10.季節イベント(ホワイトデー)
本当ならば14日に投下してなきゃいけないネタですが…思い付いちゃったので。
「掃除はこれでよしっ、と。後はこの本の山、どうするかよ、ね…?」
今日はホワイトデー。かずちゃんが来ちゃう前に、何とか部屋の体裁を整えないと…
問題は、そう。
ベッドの上に積み上がった、本。本。本。
汚部屋(何で”おへや”からの変換で一発目の候補にコレが来るんだ、コノヤロウ)の掃除の為に避けていたコレを、なんとかしないと。
カッコイイ男の子達が、どったんばったん、くんずほぐれつ大ハッスルする薄い本だったり、そういうレーベルの小説だったり色々するけれど、まぁ簡単に言ってしまえば、そういうジャンルのソレ。
当然そんなモノ、”彼氏"にお見せできる類いのモノでは、決して無い訳で。
…もう、こうなったら…押し入れに、押し込んじゃうかぁ…
こうやって、そういう他人の目に触れさせられない後ろ暗いモノが、押し入れという隠されたスペースにドンドンと積み重なっていく。
今私がやっている事って…『息子のエロ本の隠し場所』っていう本の、まんまソレよね…
…うわ。
なんか、すっごく自分が残念な人間に思えてきちゃった…
やっぱり、一度断捨離を考えよう。うん。そろそろ人として不味いんじゃないかなって、そんな気がしてきたし。
お父さん、お母さん。腐った娘でごめんなさい。
かずちゃん、腐った彼女で本当にごめんなさい。
…よし。とりあえず懺悔をしたから、これでおk。
忘れよう。そうしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ってな訳で、これ。バレンタインのお返し」
「ありがとう、かずちゃん」
手渡されたそれを、失礼にならない程度にチラと確認する。綺麗にラッピングされているけれど、これはどう見ても手作りっぽい。
凄い。ギモーヴって自作できたんだ…知らなかった。
何でもそつなく上手にこなす彼のせいで、幼少の頃からベキベキの、バッキバキに心折れた私は、彼のおばあちゃんに料理だけは絶対に学ばせない様、必死にお願いした。
料理は私にとって唯一のアドバンテージ。それすらも負けてしまったら、私には何も無くなっちゃうから。
我ながら本当に酷い女だと思うけれど、こちらも必死なのだ。
彼氏に女子力で徹底的に凹まされてみれば解る筈よ。この悲しき微妙な乙女心が。
あんニャロ、裁縫の腕は本当にプロレベルだから…手芸部にスカウトされる男子ってなんなのさ、一体…
まぁ、今はそんな劣等感を頭の片隅からも消し去ろう。
今、私の部屋に彼が来ているという、非日常。考えてみたら、本当に何年ぶりの事なんだろう?
…私が汚部屋(今度は意図しての変換よ)に、彼を絶対に入れたくないと思ってからだから…うん。そうとう昔ね。
今日このイベントをも利用して、彼から色々とゲットしてしまおう。
そう覚悟を決めてたからこそ、頑張ってお部屋を掃除して彼を招き入れたのだから。
「ん、んじゃあ、俺はこれで…」
「待って、かずちゃん。折角ウチに来てくれたんだから、一緒にゲーム、しよっ?」
だから、私が望む何かを、せめて一つくらいゲットするまでは、絶対に逃がしゃしないわよ?
あの日以来、キスは一度も無い。
お陰でこっちは色々と不安だし、欲求不満なのよ。
そりゃもう、あの時は二人とも唇が腫れ上がるまでいっぱいしたのだけれど…それだけずっと、ずーっと”おあずけ”状態だったんだから、これは仕方の無い話よね。
毎日手を繋いで登下校したり、小さい頃よりもスキンシップはいっぱいしているけれどさ、流石にこちらからキスの要求は、ちょっとだけし難い。
でも、今日はホワイトデー。ちょっとくらいは羽目を外しても良い筈。ましてや、ここは我がお部屋。ホームグラウンドなのだから。
だから、今日の私は大胆にイってやる。
彼に密着する様に、脚の間に身体を入れて…っと。
…えへへぇ~
抱っこ座り完成~
うん。これ良い。かなり良い。凄く、良い。
彼の逞しい肉体からの輻射熱が分かる。彼に包まれているっていう感覚が凄く良い。
背中越しに感じる筋肉の堅さと、心臓の鼓動。彼もドキドキを感じてくれているのが分かって凄く嬉しい。
お陰でこちらも釣られる様にドキドキが止まらなくなってきた。もう意識が飛んじゃいそうだ。
ああっ。もうこの際、乙女のプライドなんぞ忘れて、このまま私から押し倒してやろうかしら?
いいや、我慢、我慢よ私。まだその時ではないわ。
ゲームで盛り上がって、ふとした拍子に目が合って…っていうのが理想よね。速まってはダメ。
よし、そうと決まれば…
いざ、勝負っ!
「ああ、もうっ! かずちゃんズルいっ! ちょっとくらい手加減してよっ!!」
私はとてもゲームが大好き。だけれど、基本トロくさいってよく言われる。ドンクサで悪かったわね、畜生。
”下手の横好き”と言ってしまえばその通り。だから対戦相手として私が指名するのは基本彼のみ。で、大体のゲームで彼には負け越している。悔しい。
私は本当に負けず嫌いらしい。彼が手を抜いているのが分かると腹が立つし、その癖本気でボコられると尚腹立つという…いざ相手にしてみれば、本当に面倒臭い奴だったりする。私ならお断りよ、そんな奴。
「…てか、ついさっき、手加減したら赦さないって、お前言ってなかったか?」
「ぶーっ! 勝ちすぎもダメーっ!」
その日の対戦は、いつになく白熱した。
気が付けば結局、彼とゲームで盛り上がっただけで、一日が終わってしまった。
…あれ?
成果…無し??
「ああ、もう。所詮雑誌の付録じゃ、ダメかぁ…」
『彼を”その気”にさせる必勝アロマ』
もうがまんできなーいっ!
がばちょーっ! いやーん。…ってのを、期待したんだけど、なぁ…
あざとくミニスカートにしたっていうのに。
ちょっと肩を露出した服を頑張って着たのに。
ちきしょう。
…やっぱり、無駄なプライドなんて持っていたって仕方が無い。今度は、私から襲ってやろう。そうしよう。
だから、覚悟なさい。かずちゃんっ!
誤字脱字があったらごめんなさい。
評価ブクマ戴けたら嬉しいデス。




