プロローグ
初投稿です。
「・・・・・せ・・・・・・い・・・・ブ・・・・・・さ・・・・・・
ビィーッ!! ビィーッ!! ビぃ
「っせえなぁッ!」
バキィ
「最低の朝だ・・・・」
心の底からそう思う。
まだ眠気の覚めない頭で見渡すのはいつもの自分の寝室。
軋むと言うか、異音を上げるベッド。
いかにも安そうなコンクリ一面の壁。
ドアノブの取れたバスルームへの扉。
床に散らばる酒瓶。
そしてリビングから漂ってくる異臭。
我ながらヤバイと思う。どうしてここまで世間一般で言う幸せの定義から外れたのか考えたくもない。
「起きるかぁ〜。」
二日酔いによる頭痛を堪えながらベッドから降り、酒瓶を踏まないようにバスルームへと向かう。途中で酒瓶を力一杯踏んで素っ転んだのが妙に心にきた。
バスルームに入ると自分の愛銃が床に転がっていた。おそらく酒飲んで吐いてた時に落としたのだろう。踏んで誤射とか洒落にならんので拾っておく。
「はぁ〜、顔、洗わなきゃなぁ。」
鏡の前に立つ。憂鬱だ。この朝のひと時が自分にとって大抵の場合1日でもっとも憂鬱な時間だ。
何せ自分が本当にどうしようもなくなっている事突きつけられる時間だからだ。
意を決して鏡を覗き込む。
2m近くある巨体。隆起する鋼のような筋肉。そしてそれを覆う鈍色の毛皮
鏡に映ったその顔を見ればそこには今にも牙を剥きそうな狼の頭。
そう、これが俺だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・
俺の名前はハルマキだ。名前については触れないで欲しい。
別に俺は獣人とか人狼だとかそういうファンタジーな存在ではない。
そもそも獣人というものは存在しない。
いや、昔はいたらしいのだが、彼ら彼女らに魅入ってしまった金持ちどもに乱獲された結果、絶滅してしまったらしい。偽物とはいえ奴らに類似する存在になってしまった俺からして見ればゾッとする話である。
ここはミール。科学と神秘が入り混じって何とヤバイことになっている世界だ。
コンクリの大地にネオンの光るコンクリの建物、道にはありとあらゆる超常存在が跋扈する。エルフ、ドワーフ、ESPなんでもござれだ。
自然なんてものはもう金持ちの庭にしか存在しない。
学者達がいうには俺たちは数年前に自分たちが住む大地を殺すことに成功したらしい。今や俺らを生かしているのは溜まりにたまった謎の超常エネルギーだとも。本当、とんでもない快挙だ。ははっ。
国家はとうに崩壊した。たまに路上でどっかの国の再建を叫ぶ奴がいるが、もはやどこの土地がどの国だったかさえ分からなくなった今の時代じゃあ相手にする奴はいない。
何で世界がこんなになってるのか誰もは知らない。
とにかくわかるのは数十年前に超常の存在たちが現実のものとして認識されてから世界の状況が加速的に悪くなったことだけだ。これは俗に変遷と呼ばれている。
チロリン♪
「おっと。」
どーやらIMDをズボンに入れたまま寝てたらしい。
IMD (Inter Meer Device)は使用不可能になってしまった過去の通信デバイスの代用品として作られたものだ。機能自体は変遷前に普及してたらしいスマホと変わらないと言われるものの、超常に侵されたミールでは普及前のテクノロジーの大部分が使えないのでみんな使ってる。今の音はメッセージの通知だろう。
ポッケからIMDを取り出してメッセージ画面を開く。
「ゲッ」
最悪だ。見なきゃよかった。だがもう既読がついてしまっている。ここで逃げようものなら俺の明日が消える。
送られてきたメッセージをタップし、コール画面に移ってコールをタップする。つながった。
「遅いよハルマキ、私のメッセージを受け取ったならばもっと迅速に行動するのが道理でしょう?」
「すんませんでした。少し体ch「どうせまた鏡の前でげんなりしてただけでしょ。」…ハイ。」
クッソ、毎回毎回どうしてわかるんだ。
今俺が電話しているのはリュミナ=セバスティアン、俺の雇い主だ。こうして電話をかけてきたということは新しい仕事を持ってきたのだろう。
「で、今回俺は何をすればいいんだ?またあんたの実験に付き合うってなだけなら是非辞退させていただくぜ。」
「それがねー、通信では話せないから今から私ん所来てね。」
「は?」
「じゃっ」
「おいっ!」
ツーっ、ツーっ
「あの女ぁ~」
相変わらず傲慢と身勝手が服を着ているような女だ。まあ、それは仕方ないことなのかもしれないが
とにかく愚痴を言っている場合じゃない。これで遅れたら何をされるかわからん。すぐに準備をしよう。
バスルームを出てリビングに入る。異臭がかなりきつい。多分酒のつまみに買ったチーズが逝っちまったんだろう。
「おっ、あった。」
特殊防御加工コート「颶風」、大型ククリナイフ×2、愛銃のカートリッジ、そして秘密兵器。
バスルームにあった愛銃と合わせて俺の「仕事」に欠かせない愛用の道具達だ。
筋肉ダルマの狼人間が武器を使うのかってよく笑われるが、戦闘時に選択肢が多いことに越したことはない。
「颶風」を素早く着込み、愛銃を腰のホルスターに突っ込む。ククリナイフたちは背中の鞘に収める。
フル装備になったおかげか気が引き締まった気がする。
「うっし!、今日もいっちょやるか!」
そうして俺はアパートを出た。
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