八話 日常
修学旅行を終えて、早何日、何か月たっただろう?
もう1か月ほどしか現世に降りれない。
言い換えれば、一か月経ったら、天国に行かないといけない。
なのに、最近エヌがいないことが多い。
「仕事がやべえ」
とか言ってたけど、ほんとかな?
1人の管理係中に別の仕事やらせるのかな?
ブラックって言ってたし、ありそうだけどなー。
でもさ、せっかくだし一緒に居たいんだよなー。
「ああ、つまんなーい」
とりあえず、私は日課のごとく現世に降りる。
小鳥のさえずり、ゴミ収集車の音、照り付ける太陽。
こんな日常をここで感じれるのもあと一か月だけなのか。
まだ一か月もあるのに、とてつもない喪失感に襲われてしまう。
前、エヌが言ってた。
「本当に死んだときは、天国か地獄に行った時だけだ。
ここ、淀にいるのは、まだ死んでない」
ってさ。
淀に来てる時点で死んじゃってるんだろうけど、天国か地獄に行けば、もう現世に降りれないし、そのせいでもう忘れらされていくからって言ってた。
聞いたときはさ、私たちは幽霊で現世に降りたって誰からも見られてないし、声も届かないんだから、死んじゃったその時から忘れ去られいてくんじゃないの?
って思ってたの。
でも、今思えば、いるかもしれないって、ほんとに死んじゃったのって思われてるうちが、淀にいる期間なんじゃないかって。
淀に居れば、そういう風に思ってもらえてるんじゃないかって。
どうしたって時間がたてば、死んでしまうし、忘れられてしまう。
それが怖い。
だから、今のうちにどうにかどうにか楽しんでおきたい。
恐怖なんて忘れたい。
でも、1人なんて、孤独でなんてヤダ。
エヌと一緒に居たらこんなこと考えなくていいのに。
能天気の話を聞いてれば、ずっと笑顔でいられるのに。
「エヌ、早く戻ってき、、、、、」
連絡用の携帯がなった。
『佐々井様、至急淀にお戻りくださいませ。
お知らせがあります。』
何、お知らせって。
私何かしたっけ。
ま、いっか。
仕方ない。
早く帰るか。
淀に返ってくると、案内役のような死神によくわからない部屋に通された。
「どこここ?」
案内してくれた死神も何も言わないで、ここまで連れてきてくれたから、尚よくわかんなくなってきた。
すると、ドアが開いた。
「こんにちは。佐々井様。」
野太いおっさんのような声なのに、イケオジみたいな雰囲気を醸し出してる人が入ってきた。
この人は人と言って良いのだろうか?
エヌの上司か何かかな?
「こんにちは。えーっと、どなたですかね?」
「ああ、すみません。
自己紹介を忘れていましたね。
佐々井様の管理係のNの直属の上司にあたります。
弔神と言います。
死神全体のなんて言うんですかね?
死神を従えてる?
違うな。
死神の使い手といったところ、ですかね。」
そう言いながら微笑む弔神さん。
何の用なんだろう?
「な、なんで呼ばれたんですかね?
いまいち状況掴めてないんですよね、、、」
「そうです、ね。じゃあ、早速ですが本題に入りますね。
実は、佐々井様の管理係を行っていたNがですね、
規約違反を犯してしまいまして、処罰の結果、死神剥奪、管理係交代、死神時の記憶剥奪が決定しました。
それに伴って、佐々井様の管理係も交代することになり、こちらの死神Rを代理として、残り一か月の淀、現世での生活を楽しんでもらえればなと思っております。」
弔神の横に立っている死神R。
え、待って。
エヌが規約違反?
そんなことほんとにやったの?
処罰されたら、もう会えないかもしれないし、会っても覚えてないかもしれないの?
そんなのやだよ。
やだよ、やだよ、やだよ、やだよ、やだよ、やだよ。
酷いって。
「エヌはな、なにをしたんですか?
規約違反って、、、」
弔神さんが重そうに口を開く。
「いや、言いたいところではありますし、言って納得してもらえればいいんですけどね。
それも規約で言えない決まりとなっていまして、申し訳ございません。」
「それで満足しろって言うんですか?
じゃあ、もう一回、もう一回ぐらい会わせて下さいよ。」
弔神さんは突然私が大きい声を出したからか驚いていた。
「いや。まだ、処罰は実行されてないにせよ、それはちょっと、、、」
「なんで、規約だからってそれを飲み込んで、我慢して、納得しないといけないんですか?
私だって、こんなに早く死にたくなかった。
でも、死んでしまった。
この運命を飲み込ませてくれたのはエヌなんですよ。
私を慰めてくれたのはエヌなんですよ。
私にとってエヌは大事なんですよ。
必要なんです。
心の支えなんです。
なのに、なのに、なんで、、、、
なんで、そうやってなんでもかんでも私から取り上げようとするの?
私が、、、私が何やったって言うの?」
そういうのやめてよ、もう。
これ以上私から何も取ろうとしないでよ!
「もう一回で良いから、会わせて!」
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