十三話 最後のカウントダウン
ついに、私の淀での記憶がなくなる当日になった。
午後に私は淀での記憶消去が実行される。
それまでは出来る限り出来る限り内藤君と話し続けることにした。
内藤君とは、付き合ったというわけではないが、二人で思いは伝えてあってある。
今更、付き合ってくださいなんて言ったて、そんなことでさえも忘れてしまうんだから。
もうここまで来たら、怖いものなんてないな。
いや、それは強がったかもしれない。
ホントは、内藤君との淀での思い出を忘れたくない。
なんなら、ずっと覚えていたい。
でも、自分で決めたことなんだから、どんなことも受け入れないといけないんだよな。
天国に行けば、内藤君は死神を辞めてるんだし、あの真っ黒の制服も脱いでいるから、すぐわかるかもしれないな。
「内藤君、私が記憶なくなっても、私は内藤君を見れば、思い出せるはずだから、いっぱいここでのことを話してあげて。」
「早くないか?それは、ほんと最後の最後で良いんだよ?
もっと気楽に居てくれよ。
今の関係性も今だけだからさ。
先輩・後輩関係の時はこんなにいっぱい話してなかったろ?」
確かに、焦りすぎているのかもしれない。
ずっと怖くて、それを隠さないとって思っちゃってて。
「奈央、大丈夫か?
俺のせいで、こうなってるんだけどさ、正直怖いよな。
俺だったら、怖くて、逃げ出そうとしてるかもな。
だから、奈央はしっかり向き合ってくれててすげえなって偉いなって思うよ。」
そう言って励まして、慰めてくれる。
内藤君が苦しまないように、こういうことは話さないようにしようって、
私の選んだやり方だから、内藤君は気にしないでほしいって
約束したのにな。
「ごめんね、なんか心配してくれて。
でも、そういうことは言わないって約束したでしょ?」
「ごめんごめん、でもさ、、、、」
「いいのいいの。
最後だし、何したら良いんだろうって思ってたんだけど、全然思いつかなくってさ、
ボーっとしちゃってたね。」
出来る限りのフォローをしたけど、このやり方であってるのかはよく分からない。
よく考えれば、内藤君には八つ当たりしてたかもな。
私が自分が死んじゃったことを認めるのがつらくて、仕方ない時に、きつく言っちゃったかもな。
「内藤君、なんか私、内藤君に変なこと言ってなかった?
ここ来てから。
八つ当たりしちゃったかもって思ったんだけど、、、、」
「え?
別にそんなことなかったと思うよ。
なんなら、当たってくれていいよ。
どんなことでも受け入れてみせるよ。」
そう言って、白い歯を光らせる内藤君。
今日もいつになくイケメンだな。
いつも思ってきた感想を今日も今日とて抱いてしまう。
エヌとして見てきたからこその、この何とも言えない感動ももう感じることはできないんだな。
なんか残念だな。
ギャップあって、これもこれで好きだったのにさ。
次、この記憶もない私は久しぶりに見る内藤君にどんな反応をするんだろうな?
意外と、冷めた反応とかしてたら面白いかもなー。
でも、ぜったい言葉失ってるから、叫んでるだろーな。
こんなことも容易に想像できちゃうとか私単純だなー。
我ながら、そんなことも思ってしまう。
「そろそろだね、奈央。
なんか俺も緊張してきたな」
「なんでよ。
ああ、もう、エヌとしてやってた内藤君を見ることができないのかー。
ギャップあって意外とよかったんだよねー」
「なんか、ところどころタメ口になってるのに、『内藤君』は変な感じするし、『鷹夜』でいいよ。
なんなら、最後くらいは鷹夜って呼んでくれよ?
天国で会うときは、鷹夜とも呼んでくれず、また内藤君呼び聞かないといけないんだからさ。」
「分かったよ、鷹夜」
「え、呼んでくれんのはや。
ありがとっ」
すごく嬉しそうな顔を浮かべながら、こちらを覗き込んでくる鷹夜。
でも、内藤君って呼ばれるのあんま好きじゃなかったんだ。
それは良くないことしてたな。
ま、もう、注意も出来ないし、気を付けて呼ぶこともできるのは今の記憶がある私じゃなくて、
生前の記憶しかない私だけなんだからちょっと張り切ってなんかやっておこうかな。
「鷹夜、ずっとずーっと好きだよーーー。
これからも、これまでもずっとずーっと。
大好きだよ。」
今の私にはもう恥ずかしさというものはない。
記憶を失ってしまうという最強の矛と盾を手に入れているからね。
「奈央ー、俺の方が好きだから記憶なくなっちゃっても忘れないでねー。
俺の気持ち言い直すの恥ずいからさー」
「やだよー、しっかり忘れていくから、もう一回しっかり言ってね。
楽しみにしてるからー」
そろそろか。。。
言えることは言ったかな。
いっぱいいっぱい好きって言ったし、思い出も振り返れたしな。
結構満足な、淀での生活だったなー。
最初の方はどうなるかなってすっごい怖かったけど。
めっちゃ楽しかった。
さ、行くか。
「じゃあ、鷹夜。また後でねー。
大好きだよー」
「俺もだよー。
俺、いっぱいいっぱい言ってあげるから。
『大好きー』ってさ。」
「頼んだー」
私たちは笑顔で次を迎えるんだな。
さようなら、淀での生活。
さようなら、さようなら。
ptとpv絶賛伸び悩んでるんで、慰めて下さいw




