二話 死神N
「ヨド?死神エヌ?どういうこと?
私は死神によって殺され、地獄に行かないといけないってこと?」
死神Nとやらは表情1つ変えずに、淡々と答える。
「淀とは、天国AからZまたは地獄AからZを決めている際の場所です。
いわば、待機所ですね。
恐らく天国や地獄が複数個あるというように教わって育ってきていないでしょうが、実際は一つずつに故人が集まりすぎると、問題が発生してしまうので、分割をするような制度となっております。
その分担を決めるのに特段大きな理由はありませんが、少々時間がかかってしまうものなので、ご了承ください。」
「へぇ、、、、」
「また、死神と名乗っておりますが、佐々井様が想定しているような邪悪な存在というわけではございません。
死後の世界『淀』を司る神の下僕の略称と言ったところですかね。
実質、死神っていう大層な名前である必要ないんですけどね。
上がそうするっていう方針なんでね仕方ないんですよ。」
「、、、、、、はぁ、、、」
「あ、ちなみに僕は殺してないですから、佐々井さんのこと。
不慮の事故ってやつです。」
「私はどう頑張っても死ぬ運命だったってこと?」
「そうっすね。
あと、タメ口でいいですかね?
敬語苦手なんでずっと使ってると疲れるんですよね」
「まぁ、いいけど」
随分グイグイと来るもんだから、これまで生きてきて培ってきた死神のイメージが総崩れだ。
「やったぁ。疲れたぁ」
つい、死神Nが純粋なもんだから、笑いが堪えれなかった。
「ふふっ、面白いね死神君。
てか、なんて呼ぶの私、あなたのこと」
死んでしまったことの苦しさは、生前の決心のお陰か幾ばくか楽だった。
「死んだのに、よく笑えるね。
無理しない方がいいよ。
まぁいいんだけどね。
俺のことはエヌか内藤とでも呼んでよ」
「内藤、、、ん、じゃあエヌって呼ぶよ。
てかなんで内藤?」
エヌは戸惑ったのか、動揺したのか少し間が空いて、
「最近、ここに来た内藤ってやつがさ、お気に入りでさ。
バカなんだけど、良いやつなんだよ。話おもろいし。
まぁ、今は現世に降りてるけどな」
懐かしそうに楽しそうに、内藤という人を思い出しているようだ。
「現世に降りてるって?」
「あぁ、まぁ、分かりやすく言えば、人間に実害を与えない幽霊になって、今までの世界に戻るって感じかな」
家族がどうなったのか、咲姫が元気なのか、気になることは山ほどある。
「それに条件ってあるの?」
「まあ、一応。
上が承諾すれば、いけるっすね。
条件は、なんだっけな。
えーと、確か、未練の多さと生前の罪とかを総合的に判断して、許可出してもらって行くって感じだね。行きたいの?申請出すけ、、、、」
「行きたい!」
私は食い気味にそう言う。
エヌは驚いた顔をしながら、
「わかったよ。
どんくらい行きたい?
一日から半年までの期間自由選択できるけど。
まあ、みんな半年しか選ばないんだけどね」
私の答えは一つだった。
「半年。申請から承諾までどんくらいかかんの?」
「えー、一週間ぐらいかな。
上も人手不足だし、そんなに早く捌けないんだよ。」
「分かった。出しとくよ。それまでの間は淀の一室で過ごしてもらうよ。ここよりもっと明るい場所だから、目だけは気を付けてね。」
「うん。」
意外にもエヌが優しいという事実に驚きが隠せないが、そんなことは気にせず、エヌに従い、淀の一室こと2005号室に案内された。
高鳴る胸は静まることを知らなかった。
未熟者ですが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
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