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 キャサリの町を取り返した魔王一行は、夕食にも炊き出しを行い、夜を迎え、勇者暗殺というハーレム就寝を四日続けていると、後続の人族兵が到着した。

 その出迎えには姫騎士が対応し、魔王達は会議を開く。


「もう五日もすると、魔族の皆さんも到着しますが、住居はどうしましょう?」


 魔王の質問に答えるのは、四天王の三人。


「しばらく、テントで生活してもらうしかないだ~」

「ですが、元々の住人の方も居ますよ?」

「それなら、人族にテントに移ってもらうか?」

「それも人族の方に不満が出るのではないでしょうか?」

「スピー」

「フリーデちゃんは、寝てしまいましたか……」

「まぁお昼寝の時間だしな」

「スベンなら、いい案を出してくれただ~」

「確かに。でも、スベンさんには負担を掛けてばかりです……お兄ちゃん。何かいい案はありませんか?」


 魔王が質問すると四天王も視線を送る。勇者はその質問を腕を組んで考えている。


「むにゃむにゃ」


 いや。フリーデと同じく、眠っているようだ。


「お兄ちゃん! 起きてくださ~い!!」

「んが!? ああ。サシャ。おはよう」

「最近、よく寝惚けていますけど、お疲れなのですか?」

「寝てたのか? すまない。どうも最近、寝た気がしないんだよな~。毎日いい夢を見てるはずなんだが、おかしいんだ」

「どんな夢ですか?」

「サシャに抱きつかれたり、隣で寝てたりだ。今朝は、サシャに踏まれて起こされた夢も見たんだよな~」


 勇者……それは夢ではなく、現実だ。ただ、魔王に抱きつかれたり、踏まれたりしたから記憶が飛んでしまっている。

 だが、数人からは気持ち悪い顔で見られ、数人は目が泳いでいる。


「もう……変な夢を見ないでくださいよ~」


 勇者寝不足の原因の魔王が、何を言っているんだか……


「アニキ? オレは夢に出て来ないのか?」


 勇者寝不足の原因のコリンナは、隠す気がないのか……


「そう言えば、コリンナも出て来るな」


 そして、小さくガッツポーズもやめたほうがいい。でも、勇者は気付かずに、話を戻すようだ。


「えっと……なんだっけ?」

「町に住人が増えて、どうしようって話ですよ」

「スベンに聞いたらどうだ?」

「スベンさんは、次の魔族を連れて来る仕事があるので、忙しいのです」

「ふ~ん……じゃあ、その仕事をレオンかミヘェルに任せたらいいよ。俺がひとっ走りすれば、一日で帰って来れるぞ」

「お兄ちゃんが、おんぶしてですか?」

「う~ん……馬車でも引いて行くよ」


 おっさんをおんぶして走るのは、勇者も嫌なようだ。会議はスベン到着の後となり、翌日、勇者は朝から馬車を引いて走る。



「うわ~」

「風が気持ちいいです~」

「は、速い~」


 搭乗者は、魔族を指揮するレオン。ミヘェルはアルマの世話と、一日の魔族のお目付け役で残った。勇者の走らせる馬車の速度に怖がるとは、頼りにならないおっさんだ。

 だが、必要としていない魔王とコリンナは楽しそうだ。二人は姫騎士に町の管理を押し付けて、勝手に馬車に乗り込んだ。コリンナは暇だからいいとして、魔王は忙しいはずなのに……

 勇者の負担となるのに、実に暢気(のんき)な二人だ。ちなみにテレージアもついて来ているが、ラッキーすけべが起きないので暇そうにしている。


 各々、流れる景色を楽しんでいると、キャサリの町に向かう魔族の集団に変な目で見られ、昼前にウーメラの町に到着する。そこで、スベンと合流。相談の結果、帰りは巨大馬車を引く事が決定した。

 どうやら、土魔法が得意な魔族を選別して連れて行く事を、決定していたようだが、勇者には聞かされていなかったようだ。それならアルマを連れて来たのにと、勇者は文句言ったのだが、魔王にお願いされて嬉しそうに承諾していた。


 昼食を済ませた勇者は、魔王達と二十人の魔族を積んで発車する。さすがは勇者。アルマより多くの人数を乗せているのにも関わらず、アルマより走るのが速い。

 テレージアもツッコミに外に出て来たが、行きに見た魔族の集団に、物凄く変な目で見られて馬車の中に戻って行った。

 魔族の集団を追い抜くと、馬車は停車する。そこで、スペンから引継ぎを終えたレオンを残し、テレージアから急かされて発車する。


 そうして夕方前。スベン含む魔王一行は、キャサリの町に戻って来た。もちろん勇者は、人族からも変な目で見られていた。

 まぁ勇者は魔王を気持ち悪い目で見ているから、まったく気にしていないが……



 その後、治療院で会議を執り行い、明日からの仕事の割り振りを決める。スベンが入ると懸案事項もすぐに解決され、次の日を迎える。


『皆さ~ん。おはようごさいま~す。今日からキャサリの町の拡張工事に取り掛かりま~す。慣れない仕事になると思いますが、怪我なく、元気に仕事をしましょ~う!』


 現在、キャサリの町の人口は、人族が五千人。魔族は数十人しかいないのに、魔族流の朝の挨拶をする暢気な魔王。半数は苦笑いで、半数は笑顔だから、まぁいいか。


 さっそく仕事に取り掛かるのだが、戦えない者は炊き出し。その他、人族のほとんどが木の切り出し。姫騎士の主導で人族兵を束ねて森に入る。

 そこで一緒に森に入った魔族から魔除けの木を教えてもらい、絶対に切らないようにと念を押して作業が始まる。

 森の奥に入ると極わずかだが、音に驚いて近付く魔物や魔獣は狩られ、その都度、勇者の前に運ばれてアイテムボックス行きとなる。


 勇者が森に居る理由も木の切り出し。生き物は攻撃できないが、木は別だ。人族が何度も斧を振っている横で、何本も木を押し倒している。

 その姿を見て、姫騎士も競うように刀を振り、人族兵は薙ぎ倒される木を避けるのに必死になっていた。


 そうしていると、姫騎士私兵、参謀のベティーナが怒って二人の前に現れる。どうやら姫騎士は、ベティーナに頭が上がらないようなので、ガミガミ怒られてしゅんとする。

 勇者は姫騎士と違い、一定方向に押し倒していたのだから、いいとばっちりだ。その事も告げたが、言い訳するなと怒られて、しゅんとなっていた。


 説教から解放された勇者と姫騎士は充分に切り倒された木を運び出す。最初は人族兵が数人で引っ張って運んでいたが、勇者が次々と木を消している姿を見て、「そんな事できるなら早く言え!」と、また怒られていた。



 巨大馬車も入る大容量のアイテムボックスの存在を忘れていた皆が悪いのに……


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