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2話「意外な出会い」

 そんなある日、家の前の道に座って本を読んでいると、誰かに声をかけられる。


「あの」


 まずい、怒られる!?


 ――そんな風に思ったのも束の間。


「その本、お好きなんですか」

「え」

「とても大事そうに読んでいるなって」


 声をかけてきてくれた青年は穏やかな表情だった。


 お叱りではなさそうだ……。

 取り敢えず良かった……。


「それに、その本、もう百回近く読んでいるでしょう?」


 艶のある金髪に凛々しい面が印象的な青年だ。

 しかも良い家の出であることを想わせるような身形である。


「え。あ、はい。でもどうして……」

「そんな匂いがしますよ、紙から」

「か、紙から? そうですか? 初めて言われました……。確かにお気に入りではありますけど」

「見れば、近づけば、分かります」


 彼はそう言って微笑む。


「そうですか……! それはすごい……!」


 私を分かってくれそう、そんな気がして少し嬉しかった。


「僕はオイディールといいます。貴女は?」

「レジーナと申します」


 本を介して距離を縮めた私たちは名乗り合う。


 初対面であることは事実。

 でももはや心の壁など皆無だった。


「素敵なお名前ですね」

「え。そんな……そんなことないですよ」


 だがここで。


「レジーナさん、確かここのお宅の娘さんですよね」

「え!? ご存知なのですか!?」


 意外な展開に。


 私はこの家の影だった。ずっとそう。妹が光で、私は影。だから誰にも愛されなかったし、見てもらうことすらまともにはできず。そうやってこの年にまでなってしまった。


「ええ、お聞きしたことがあります」

「そうでしたか……でも、きっと、悪い噂でしょう?」


 言えば、彼は首を横に振る。


「いえ。読書好きな女性だと」


 言い方は淡白でさらりとしていた。

 でもその内容は心を傷つけるようなものではなく、むしろ、温かな気持ちを高めてくれるものだった。


「実は、僕も本が好きで」

「オイディールさんが? え、見えません」

「……よく言われます」

「あっ、ごめんなさい。失礼でしたよね、こんなこと……」


 見た目で決めつけるなんて良くない。


「いやそういう意味じゃないです」

「そうですか?」

「はい。それでですね、少し、お話でもできればと」

「私とですか?」

「ええ、レジーナさんと」


 ちょっと怪しいよね、なんて思いながらも。


「そうですね! 話しましょう!」


 せっかくなので、ここは一旦乗ってみることにした。


 本当にまずくなったらその時に逃げればいいや、くらいの思いだった。

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