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スカーレット・ライフリング  作者: 出汁 入子
5/6

2198年06月30日 ④

二人の仕事が始まって間もない頃の話

4

――指令室 同日 19:10――

「スカイポイント7便、ポイントBONDを通過、保安ヘリからの映像来ました!」

オペレーターの一人が主任の狛井彩(こまいあや)に向かって伝える。

「前のモニターに出して。」

狛井彩は前の机に手をつきながら標的機が映し出されたモニターを凝視した。


機体前方のコックピット後ろの周囲に円形の物体が複数並行して飛行していた。四方を囲むように4体が並行している。B-737をはじめ現代の航空機はコックピットの両脇にはだいたい高度計が設置されていて、4体のうち2体は高度計に近い辺りを飛んでいる。


「やっぱり(フレア)のせいですね。」

後ろから声がしたかと思うと、同じく教官の猫又葵(ねこまたあおい)が指令室に来ていた。もともと庭師、濱村野乃の指導担当、そして彩の元ペアである。

「複数の群体、しかも一律に同じ行動を取ってる。そして1個1個は小さい。直径40㎝の円盤が航空機と同期して飛んでいる感じね。」

彩は振り返りながら葵に言った。

「この強風下でも全く乱れなく機体に取り憑いて飛行している……規律の取れた群体ですねー…。しかも単体はとっても小さい……」

葵は彩の横に立ってのらりくらりと話を続けた。

「今日のRunway22担当は鬼崎さんと濱村さんの新人コンビじゃないですか……あなたが指導している新人の鬼崎さん、彼女の狙撃精度これは全部落とせそうですか?」

担当などとうに把握しているだろう。射手になって3か月のはるかに、弾道のシミュレーションを送ってそのまま1000m以上の距離から40㎝の物体を撃ち落とせなどと言うのは無理だろう、と言いたいのだ。

「何が言いたいの?今日の着陸用のRunwayに新人を当てるのがおかしい、とかかしら?」

彩は語気を強めて言い返す。同期でペアまで組んでいたのにいつしか腹の読めない、何かと煽ってくる存在となった葵。彩にとってはペースをかき乱してくる存在だった。

「そんなこと言ってないじゃないですかー……人が悪いですね。」

「どっちが人が悪いのよ……」

「ふふ……さあ……濱村さんは新人としても飛び抜けて優秀な庭師、鬼崎さんは全体でも射手でも成績最下位、なぜか選抜で残ったパッとしない狙撃手。力も大してないのに堂々としてるメンタルだけはすごいけど」

葵は彩の左に立ち、ニコニコした視線で見上げながら言った。顔は笑っているが感じは悪い。

「あの子、やる時はやるのよ。」

彩は葵の方は見ずに静かに言った。正直はるかの成績は飛び抜けて悪い。その点は葵の言った通りだ。

「ふーん……まあここまで目立った失敗してないですし多めに見てあげますか。まあ濱村さんのサポートが手厚いからでしょうけどね。」

庭師のサポートなしでは射手の狙撃も成功率は落ちる。それでも射手は花形でちやほやされる。

射手の彩は葵とずっと組んでいたが、いつも成果を言われるのは彩だった。当時から葵は射手に嫌味を飛ばしていた。いつものこと、と言えばいつものことだ。

「群体は機体とかなり同調して飛んでいるし、座標系の原点を機体の中心に設定して。そこから4体の座標を設定してシミュレーション、狙撃可能なポイントを4つに絞って。葵も暇なら手伝って。」

彩は苛立ちを言葉のところどころに混ぜながら、オペレーターに指示を出した。

ふふん、と口元だけ葵が笑う。笑って彩の横に立っているだけだ。

やっぱり、感じ悪い。

彩は唇の端を前歯で噛んだ。

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