能無しの爪とトカゲ
またもや主人公のセリフに鉤括弧がつきません。前作のghostを読んだ方は理由がわかると思いますが,なぜそうなったかは多分おおかた十中八九わからないと思えなくもないと専らの噂。是非理由も考えながら楽しんでいただければ幸いです。
「どこまで覚えてる?」
橋の上からは川の流れがよく見えた。目の先には大きな岩がある。ここで死ねるなら本望だ。と,思いたかった。
しかし,ただ生きていてもどうしようもないから落ちることにした。これから岩に頭をぶつけて,あるいは川に流されて,死ぬはずだった。だが,足が固定されたかのように動かない。覚えてるのはそこまでだった。
ということを話すと,それで全部だ,と言われた。
彼は[[rb:醫田 > いだ]] 学と言うらしい。彼の能力は「不可能」でその媒体,能力には発動に必要な物がそれぞれあるのだが,学のそれは生物学の本らしい。なんでも能力の対象になったやつは不具合で一部の記憶が消えることもあるらしい。
能力とは,身近な人が死んだ時に1人ひとつ得ることがあると言うものだ。
俺の能力は「契約」。媒体である腕時計を手に取り,契約の内容を提示すれば何とでも契約できる。ただ,影響が強ければ強いほど反動がある。リスクを考えた時契約できるのはせいぜい小物くらいだ。
「OK。お前は確か1-Aの家入 龍だな。実家は?」ない
「保所暮らしか?」ああそうだよ悪かったな。
保所とは,正式名称「孤児衛生保護所」という名で,親の居ない子供を引き取っている施設だ。ただ,やはりそこで過ごす子供たちには大概いじめがつきものだ。
「悪くない。ついてこい。俺の家に住ませてやる。」乾いた笑いをが一方的に,それでいて短く耳に入ってくる。何か気に触るが,ついて行くことにした。
なぜか,ついて行った方がいいと頭が判断した。こいつには,初対面だが信頼感があった。
「忘れ物は?」ない。「手荷物は?」持った。「やる気は?」そこそこ。急にどうした?
その答えには応えてもらえなかったが,どちらも何も言わず俺たちは歩き出す。