一話 最期のカウントダウン
視界が霞んで、全身に激痛が走る。
体に力が入らない。
はぁはぁはぁ、、、
もうダメなのか。
瞼がそっと落ちてくる。
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今日は妙に体が重い。
そのうえ、背筋を何かが通る気がする。
何か嫌な予感を察知しているかのごとく。
気のせい、そう言い聞かして重い瞼を強く擦る。
ああ、ホント眠いんだよなぁ。
昨日、もっと早く寝ればよかった。
ていうか、今日の時間割りゴミじゃん。
行く気なくなったわ。
はああぁ。
思わずため息が出ちゃったわ。
ささっと、トーストとヨーグルトを食べて、あくびを押し殺しながら家を出る。
バカみたいに冷えきっていて、息を白くさせる外の世界に開始1秒でK.O.しかけたけども、なんとか生き長らえている。
鞄からイヤホンとスマホを取りだし、イヤホンを耳に差し込みいつも通りのプレイリストを再生する。
大好きなアーティストの曲にノリノリになりながら、口パクで歌ってみる。
「Yeah~ 今日も〜」
口パクとか言いながらも思わず口ずさんでしまっているな。
ルンルンしながら、歩いていると咲姫が
「何聞いてんの?」
と右のイヤホンを強奪していった。
ホント、乱雑なんだから。
「また、この人たちの歌聞いてんの?
奈央、ホント好きだね~」
と、からかうかのように言ってきた。
からかうようっていうかからかってきてたけど、、、
「はいはい、そうですよ。私はこの人たちしか聞きませんよ」
そう拗ねたように言いながら、咲姫からイヤホンを取り返し、適当に巻いて片付ける。
よく考えてみれば、言ってることめちゃくちゃだよな。
すると、何故か咲姫が大爆笑している。
「その、流れでヒス構文言い始めそう」
笑いすぎて、途切れ途切れになった言葉を頑張って聞き取ろうとしてみるが、正味何言ってるかはわかんない。
「そんなに大爆笑する要素あった?」
「なんかヒス構文言ってる奈央、想像したら面白すぎた」
「それ侮辱でしょ」
今日も今日とて、こんな他愛もない馬鹿みたいな会話をしている。
横を通っていく車が吹かせる風を浴びながら歩いていると、何かはわからないが少し嫌な予感がした。
ふと後ろを振り返るとよろよろと蛇行運転のように運転している車がいた。
徐々に速度を上げながら。
「ねえ、咲姫あれやばくない?」
「だね。事故らないといいんだけど」
咲姫はあまり気に留めていないようだが私は強い恐怖感がどんどん膨らんできていた。
やっぱりこんなにのんびり歩いてちゃダメだ。
咲姫と一緒に早く行かないと危ない。
だけど、そんなことを考えている暇もなく、もう、すぐ近くに近寄っていることぐらい、大きくなってくるエンジン音を聞いて察していた。
絶対に私達の方に来るっていう確証はなかったけど、なぜか勘がずっとそう言っている気がする。
早く歩かない、、、と、、ダメだ。
足が強ばって、震えて、言うことを聞いてくれない。
「ごめん」
そう言いながら、私は咲姫を強く押した。
キィィィィィィィイ
「ぁっ」
と口から溢しながら、あの車が来ないであろう方によろけていく咲姫を目に焼き付ける。
やりたいことあったな
後悔の念も唱えさせてもらえないことを、悟ってしまう。
無情に響いているエンジン音。
私が次に瞬きをした瞬間、背後から強い衝撃を受けた。
痛すぎて、言葉も出ない。
全身に広がる激痛、衝撃。
そして、ぼやけて見える叫んでいる咲姫の姿。
瞼が落ち、私は意識を失った。
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私が次に目覚めたのは暗い、明るみのなくなった空間だった。
明るみのなくなったというか、真っ暗な空間というのだろうか?
自分がいる場所以上に咲姫が大丈夫だったのかを心配してしまう。
すると、ぎょろっとした目と白く輝いた歯が暗闇から突然現れた。
「こんにちは、佐々井奈央さん。
私、佐々井様の淀での行動管理係になった死神Nと申します。
これから、佐々井様には1週間ほど、この淀で生活していただくことになります。
わからないことがあれば何なりとお申し付けくださいませ。」
初心者ですので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。