表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/23

エピローグ 幸せな日々

最終話です。

読んでいただき、ありがとうございます。

今日は、アゼルティーナ王立学園の入学式。

真新しい制服に身を包んだボクは、校門の前に立って、荘厳な校舎を眺めている。


今日から、いよいよ始まるんだ。

朝から、ずっとわくわくしていた。

だって・・・。


「ヤン!入学おめでとう!!」

左腕に、生徒会役員の印である二本線の刺繍の入った制服を着て

門の向こうからボクを迎えてくれるのは、アナとルカだ。


アナとルカは、最高学年の17歳、

ボクは、今年の春15歳になった。


「アナ、ルカ、嬉しい! ありがとう!!」

ボクは、たたっと校門を駆け抜けて、えいっとアナに抱きついた。

「はあああ/// ヤンったら、相変わらず可愛い♡」

アナはぎゅうぎゅうとボクを抱きしめて、ボクの髪に頬ずりをする。


アナの豊かな胸に埋まって、ボクは真っ赤になる。

風に揺れるふわふわの濃茶色の髪、少しつり目の赤みがかった瞳に、抜群のスタイル。

アナは、すごく綺麗でいい匂いがする。


「おい、アナ。注目浴びてる。めんどくさいことになるぞ、ほんと。」

ルカは大きなため息をついてから、ボクを見下ろして、にっと笑った。

木漏れ日を受けて、きらきら輝く蜂蜜ブロンドに少し垂れ目の灰青の瞳に、怜悧な口元。 

背も高くなったルカは、まるで王子様だ。


「ルカも。久しぶり! 今日から、よろしくお願いします!」

アナから離れて、ぺこりとお辞儀をする。

さらりと揺れたボクの黒髪を見て、ルカは少し目を見開いてから、

「ああ、楽しめよ。」

と言って、にこりと笑う。


「なあなあ、その子、誰?」

そのとき、ルカの後ろからひょこっと顔を出すのも、どうやら生徒会メンバーのようだ。

ルカより少し背が低いが均整のとれた姿に、さらりと揺れるプラチナブロンドと若葉色の瞳、女子受けのよさそうな全体的に柔和な顔立ち。

制服の左腕にはやはり二本線の刺繍が入っている。


すると、横からアナが割り込むように入ってくる。

「会長、ヤンは私たちの大切な妹分です。無闇に声をかけないでくださいませんか。」

背の低いボクは、アナの背に隠れるようになった。

ルカも振り返ってアナの斜め前に立ちはだかったので、ますます相手の顔が見えなくなる。


「おいおい、そんなに警戒しなくても何もしないよ? 君たちの妹分だろ? 僕にだって、挨拶させてくれ。」

そう言って、結局、二人を掻き分けて、彼はボクを覗き込んできた。


「初めまして。アレンディス・フォン・アゼルティーナだ。」

柔らかい微笑みを浮かべるのは、まさかの本物の王子様だ。


ボクは慌てて、淑女の礼をする。

よかったぁ。マリアージュ様に教えてもらっていて。

「初めまして、殿下。ヨハンナ・ユストと申します。」


顔を上げると、興味深く見下ろす若葉色の瞳と目が合う。

「ふうん、ずいぶん綺麗な礼だね? 君、貴族科?」

「い、いいえ。わたし、は、芸術科です。」

「そう・・・。」

「・・・・・。」


えっ、この沈黙、一体どうすればいいんだろう?

ボク、失敗しちゃった??

マリアージュ様あっ!!


嫌な汗が出てきたところで、アナが私の右手を引いて言った。

「会長、挨拶はもう済みましたよね? 行こ?ヤン。ルカ、あとは任せたわ。」

「ああ、わかった。」

いいのかな?と思いながらも、アナに連れられて、その場を離れる。


アレンディス殿下はしばらく、遠ざかるボクたちを見ていたが、ルカに話しかけられて校舎へと戻って行った。


「ふう。全く。油断も隙もないわね。ねえ、ヤン。殿下の人当たりのいい笑顔に騙されちゃダメよ。いつのまにか上手く利用されちゃうから。」

と、まるで経験したかのように言うアナである。

「それに、ヤンもそろそろ自覚を持たないと! いつの間にか、こんなに美少女になっちゃって。」

アナは眩しそうに目を細めて、ボクを見る。


最近、ボクは髪も背中まで伸びて、男の子に間違えられることもなくなった。

胸の膨らみはささやかだが、学園の制服から見える手足や首は華奢で、艶のある黒髪に大きな琥珀色の瞳は、大人の庇護欲を刺激するのか、神官長たちや、ラ・フレイヤの皆が、とても可愛がってくれる。


「アナもね? それにルカも、王子様みたいだったね。」

「うふふ。ヤンもそういうことを言うようになったのね?」

楽しそうに笑うアナ。


アナは、強い癒しの術が使え、また、神殿に相談にくる人の相談にすごく親身なので、今では街で大人気の巫女である。

ルカは、その能力と容姿を買われて、後継のいない伯爵家の養子になり、今では貴族の一員である。

そういうわけで、二人はこの学園でも、とても人気があると聞いた。


「ねえ、ヤン?」

「なに?」

「しばらく、マリアージュ様のお顔を見ていないけど、お元気なの?」

校門近くの噴水のそばのベンチに腰掛けると、アナが心配そうに聞いた。

ボクもその隣に、すとんと腰を降ろして、にこっと笑う。


「うん!実はね、もう少ししたら、赤ちゃんが生まれるの。」

「えっ!ほんと!?」

アナがぱあぁっと顔を輝かせる。

「わああ。良かった! 良かったねぇ。」

「うん!!」


4年前に結婚したマリアージュ様とアルベルト様は、少し郊外にお屋敷を借りた。

そして、マリアージュ様は、ボクも一緒に住もうと言ってくれて、

三人と、あと優しい使用人たちで、暮らしている。


毎朝、空を見ては、晴れの日も、雨の日も、風の日も、

幸せそうに笑うマリアージュ様。

そんなマリアージュ様を見て、穏やかに微笑むアルベルト様。

そんな二人をそばで見ることのできるボクは、本当に幸せだ。


一陣の風が通り過ぎて、ボクとアナの髪を揺らしていく。

ボクが風を追って空を見上げると、木洩れ日の射す樹々の上で小鳥たちが幸せそうにさえずっていた。


Fin

完結しました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

初投稿から怒濤の2週間でした。


次回作は、まだ未定です。

マリアージュ×アルヴィスのお話は、二人が動き出してくれるまで、もう少し時間がかかりそうです。

書き上がって投稿が叶いましたら、またお会いしましょう。

もし、ご意見あればお気軽に感想をお寄せください。

また、応援のお気持ちを評価☆☆☆☆☆で表していただくのもうれしいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