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「はぁーーー。何故あんな奴に娼婦に入れ揚げる時間があって俺には無いんだ。こちとら成人まじかの真っ盛りな時期だぞ?なのに娼館どころか初体験までまだだ。一体いつヤレるんだ?

 オリビアは穢れることを著しく嫌っているし、娼婦は普通に無理だし。はぁーーー。どうしたらいいんだ」



 殿下が零したこの嘆き、しかと届きましたわよ!

 そこまでチェリーだった事を気にしていたのね!

 早く言っていただけていれば良かったのに〜!


 わたくしが何とかして解決して見せますわ!

 オリビア嬢にチャーリーがチェーリーだと言うことを気付いて貰えれば卒業出来るかも知れないのよね?

 あの子はとても察しの良い子だわ。だからねお昼ご飯を主菜からデザートまで全てチェリー尽くしにしてしまえばきっと察してくれると思うのよ!

 例えオリビア嬢が気付かなくても他の誰かが気付いて進言してくれるやも知れないでしょう?


 だって食堂のメニューをリクエスト出来るのは生徒会長だけの特権だもの。

 さあ、早速食堂のシェフの元に言ってお願いしてきましょう!



 ◇◇◇


 シェフを探して学園中を飛び回ったけれど全く見つからなかった。

 それもそのはずシェフはもうとっくに業務時間を終え自宅に帰っていた。


 シェフも見つけた事だし早くこれからのお昼はチェリー尽くしにしてと伝えましょう!


 って、ちょっと待って。

 どうやって伝えるのよ。薬師の時みたく紙に書いて渡す方法もあるけれど、あれだと殿下に事実確認されて終わりでないの。

 直接話しかける方法は無いかしら。


 こういう時幽霊さん(先輩)達はどうやっているのでしょう。

 よく誰もいない部屋から声が聞こえたとかあるから、絶対に声は出しているし、人間にも聞こえているはずなのよね。


 後は寝ている時に何かから話しかけられて魘されたとかも聞いた事はあるけれど……


 多分それよ!

 寝ている時か眠くなった時の意識が曖昧な時にわたくし達の声が聞こえてるんだわ!

 前者の誰もいないはずの部屋から声が聞こえたとかも、ほとんど真夜中で寝室に眠りに行く時の話だもの。

 後者に至っては完璧寝ているものね!


 きっとそうだわ!

 シェフが寝た時に耳元で話しかければ何とかなるわね!

 そうとなったら夜を待ちましょう!




 ◇◇◇


 夜十一時半。早くもシェフは眠りについてしまった。


 そっと寝ているのを確認してから耳の横に行き、こう囁いた。



『明日からお昼はチェリー尽くしにしなさい』

『鶏肉のチェリージャム煮』

『チェリーと赤ワインのソースがけステーキ』

『チェリータルト』

『チェリーパイ』

『チェリージャム』

『チェリーティー』

『チェリーゼリー』

『チェリーのパウンドケーキ』



 シェフが起きるまでずーと囁き続けた。

 今日から楽しみだわ。




 ◆◆◆


 王立貴族学園の食堂の専属シェフになり早五年。

 専属シェフになった時自分は、平民である僕が栄誉ある学園のシェフになれたと幸せの絶頂だった。

 が、その幸せは直ぐに崩壊した。

 相手は貴族の子女とありとても舌が肥えていた。

 学園のシェフになる前はそれなりの高級レストランで働いていて、腕には自信があった。


 なのに、この学園に来てから直ぐに自信を無くした。

 僕の作った料理を食べた生徒たちは皆無表情に料理を食べた。

 口角をあげることも、目を見開くことも、眉間に皺を寄せることも全くと言っていいほど無かった。


 何の感情もなく昼食を平らげ、食堂を出ていく。

 美味しいの一言も無ければ、不味いの一言もない。

 ただ、平凡なよく食べる味だと。


 どれだけ新しい料理を開発しようと、どれも在り来りなものをアレンジしただけに過ぎない。

 それを貴族の子女に出したところでたかが知れている。


 もう、こんな職場辞めてしまおう。

 これ以上いると全ての自信を失いかけない。


 そう思っていた時だった。

 僕に神の声が舞い降りたのは。



『明日からお昼はチェリー尽くしにしなさい』


『鶏肉のチェリージャム煮』


『チェリーと赤ワインのソースがけステーキ』



 な、なんだその聞いたことも無い料理は!?

 チェリーを肉と合わせる?

 果物を菓子以外にするなど聞いた事がない。


 いや、まてよ、少し聞いた事があるかもしれない。

 外国ではパイナップルという南国にしか実らないフルーツ等の果物をすりおろしたり絞った汁に塊肉をつけておくと肉が柔らかくなり絶品になると。

 パイナップルなんて果物はこの国では売っていなく、聞くだけ満足していたが、、、

 チェリーなら手に入る。


 これは試してみる価値があるやもしれない。



 仕事に行く前に市場でチェリーを大量買いし、自宅で一度試して見た。

 チェリージャムを作り、鶏肉を焼き、チェリージャムと他の調味料を合わせ、焼いた鶏肉と一緒に煮込む。


 出来上がった料理は見た目的には普通の鶏肉料理だ。

 問題は味だ。


 恐る恐る口にしてみればとんでもなく絶品だった。

 これはあの舌の肥えた子供たちでも満足させられる!


 早速食堂に向かい同僚たちにもこれを食べさせなければ。

 余った材料で大量に作り、それを冷めないうちに食堂に持って行った。


 同僚たちに使った食材を伏せ食べさせたら皆口を揃えて「美味いと」口にした。

 そして、どう作ったのかを聞かれた。

 正直に「チェリージャムを使ったんだ」と答えれば目を見開き驚いた。


 料理人である彼らがこれだけ驚けばいけるだろう。


 早速その日のメニューに『鶏肉のチェリージャム煮』を付け加え、その時を待った。


 昼はいつも通り生徒たちがつまらなそうな顔で食堂に入って来た。

 が、少しだけ違った。

 メニューを見て眉間に皺を寄せ一緒に来ていた学友とヒソヒソしたりする子もいれば、直接シェフ達に詰め寄るものもいた。

 その度に「食べてみれば分かりますよ」と言い料理を出した。


 すると無表情で食べていた生徒たちが目を見開かせ、口角を上げたではないか!!

 嗚呼、ようやく見れた笑顔。

 ずっとこの顔が見たかった。


 僕にこのレシピを授けてくださった神よ、貴方様を一生崇めましょうぞ。

 どうか、どうか、これからも僕を見守り続けてください。

 今よりももっと多くの笑顔を咲かせてみせます。

 貴方様がお教えしてくださったこのチェリー料理で!


もしよろしければ評価などよろしくお願いします┏○┓

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