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11.季節イベント(梅雨)

めっちゃ更新の間が空いちゃいましたが、彼らは元気です。



 ……雨は、嫌い。



 梅雨の時期は、特にダメだわ。


 何だか、妙にダルいし。


 眼鏡は曇るし。


 洗濯物は全然乾かないし。お気に入りの寄せて上げるブr……いやいやいやいや。ここはまぁ、うん。


 湿気を含んでしまうのか、大好きな小説も、心なしかしっとりと膨らんでいる気がするし。ページをめくる時に、これが凄く気になる。



 そうそう。その”湿気”が大敵なのよね。



 良く周囲から”ドンクサ”等と言われる、正真正銘の超・鈍臭いこの私は、この時期、頻繁に廊下でつるりと足を滑らせては転ぶ。


 昨年なんか、廊下で豪快にずっこけてお尻を痛打した上に、パンチラどころか、パンモロまでも盛大に披露してしまうという……彼以外のヤロウ共にお見せしてしまうなんて、淑女としてあるまじき醜態を晒してしまったのだ……畜生。目撃者全員を”消して”やりたい。


 まぁ、今年はスパッツで対策しているのだけれど。もう二度と、あんな瞬時に大量殺人を選択しかける様な恥ずかしい思いは、金輪際、絶対にしたくねぇです。いや、ホントマジで。


 ……そんな思い出したくも無い黒歴史もあって、この”湿気”とやらが、本当に私にとっては不倶戴天の敵だったりする。


 かくいう今朝も、此奴(湿気)のせいで、ずっと悩まされ続けているのだから。


 「……ううううう、髪の毛が、全然纏まんないよぉ……」


 目の前には、もっさりと増殖した増えるワカメ……いやいや。盛大に爆発したかの様に、擬音で表現すれば”ぼわんっ”といった感じだろうか? 髪の毛お化けがそこに立っていた。


 まぁ、鏡に写った私の姿……なんですが、ね?


 いつもは就寝時に髪の毛を一つに束ねて、朝にそれを解けば、ほーら簡単。良い感じの魅惑のウェービーヘアーの出来上がり……周囲にはオシャレに気を遣っている風を装ってはいるのだけれど、実際の私ってば、ズボラの極みだったんですねー。まぁ何て酷い。詐欺も良い所ですわ。


 ……なのだけれど、なのだけれど。


 この時期特有の湿度のせいか、解いた途端に、これらが四方八方に大爆発した訳で。ああ、畜生、面倒くせぇ。解かなきゃ良かった……



 時間を掛けるだけ無駄だと、この惨状を収める事を渋々諦めた私は、もう一度起床前と同じ様に、強引に髪の毛を束ねゴムで縛った。


 どうせ頑張ってドライヤーでセットした所で、外の湿気を帯びれば、再び『増えるワカメ』……いやいや。割とボリュームの有る私の髪の毛は、忽ちに大爆発するのは解りきっている事だから。


 抵抗するだけ、無駄よ。無・駄。


 この時期はオシャレを諦める。これが精神衛生上、一番よね……下らない事で一々ストレスを溜めるなんて、馬鹿のする事よ。美容にもきっと良くない筈だしね。


 ……あ。やっべ、時間が無い。髪の毛と無駄に格闘し過ぎたせいで、本当に時間いっぱいのギリギリ。早く出なきゃ、彼を待たせてしまう。


 「いってきまーすっ!」



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 「おはよ、かずちゃん」


 「おう。おはよーさん」


 玄関を出たら、彼の姿が。やっぱり待たせてしまっていたみたい。


 うん。”水も滴る良い男”っていうのは、こういうのを指すんだろうなぁ……などと、惚気てみる。


 この時期の彼は、常に防具袋を背負っている。


 道場に拡げているだけでは絶対に乾かないので、家でしっかりと手入れをしなきゃならないらしい。


 『換えの防具があっても、な? これが、なかなか……』


 そう彼は、愚痴と共に溜息を零す。


 汗と湿気を含んで”しっとり”とした防具を身につける際の、あの独特な()()()とした、嫌な感触を思い出し、ついつい鳥肌が立った。


 うん。こればかりは、剣道経験者にしか伝わらないだろう。でも、解る人には共感してもらえる筈。絶対に。


 「……しかし、今日も良く降ってンなぁ……」


 「ねー?」



 ……雨は、嫌い。



 何だか、妙にダルいし。


 眼鏡は曇るし。


 髪の毛は、大爆発するし。



 そして、何より……



 ……大好きな人と、手を繋ぐ事ができないから。



 片手には、傘を。


 もう片手には、鞄と防具袋。


 彼の両手は、完全に塞がっているのだから。私の手も、同様なのだけれど。


 でも、恋人繋ぎができるのであれば、無理矢理にでも片手を空けてやる所存。


 ……とはいえ、流石に貴方と手を繋ぎたいから、傘を差さずに濡れて歩け……等とは、当然言える訳もなく。


 傘を拡げた直径の分だけ、いつもより遠くなる肩も、今の私にはもどかしい。



 ……やっぱり、雨は嫌いよ。



 「……なぁ、(あきら)?」


 「なぁに、かずちゃん?」


 「今度の土曜、晴れたらで良いんだけどよ。どっか、遊びに行こうぜ?」


 「うん。でも……」


 「でも?」


 「……もしその日が、雨だったとしても、私は全然構わないよ?」



 ……やっぱり、雨は嫌い。



 でも、ちょっとだけ好きになっても良い。ちょっとだけ、ね。


 そう思えた。


 

誤字脱字があったらごめんなさい。

評価ブクマ戴けたら嬉しいデス。

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