永遠の二番手と親友feet.輪島 春
「だからずっと1位取れないんじゃないの?当たり前のこともできない。勉強もできない。それであんたの夢が叶うの?」
母は,僕の夢が薬剤師だと思っている。そんなことないんだけどな。本当は小説家になりたいし,勉強は嫌いだ。
「でも,」
「でもとか聞いてないの。お母さんはね,あんたのために言ってんの。こうして時間割いてさ。こんなこと言いたくないけど,こっちはあんたにめっちゃ金かけてんの。ごめんだけど」
それを聞いて,俺は小さい頃の記憶が頭をよぎった。嫌いなことの記憶は,嫌なことに自信がある。
父と母が喧嘩している。どこにいればいいかわからない。存在ごと消えたかった。
「あんたが家にいないから私が見せ場作ろうとしてやってんのに忙しい忙しいで全然やんないじゃない」
余計なお世話じゃない?そもそもお前が見せ場作らなくてもお前よりはお父さんの方が好きだよ。と,言ってやりたかった。
「でも,俺だってこの家族のためにお金稼いでるわけだし,できるだけ時間取るようにしてるよ,ごめんだけど。」
「ごめんだけどって何?キモい。あと,そういうのをマネハラって言うんじゃないの?」
心の中に息が溜まっていく。吐き出したくなったが,それができる雰囲気ではない。
自虐だろうか。前にキモいと言った言葉を使っているのだが。なんなら,マネハラもしている。完璧じゃないか。
今,なぜ怒鳴られているかと言うと,僕が学校の定期テストで3位を取ったからだ。今までずっと2位で,今回3位。つまり,順位が下がったことにお怒りなのだ。
詰まるところ,俗にいう毒親だった。話があまりにも知能が低く,くだらないから適当に流した。それでも,段々と心は削られていく。
「顔色悪いね。具合悪い?」
「いや,そうでもないけど。」
「怪しいな。地理の教科書忘れてきた?」
僕たちの地理の先生はとても厳しくて,教科書でも忘れたらどうなる事かわかったものではない。とはいえ,
「今日地理ないだろ。」
「元気ではあるっぽいな。よかった。」
今,僕のこうして穏やかに生きていけるのは,友達の田島 秋のおかげだ。予鈴がなり,急いで席に着く。
心が荒んで忘れていたが,来週から冬休みだ。クリスマスももう直ぐだが,母はお気に入りのKPOPアイドルに付きっきりで,祝うとしたらショートケーキ一切れ渡されて終わりだろう。