チャーリー・ペンバートン
最近、自分の周りでおかしなことがよく起こるようになった。
教室の自席の前にはガタイの良い奴ばかりで黒板が見えにくく、その上消しゴムや筆記用具はよく落ちる。教科書は消える。
挙げ句の果てにはついさっき、ズボンが落ちてしまい上げようとしたところ鉄のように重くびくりともしなかった。
ズボンが落ちた時、丁度自分の想い人であるオリビアが隣にいた。最悪だった。その日着けていた下着は勝負下着でもなんでもないもの。
まあ、友人であるマックスがオリビアの目隠しになっていてくれたから見られてはいなかったと思うが、、、
問題はその後。
その時一緒にいた友人のカルロスと言う奴が『殿下だけに恥をかかせるわけにはいかない!』とか言い出して自分のズボンを下げ、レオのズボンも下げ、マックスのズボンも下げた。
その光景を見てしまったオリビアは逃げてしまい、挙句先生方にもその光景を見られてしまった。
その後、生徒指導室に連れていかれこっ酷く叱られた。
いくらズボンが重すぎて上がらなかったと言っても言い訳程度にも信じてもらえなかった。
ズボンは先生方が来て直ぐに重しが外れたかのように軽くなりすんなりとあがってしまったから、余計に信じてはくれなかった。
一応厳重注意というだけで済まされたものの、色々とダメージが大きい。
一体俺が何をしたというんだ。別に悪いことはしていないだろう!なのに何故最近変な事ばかり起こるんだ?
まるで誰かに悪戯されているようだ。
まあ、今はそんな事を考えていても何ににもならない。
今はマックスの事について考えなければならない事がある。
マックスのズボンをカルロスが無理矢理下ろした時一瞬見えてしまった。
貞操帯が。
あれは一体何だったんだ?一瞬見えた時何か見てはいけないものを見てしまった気がして直ぐに目を背けたけれど、あれはどう見ても貞操帯だろう。
何故あんなものをしていたんだ?
あいつは将来騎士になるために日々鍛錬しているが、それもその鍛錬の一種なのか?煩悩を消す的なやつなのか?
いくら考えても全く分からない。
本人に聞いてみるしかないか……
◇◇◇
放課後マックスを会議室に呼び出した。
最近は授業が終わり次第すぐに帰ってしまっていたが、今日は自分が呼び止めてしまったこともあり、かなり嫌な顔をされてしまったがやむを得ない。
「マックス、今日何故呼ばれたのか分かるか?」
「今朝の下着事件の事でしょうか?」
あっているが、あっているが、マックスが着けていたものは下着に入るのだろうか?
「ん、まあ、そうだな。そのー、なんだ、あれだ、あれ、」
「なんですか? あまり時間がないので焦らさず単刀直入に申してください。」
「うん、そうだな。いやー、そのお前がカルロスにズボンを下げられた時一瞬見えてしまったんだ、貞操帯が。」
意を決し伝えた。
いつもなら、思っている事を口に出すと気持ちが一気に楽になるのだけれど今は楽になるどころか、むしろ苦しくなった。
気持ちだけではない、心做しか部屋の空気が重くのしかかってより苦しくなる。
マックスの顔を見ると目を見開き、顔を青くし、汗を滝のようにがしている。
嗚呼、マックスよ、俺は信じていたんだぞ。
お前が貞操帯を日頃から付けているような変態ではないと。
なのに、何故そんなに言い訳がましい事を口にしているんだ!
「ち、違うんですよ、あれは、貞操帯じゃなくて、いや、貞操帯なんですけど、違くて、あれは、そう! 新手の下着なんです! だから貞操帯ではありませんよ! ね! ね! 殿下!」
おい、最初に貞操帯なんですけどって言ったよな?
新手の下着ってなんなんだ。
「言い訳はいい。別に口外するつもりはないから、どうか本当の事を教えてくれないか?」
「……分かりました」
曰く、一ヶ月ほど前にSM娼館に好奇心から行って見た事。
曰く、予想以上のもので、ハマってしまいその嬢に入れあげていると言うこと。
曰く、最近ではその嬢とプライベートでも会うようになった事。
曰く、その過程で貞操帯を着けるようになった事。
「そうか、そうだったのか。」
「……はい。自分でもまさかここまでハマってしまうとは思ってもいませんでした。殿下にお仕えする身でありながら……本当に申し訳ありません」
「いや、別にいいんだ。責めている訳ではない。ただお前には確か婚約者がいただろ」
自分の記憶違いでなければマックスには同い年の婚約者が居たはず。確か伯爵家の令嬢で名前をミア・ルグーといったか?
それなのに、何故娼婦と会うんだ?それもSM娼館の嬢と。
もし、そんな嬢と会っていた事がバレたら修羅場なんて話では済まなくなるだろうに。
「ご安心下さい! 絶対にバレたりしませんから! あの女は自分の事もろくに話さないし、私の事もろくに知ろうとしないのでバレる心配はございませんよ!」
こいつ、屑だな。
婚約者が可愛そうに。
「はぁーー。まあいい。くれぐれもバレないようにしろよ。もう話はない。帰っていいぞ」
「そうですか。分かりました! では失礼します! あ、この件絶対に口外しないで下さいね?」
分かった分かったと適当に返事をした。
こんな話を口外するつもりは無いし、そもそも、安易に話せる様な話では無いだろう。
「はぁーーー。何故あんな奴に娼婦に入れ揚げる時間があって俺には無いんだ。こちとら成人まじかの真っ盛りな時期だぞ?なのに娼館どころか初体験までまだだ。一体いつヤレるんだ?
オリビアは穢れることを著しく嫌っているし、娼婦は普通に無理だし。はぁーーー。どうしたらいいんだ」
誰も居ない部屋に声を響かせた。
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