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イケメンはイネ科~婚約破棄から始まる3分間でのざまぁ劇場~

7作目です。


よろしくお願いします。

「公爵令嬢!王太子である余は貴様との婚約を破棄し!男爵令嬢と新たに婚約を結ぶこととする。さらに貴様には男爵令嬢を虐めた疑いがかかっている!彼女に謝罪しろ!そして貴様には相応の罰をくれてやる。」


 ここは王国のダンスホール。学園の卒業パーティーの最中でどこかで見たような婚約破棄が行われていた。婚約者である公爵令嬢にイケメン王太子が一方的に宣言する。王太子の背後にいる男爵令嬢はうつむいて少し震えている様子。


「男爵令嬢ちゃんの教科書を破いただろう!」


「男爵令嬢ちゃんに噴水の水をかけた!」


「男爵令嬢ちゃんを階段から突き落とした!」


「男爵令嬢ちゃんの体操着を盗んだ!」


 それぞれ男爵令嬢を取り囲む第二王子、第三王子、宰相令息、騎士団長令息の発言である。


『そうなんですよ!たった今婚約者に婚約破棄を言い渡されまして・・・・・ええそうです。はい、はい。公衆の面前でひどいと思いますわよね。・・・ええもちろん彼はイケメンですわよ。』


「貴様!婚約破棄と断罪の最中に何をしているのだ!」


 何かの魔道具に話しかけている公爵令嬢を叱責する王太子。


「いえ、今は卒業ダンスパーティーの最中であって、婚約破棄劇場の時間ではありませんわ。そんなこともわからないから能無し王子と呼ばれるんですわよ。ちなみに今のは通話の魔道具でちょっと愚痴っていただけですわ。」


ちなみに通話料は三分100イエーン。長距離通話であった。


「クッ。まあいい。貴様の悪行を知らしめるために卒業生皆が集まるこの時を利用させてもらった。卒業生には悪いがきっとわかってくれよう。」


 当然ながら卒業生はどっちらけである。


「あら、そうですの。そんな感じではありませんけどね。」


 周囲を見回して公爵令嬢が感想を述べる。続いて


「まあどんな理があるのかは知れませんが、か弱い婦女子に一人に対して六人がかりというのは紳士として恥ずかしいことではないかしら?それとも紳士でないから仕方ないのかしら?」


 そういうと取り巻きが激高する。


「男爵令嬢ちゃんをあなたのような悪役令嬢から守るためには仕方ないことです!」


「貴様と違って彼女には取り巻きもいないんだぞ!」


 第二・第三“悪役令嬢”の時点で悪女でもないし“取り巻きがいない”=友達がいないということをにおわせている気がするが、彼らも頭が弱いので気が付かない。


「皆さん。ありがとうございます。でもいいんです。私は公爵令嬢さんが謝ってくださればそれで・・・」


「なんて健気なんだ。公爵令嬢貴様も淑女教育を受けているならこのような優しい心を持つべきであったのだ!貴様の悪行の証拠はそろえてある。この場を借りて発表してやる。これで貴様も終わりだ!」


 勝ち誇ったような顔をする王太子。


「あらそうですの。でもその前にあなた方が多人数で来るのであれば私も助っ人を呼びましょうか。そろそろかしら?」


 “バー――――――――――ン!!!”


「イケメンはいねかぁぁぁぁぁ?!!!!!!」


 入場扉が大きく開かれ一人の老婆が入ってくる。


「おばあさんってば、イケメンはイネ科ではなく人科ですわよ。」


「おお公爵令嬢!久しぶりじゃな。どうせ刈り取って食っちまうんじゃ。細かいことを気にするではないわ。それでどれじゃ?」


 おばあさんが6人衆のほうを向く。


「あの偉そうな一番前にいるのです。」


「何だ。このばばあは!部外者が何故ここにいるの・・・・・」


 王太子が驚いて声を出すがその瞬間


 “ドガッ!”


