組織の長と対面 feet.醫田 学
目の前から唐突に走ってくる人間がいた。その男は靴が片方脱げていて印象的だったので,ん?とは思った。が,特に気にしなかった。それがいけなかったのだろう。俺の生物学の本が入った鞄をひったくった。と思った瞬間,男は消えた。
は?え?ん?と3人リズムよく反応した。
視界の端に偶然時計が目に入った。ふと,気づくことがあった。先ほど不幸なことが起こってから,ちょうど10分が経っている。
「じゃあ10分毎に龍くんを不運から守れってことね」「ああ」
住宅街を,龍が歩いている。そろそろ,なはずだ。
案の定,どこからか虫の羽音が聞こえてきた。左の家のベランダで,何かが動くのが見える。花に水をやる男性だった。彼は驚いて,花瓶を落とした。ちょうど,龍にぶつかりそうになる。
水愛が急いで飛び出し,花瓶に触れる。花瓶は触れられたところから透明に溶け出し,最終的には花まで水になった。
「大丈夫?」
龍がああ,と頷く。
龍はとても濡れていたが,水愛が瞬きすると足元に花瓶があるだけだった。雲行きが怪しいな。
KNIGHTの本部に着いた。その建物は大型ショッピングモールのような見た目だったが,一つ違うとすれば,あの大きな駐車場がないところだ。
入口のようなところに辿り着く。鉄製のような重厚感は溢れない程度のドアがあり,その右隣にポストのようなものがあった。
龍が急に,水愛もこの組織に所属しているのかを聞いてきた。
「うん。だから龍くんもきっとできるよ。」
相当不安になっているようだ。そこで俺は,ある友人のセリフを思い出し,それを言った。
「まあ,急に立ち上がって舞踊でも嗜まなければ大丈夫だろう」
どうした急にと聞いてきたので,
「俺の友人が言ってきたんだ。」と教えた。
そういえば,と思い出した。龍には今,不幸が舞い落ちているのだ。