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2.当ててみせたい、超必殺技。

不定期投降の作品です。

https://ncode.syosetu.com/n9705gi/

こちらもよろしくお願いします。



「おはよっ、かずちゃんっ!」


取り急ぎ、結果だけ報告するわ。私の超必殺技(とびきりの笑顔)は、思いっきり不発に終わりました。はい、終了。


「おはよう、(あきら)


正確に言えば、かずちゃんのイケメンスマイル(クロスカウンター)によって、半分自爆っていうか、見事撃沈した訳なのだけれど。くそぅ、何時か絶対に逆襲してやるわ…


イケメンスマイルでHPがみるみる減少している所に、昨日のゲロ甘メッセとスタンプ連打へのお仕置き(梅干し)のフルコースが。もうやめて。私のHPはすでにゼロよ。


「うう、かずちゃん酷いぃ…」


「んじゃ、行こうぜ」


ひとしきり私を痛めつけて満足したのか、彼はゆっくりと歩き出した。


ちょ、なによそれ。それじゃ、昨日の朝と全く変わらないじゃないの。


そりゃこんな往来で、告白の後にくれた様な、熱烈なラブラブちゅーをしろだなんて言わないけれど、だからと言って、今までと全く変わらない態度ってのもどうなのよ?



やっぱり、昨日の告白(アレ)は、かずちゃんの気の迷い?


それとも、私の日々の妄想が生み出した幻覚だった?


そういえば、人間というのは自分自身を瞞すのが上手い生物だと聞いた事がある。


誰でも訓練すれば、記憶をいくらでも簡単にねつ造する事ができるんだとか何だとか。


ちょっとした思い違いは、そんな脳が作り出したねつ造の結果だとかって話。ナニソレ怖い。自分が信用できないって、何を信じて生きていけば良いというのか。



「…ほらっ。行くぞ」


私が着いてこない事を訝しんだのか、振り返った彼が私の手を握る。


口調は、いつも通りのぶっきらぼう。


でも、握ってくれた手は大きくてゴツゴツしているんだけれど、優しく、そして暖かかった。


みるみるHPが回復していく気がするわ。


本当に私ってば現金過ぎる。頬に熱を感じ、口元がニヤけてきて仕方が無い。ああ、今絶対にだらしない顔してるわ私。鏡なんかこの世から無くなってしまえ。


手を繋ぎ歩きながら、そっと彼の横顔を下から覗き込んでみる。あ、耳が真っ赤だ。どうやら彼も照れているみたい。


良かった、どうやら昨日の告白の記憶は、彼を好きすぎた末のねつ造ではない様だ。ホント怖いわね。てゆか、こんな無駄知識要らんかったわ…



「よーっす。かーさん」


「おう」


「おはよー、晶、おとーさん」


「おはよ、千里」


「おっす」


いつもの時間、いつもの道、いつもの顔。


違うのは、私達が手を繋いだまま歩いているって所か。


ああ、そうそう。彼は男子から親愛と少しだけの畏怖を込めて『かーさん』と呼ばれ、女子からは親愛と、遠慮勝ちな揶揄を込めて『おとーさん』と呼ばれている。


男子が言うには、とかく面倒見が良すぎる彼は”おかんっぽい”んだそうで。”おかんの一輝(かずき)さん”から最終的に”かーさん”へと化けたらしい。うん、良くわからん。


女子の方のはまぁ、分かり易いわね…彼の名字尾頭(おとう)からそのままって奴。男子からの渾名(あだな)に引っ掛けたってのも、多分にあるんでしょうけれど。


で、それよりも、それよりも。


私達が手を繋いだままでいるという事に、誰もツッコミを入れてこないこの状況は、一体何故なの、ホワイ?


性差による異性を少しだけ意識し始めた小学生の頃は、そういったからかいがとても煩わしかったわ。”尾頭夫婦”と散々囃し立てられた苦い記憶が蘇る。彼が私を気遣って距離を置こうとしたのは、今振り返っても辛い辛い記憶だ。


でも、今は違う。


むしろ盛大にツッコんで欲しいくらいよっ!


てゆか、堂々と『私は彼のモノなのよっ!』と、大勢の前で宣言してやりたい。


そうすれば、私のかずちゃんを狙って周りをチョロチョロする他の女子(悪い虫)共が少しは減る筈。てゆか、減ると良いなぁ…せめて、少しくらいは減って欲しいなぁ…


…うん。無理ね。


ああいう人って、逆に何故か”人のモノになった人”をやたら狙うのだとも聞くし…ああ、これが所謂”お邪魔虫キャラ”という奴なのか。ホント、空気嫁。()ンなるわね。


よし、もうこうなったら、強引な手段に訴えてやるしかないわ。


かずちゃん、ちょっとごめんね…


よっと。こうやって…がっちり恋人繋ぎにしてやったわ。彼、ずっと剣道をやっているせいか、堅い剣ダコが掌に当たる。あ、でもこれちょっと気持ち良いかも?


本当は彼の腕をこの胸にしっかと抱けば、周囲にこれ以上無いくらいの強烈なアピールになるのでしょうけれど、流石にそこまでの度胸が私にはございません。ええ、半端なヘタれですともさ。


「…晶?」


「良いでしょ、かずちゃん?」


意識して、かずちゃんへ上目遣いのアピール。たまには女の武器を使ってやらないと錆び付いちゃうからね。


てゆか、こんな小っ恥ずかしい事は初めてやってみせた訳だけれど。上手くできてるのかは知らない。


これすらも不発に終わったら、女としての矜持を一から考えねばならないと思う。でも、そんな捨て身のファイティングスタイル、実は嫌いじゃなかったり。


「うん。まぁ、良いが…そんかわり、これからずっと毎日な?」


「い゛? そ、それは…うん…がんばる…」


これから毎朝の登校に恋人繋ぎ希望とか…本当に彼はいぢわるだ。これだって意を決してやった行動だというのに。


…ごめんなさい、嘘です。凄く口元がニヤけてしまいます。


ガンガン超必殺技ゲージが上昇していくのが手に取る様に解る。


これなら下校時には、ボタン同時押しで超必殺技が出せる筈よ。一発当たりさえすれば、そこで試合が終了するタイプの奴。


まぁ、さっきは結局当たらなかったんだけれど…てゆか、思いっきりカウンター喰らったし…



よし、今度こそ下校時に絶対に当ててやるわ。私の超必殺技(とびきりの笑顔)を。


…首を洗って待ってなさい、かずちゃん!



誤字脱字があったらごめんなさい。

評価戴けると嬉しいです。


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