「なんでもええわ。」


 見事な腹パンで意識を刈り取るとそのまま肩に担いで出ていこうとする。


「もうお帰りになるのですか。」


「生きのいいイケメンが捕れたからの。今夜はごちそうじゃ。爺さんと一緒に食べるとするわ。」


 ああお爺さんも一緒に食べられる側ですのね、と思いながら聞いている公爵令嬢。


「公爵令嬢。今回も良い情報をもらった。借りはそのうち返すぞ。」


「いえいえ。白寿の祝いに何を送ろうか考えていたところなのでちょうどよかったですわ。」


 そういってハンカチを振りながら別れの挨拶をする公爵令嬢。


「そうか。そうか。ではまたの。」


「さようなら~♪」


 颯爽と去っていくおばあさんとハンカチを振る令嬢。


 良いエンディングであった。







「って何よ。今のばばあは!」


 固まっていた残り5人からいち早く復活した男爵令嬢が公爵令嬢に食って掛かる。


「何よって言われても。女勇者様御年98歳ですわ。先ほど転移魔法でやってきてすぐ帰られました。座右の銘は『恋愛に禁じ手無し』だそうですわよ。」


「禁じ手無しって言っても限度があるでしょうに!」


「私に冤罪までかけたあなたが言いますか。ただの求愛行動(物理)ではないですか。」


「冤罪はばれなきゃいいのよ!でも明らかにあれは犯罪でしょ。」


「北にイケメン魔王がいれば腹パンしてお持ち帰り。南にイケメン竜王がいれば腹パンしてお持ち帰る。持ち帰られたのが迷惑行為の有名人ですから、害獣退治の英雄譚として地元では歓迎され愛されていますわよ。でもそう考えればイケメンは人科でなくてもよいのかしら?私ったらうっかりさん。」


 公爵令嬢が何かを納得している。


「いや問題はそこじゃないから。一国の王子、しかも王太子を誘拐とかありえないでしょ!」


「そこはほら、勇者様は神様より“お持ち帰りのライセンス(クズ限定)”を頂いているようですし、大事の前の小事ということで神様公認のようですから。ちなみに略奪愛とかはされないようですわよ。自分の趣味(イケメン蒐集)と人々の幸せを守るために勇者はいるそうなので・・・。」


「何よそのオートマ限定みたいなライセンスは!王太子と私の幸せな婚約はどうなのよ!」


「この国で貴族の婚約解消は口頭で済みますが、婚約は内容や血縁関係、妊娠等の確認を終えて神殿にすべての内容証明書類を提出して初めて成立します。なのであの時点での王太子はただのフリーなクズイケメンですわ。」


 愕然とする男爵令嬢。


「取り巻きさんも婚約者がいたはずですわよね。今なら男爵令嬢さんもフリーですから婚約破棄をされてはいかがでしょうか?第二・第三王子と宰相令息もきっとおばあさんのお眼鏡にかなうと思いますわ。」


「「「えっ?」」」


 我に返る3人。


「ちなみにおばあさんは回復魔法が使えるので体力無制限。おばあさんが通った後は煙も出ないとか。『攫われし者すべての希望を捨てよ』というのがいにしえよりの言い伝え(80年間)とのことですわ。」


 そう聞いた瞬間、それぞれの婚約者の元にダッシュで近寄り土下座して謝りだす。


「すまない。君を蔑ろにするつもりはなかったんだ!」


「君だけをずっと愛している。もちろん浮気など絶対にしない!」


「男爵令嬢とは何もなかった。ただいろいろ頼られていただけなんだ。」


 三人がそれぞれ謝り倒している間に公爵令嬢がそれぞれの婚約者に声をかける。


「今なら男性側の有責で婚約破棄を出来ると思いますが、判断はお任せいたしますわ。絶対に逆らえないと思いますので尻に敷くなり、売り飛ばすもとい婚約解消して慰謝料もらうなり好きになさるとよいですわ。おばあさんへの渡りは私がつけますので。」


 そういうと笑顔になった3人の婚約者たちが


「「「ありがとうございます。その時はよろしくお願いいたしますね。」」」


 そういって3人の結末はそれぞれの令嬢にゆだねられたのであった。





「さて男爵令嬢さん。」


「はいいいいいいいいいいいい!」


 いまだ復活しない騎士団長令息をおいて公爵令嬢が話しかける。


「あなたのやり方はなかなか見事でした。」


「ありがとうございます?」


 一呼吸おいて


「実は公爵家では諜報員が不足しておりまして、是非あなたには我が家のハニトラ要員として活躍してほしいと思っていますの。国内では無理でしょうが隣国ならまだまだいけますわ。」


「拒否権は?」


 質問する男爵令嬢に、にっこりとほほ笑む公爵令嬢。


「私のお相手もいなくなってしまったことですし、新しい婚約者の選定もしなければなりませんの。場合によってはあなたに別れさせ屋もやってもらうかもしれませんわ。あほ王子との婚約もなくなりましたし夢が広がりんぐ!」


 うなだれる男爵令嬢と、夢見るような公爵令嬢がそこにはいた。


 こうして無事に卒業ダンスパーティーは終わった。






 そして




「騎士団長令息!君には放課後女子の体操着をクンカクンカしていたと情報が複数回、複数箇所で寄せられている。公爵令嬢に自らの罪を擦り付けようとしたのだろうが、確かな証拠と証人がいる。ご同行願おうか。」


 そういわれてパーティー後、憲兵に連れられて行く騎士団長令息がいた。


 まあ爵位もなく世襲の地位でもないうえに公爵家に喧嘩を売った令息の運命や推して知るべし。


 こうして王国の平和は守られたのであった。


 めでたしめでたし。


おばあさんが逆ハー作っているので恋愛カテで良いかと


いくつになっても恋っていいものですね

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