9.季節イベント(攻略対象者側の視点:ホワイトデー)
今日が3/14であると失念していました。
慌てて書き殴ったのがコレでございます…
「ばあちゃん、少しだけ台所借りるぞー?」
「ええよ。後でちゃんと片付けやってくれるならな。ちゃんと、片付けを」
小学生の頃、同じ様に台所を借りた事があったんだが、完成した喜びのあまり、片付けもせずそのまま飛び出した事があった。後で大目玉食らったのは言うまでも無い。
ばあちゃん、その事を未だに根に持っていやがる。ちゃんと片付けるってばよ。
だいたい、なんでこうばあちゃんとか叔母さんとか、女の親戚ってなぁすぐ昔の事をほじくり返してグチグチネチネチ言ってくるんだろうか。ああ、くそ腹立つ。
そういや、小さい頃なんかよくそんな親戚共のおもちゃにされたもんだ。
ウチの親戚の子供で男は俺だけ。いとこはとこ全員女。
そうなりゃ当然、標的は俺に集中する訳で。
親戚一同が集まると、スカートを履かされ、頭にでっかいリボンを付けられるなんてのは、当たり前の様に行われたえげつない行為の一つだ。
未だその当時の様子が、普通に動画として残っているしな…マスター見つけ次第、この世から消し去らなければ…
女装させられた俺、一子ちゃん(仮)と晶のツーショット写真も数点残っているらしい。ばあちゃんが保管しているとか何とか。当然これも抹消対象だ。
…よくよく考えてみたら、そんな環境でよくもまぁ女性不信、女性恐怖症にならなかったもんだな俺…どうやらわりとメンタルが強い生き物らしい。
うん。思いっきり話が逸れた。
明日はホワイトデーだから、そのお返しを作らなきゃならない。だからばあちゃんに小言を言われながらも、こうして台所を占拠した訳で。
市販品で済ませてしまっても良かったとは思うが、自作した方が当然金はかからない。
レシピもスマホがあればアレンジ含め幾らでも参照できるし。良い時代になったものだ。
それに市販品をポンと手渡すより、こちらの方が幾分豪華に見えなくもない。ラッピングの仕方によっては逆効果にもなるのだが。
見栄を張るには丁度良いと言ってしまえばその通りという、げに悲しき男心って奴だ。
…えっと、ギモーヴ? って奴を作る予定。
簡単にできる上に、見栄えのするレシピを検索してみたらコレだった。
レシピサイトを何度も確認してみたが、日常、あまり料理をしない(基本、ばあちゃんが台所に立たせてくれない)俺には、こんなのでもわりかしハードルは高い様に思えた。
ウチにハンドミキサーなんてハイテク機器があって助かった。ホントばあちゃんが良いモン好きでこういう時はありがたい。
台所をざっと見渡しただけでも、そんな一般のご家庭には無いだろう調理機器が整然と並んでいる。
…普通、スチームオーブンなんて一般のご家庭に無いよなぁ…
あと皆、ゴ○ンって知ってる?
ウチ、こんなのも台所に転がってるんだぜ?
俺ご飯党だから、最近使ってなくてホコリ被ってるんだけど。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ってな訳で、これ。バレンタインのお返し」
「ありがとう、かずちゃん」
恋人同士となった彼女の部屋に上がり込み、今日の最大の目的を果たす。
いつも思うんだが、晶の部屋は本当に本が多い。本棚でびっしりだ。
漫画とかで良く有る様な女性の部屋特有のファンシー、ピンキーなイメージからはあまりにもかけ離れすぎていて、色気などは全く無く、何て言うか…ツレの部屋? そんな感じ。
そのお陰で邪な気持ちは、これっぽっちも…
ぽっちも…
も…
…無理。
部屋中、こいつの匂いでいっぱいだから、ほんっと無理。えらい。マジえらい。
この匂いを嗅いだせいで、一気に知能レベルが下がったからなのか、それとも元から俺がバカなのか…そこはもう解らん。解らんなりに表現すると、何かスッゲ良い匂い。
これがフェロモンって奴なのか、それは知らん。知りたくも無い。
てか、それをそうと認めてしまうと、もう晶を全力で押し倒しそうになるだろうから困る。ひっじょーに困るので考えない事にする。しないと不味い。まだ俺らは学生だからな。
…ばあちゃんと晶のお母さんが散々煽ってくるので、スタート地点からすでに崖っぷちなんだけど。
「ん、んじゃあ、俺はこれで…」
俺の中にある理性さんがどうやっても勝てそうにないので、戦略的撤退を選択。
所詮男なんてな欲求に素直な狼だ。犬っころの様には飼い慣らせないぜ。
獣強し。がおーっ。
「待って、かずちゃん。折角ウチに来てくれたんだから、一緒にゲーム、しよっ?」
上着の裾を掴まれて、上目遣いでお願い。その視覚的衝撃は凄まじいものがあった。心臓が跳ねたよ、マジで。
彼女に可愛くお強請りなんてされちゃったら、男は絶対勝てる訳なんかない…よな?
かくして撤退戦は失敗し、戦場に一人取り残され、孤立無援のままガリガリと戦力を削られ続けるだけの理性さんこと俺の図が完成した訳で。
(理性さんがお亡くなりになったら、その時点で俺の人生もゲームオーバーだな…)
…確実に晶を襲うだろうから。これはもう確信している。どんなに拒絶されてしまおうとも、多分抑えられない筈。
俺の中の醜い獣欲は、常に解放の時を望んでいる。自家発電で何とか紛らわせてはいるが、家族の目がある以上、その始末も結構大変だから、本当にこの状況はヤバい。
晶は俺の足の間に入り込み、背中を預けてくる。所謂抱っこ座り状態になっていた。
部屋の匂いに負けないシャンプーの香りが鼻腔を擽り、脚、腕、腹と胸。ほぼ全身に感じる微妙な温もりが否応が無しに庇護欲を掻き立てる。
その反面、どうしようもない位に沸き立ってしまう性欲を持て余す。
…だめだ。マジえらい…
そんな訳で、コントローラーを握りしめ、画面をところ狭しと飛び跳ねるキャラクターを動かしながらも、今にも死滅しそうな理性さんに援護をすべく、心の中で般若心経を延々と唱えているという。
なんてーか、訳の分からない状況でなっている次第にございます。
「ああ、もうっ! かずちゃんズルいっ! ちょっとくらい手加減してよっ!!」
晶はゲーム大好きなわりに、基本トロくさい。雑食なので、どんなジャンルでもつまみ食いをするし。
お陰で常に対戦相手として指名されている俺は、大体のゲームはこなせるまでになっていた。
その癖、変に負けず嫌いだから、手を抜くと怒る。んで、本気でボコると尚怒るという、相手する場合本当に面倒臭い奴だったりする。
「…てか、ついさっき、手加減したら赦さないって、お前言ってなかったか?」
「ぶーっ! 勝ちすぎもダメーっ!」
ああ、本当にお前は…
せめてこの状態を何とかして下さい。
貴女の貞操は、今まさに風前の灯火でございますのよ?
願わくば、俺の理性さんよ…もうちょっと耐えて下さい。
…般若心経ではダメ臭い。
誰か、心の平安を保てる良いお経を知らないか?
てーか、覚悟するしかないのか? 俺…
※1 しんどい、疲れた的な方言。
誤字脱字があったらごめんなさい。
評価ブクマ戴けたら嬉しいデス。