二人の肩が触れそうなほど近かったが、女子高生は特に気にする様子もないようだった。
悠斗はそっと彼女の方に目をやった。彼女の横顔は整っていて、頬に少しだけ残る幼さが印象的だった。彼の心臓が少しだけ速く鼓動を打った。チラチラと彼女を見ているうちに、気まずさと好奇心が混じった妙な気分が胸に広がっていく。それでも彼女は平然と前を向いたまま、スマホを手に持っているだけで何も言わない。
風がそっと吹き抜け、彼女の髪が軽く揺れた。その瞬間、女子高生が突然口を開いた。振り向くでもなく、視線を動かすでもなく、ただ静かに、悠斗に向かって言葉を投げかけた。
「ねえ、さっきから何見てんの?」
悠斗は彼女の言葉に一瞬頭が真っ白になり、焦った声で口を開いた。「いや、あの、その、可愛かったから触ってみたいなと思っただけで…!」自分でも何を言っているのか分からないまま、本音がポロリとこぼれてしまった。言った瞬間に後悔が押し寄せ、顔が熱くなるのを感じた。
女子高生は呆れたような表情を浮かべたが、視線は依然としてスマホの画面に固定されたままだった。彼女は小さく息をつくと、まるで面倒くさそうに一言だけ呟いた。
「変態。」
悠斗は彼女の一言にカチンときて、思わず語気を強めた。「変態とはなんだよ、変態とは!俺がこうなるのはさ、君が可愛いから悪いんだぞ!」声が少し震えながらも、勢いで言葉をぶつけた。自分を正当化しようとしているのか、ただ感情をぶつけているだけなのか、自分でもよく分からないままだった。
女子高生はスマホから目を離さず、相変わらず無関心そうな態度を崩さない。悠斗の言葉が終わると、彼女は小さく鼻で笑うような音を立てた。そして、画面をスクロールする指を止めずに、さらりと一言。
「それって言い訳?」
彼女の冷静な声に、悠斗は返す言葉を見つけられず、ただ黙って顔を赤らめるしかなかった
悠斗はムキになって、さらに声を張り上げた。「ちょっとくらい触らせてくれてもいいじゃないか!」勢いに任せて言ってしまったものの、その言葉がバス停の静かな空気に響き渡ると、さすがにまずいことを言ったと気づいた。でも、もう引っ込みがつかず、ただ彼女の反応を待つしかなかった。
女子高生はようやくスマホから目を離し、ゆっくりと悠斗の方に顔を向けた。彼女の目は冷たく、まるで値踏みするような視線が彼を貫いた。数秒の沈黙の後、彼女は静かに、だがはっきりと一言。
「気持ち悪い。」
その言葉がナイフのように突き刺さり、悠斗は言葉を失ってその場に固まった。
悠斗は意地になって、半ばやけくそ気味に言い放った。「気持ち悪くて結構だよ!触らせてくれるまでここを動かんからな!」声に力を込めて彼女を睨みつけたが、内心では自分がどれだけ滑稽に見えているのか薄々気づいていた。それでも、意地っ張りな性格が彼をその場に留まらせた。
女子高生は悠斗の言葉を聞いても表情を変えず、ただ軽く眉を上げただけだった。彼女が何か言い返す前に、バスのエンジン音が近づいてくるのが聞こえた。バス停に影が差し、ゆっくりとバスが停車した。彼女はスマホをポケットにしまい、何事もなかったかのように立ち上がると、悠斗を一瞥して一言。
「じゃあね、動かない人。」
そのまま彼女はバスに乗り込み、ドアが閉まる音とともに悠斗を置き去りにした。バスが走り去るのを呆然と見送りながら、悠斗はベンチに座ったまま動けなかった。