1話「地味な女、でも本は好き」
私、レジーナ・エウトピクスは、二十歳になったばかりの地味な女。
髪は茶色で煌めきがないし、おしゃれにはあまり興味を持たずに歩いてきたし、お化粧にも詳しくなくて――そんなままでこの年になってしまった。
周りから「地味すぎ」とか「ぱっとしない」とか言われることは以前からあったけれど、正直なところそういう発言にはあまり興味がなくて、気づけばありのままの状態で今に至っている。
というのも、ずっと本を読んでいたのだ。
幼い頃から本を読んでその世界に浸ったり知識を新しく仕入れることが好きだった。
だからこそこんな感じで色気なく育ってしまったのだ。
その一方で、妹ミーレナーは、幼い頃からおしゃまさんだった。
そもそも容姿が整っているし、それに加えておしゃれしたり身を飾ることが大好き。
また、友人もそういう感じの友人が多くて、お化粧だって十代になってすぐの頃からはまって毎日のようにやっていた。
両親はいつもそんな妹ばかりを可愛がった。
でも可愛がるだけならいい。
私より彼女の方が可愛い、それは何となく理解できるから。
だが両親は彼女を可愛がるにあたってたびたび私のことを持ち出して言葉を紡ぐ。
……だから二人のことは嫌い。
妹を可愛がるためにわざわざ私を落とす必要なんてないはずだ。なのに二人はそういうことをする。それも、平然と。もちろん、私への気遣いなど一切無しに。その様は、まるで、私を敢えて傷つけようとしているかのようで。だからげんなりする。本当のところを言うなら、両親の顔はできるならもう一生見たくないくらいだ。
「ミーレナー、これあげるわ」
「えっ、いいんですの!?」
「前に欲しいと言っていたでしょう」
「ええ! わたくし、ずっと欲しかったんですの! 三日くらい!」
「どうぞ、今年のクリスマスプレゼントよ」
「やーったぁ! お母様ありがとう、大好き!」
そうよ、私にはいつもプレゼントだってないの。
私の目の前で妹には贈る。
それも最高のものを。
でも私にはない。
もちろん、今回だけではなくいつもそう。
いや、当然、くれくれと言う気はない。でも敢えてわざわざ見せつけるようなことをしなくてもいいのでは、と思ってしまう。
私は一番お気に入りの本すらよそで借りてきたものだったというのに。
……ただ、これに関しては、少し前に貸本屋のおじさんが無償で提供してくれたので今は私物となってはいるが。
この家に幸せはない。
だから、どこか遠いところに行ってしまいたい。
でも、それはまだ難しい。
若い女が一人で出ていったところでできることなど限られている。
どうしたものか……。