学の家と水愛
「なるほどな。信じられないが靴を履いたら爆発して爪先が損傷を受けた訳だ。」学が手を翳すと,傷は嘘のように治った。
相変わらず恵まれた能力だな。「何か文句か?」いえいえ滅相もない。学の顔が一瞬翳った気がしたが,すぐにいつもの無表情に戻った。
「爆発系の能力者はこっちで探しておく。放課後は校門前で待ってる。今日からお前は居候だからな。」おい,言い方。「人はきゅうりじゃないんじゃなかったか?」図星だな。とりあえず,また放課後。ああ。予鈴が鳴り,2人とも急いで教室に戻る。
誰かと家路を歩くなんて初めてかもしれない。もっとも,自分の家ではなく他人の家だが。保所は昨日退出してきた。やはり,特に友達と呼べる人物もいなかったので,たぶん誰にも気づかれなかったであろう。
学の家は,一般のそれと比べるとかなり大きい部類に入るものだった。中に入ると,同い年くらいの女性がちょうど玄関をそうしていた。「あ,おかえりー」「ああ,ただいま。」
おや?この感じは?「違う。断じて違う。」
学は慌てて否定した。「私は河野水愛。学くんに雇われてる身です。龍くんだね。学から聞いてるよぉ。」おや,こちらにも個人情報を垂れ流していましたか。
「因みに彼女も能力者で…」「あ,そこからは私が。この手袋越しに触れたものを同じ体積分の水に変えるんです。まぁ,使い所あんまないけどね。」
水愛はウェデングドレスで着けるような手袋をひらひらさせた。
なるほどな。「水が飲みたいけど無い時は呼んでね。いつでも道端の石を水にしてあげるから。」なんか嫌だな。
「とは言え,水愛が能力で起こした物理的効果は無かったことになるがな。」というと?
「例えば,水愛が何かを水にしたとする。それで誰かの服が濡れた場合,水愛が能力を解除したら水で濡れてないことになる。ただ,使用形跡というか,使った現実は残ってるんだ。これもまた例えだが,水力発電で水愛が生み出した水を使って電気を生み出した時,水愛が能力を解いたら,本来水愛の水は無いものだから,送られる電気から水愛の水で発電した量が差し引かれる。」
「要するにめんどくさいくせに使い道があんま無い能力って事。」
なるほどなぁ。よくわかんなかったが,めんどくさいことはよくわかった。「よろしくお願いします。」水愛が握手を求めてきたので,それに応じた。
水愛はそこそこ好きです。自分でも可愛く書いたつもりですね。