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076


 勇者が破裂した翌日、勇者は目を覚ますが、魔王が抱きついて寝ている事に気付き、再度破裂して夢の世界に旅立った。


 その少し後、ベッドで寝ていた三人の女が同時に目を覚ます。


「「「ふぁ~~~……え?」」」


 魔王と姫騎士は寝ている勇者の顔を見て、その先にある顔に気付いて驚き、そこにコリンナがモソモソと布団から顔を出して驚く。

 皆、驚いて固まり、沈黙して長い時が流れる。


 その沈黙を破る先陣は魔王だ。


「ど、どうしてお二人は、お兄ちゃんのベッドに居るのですか……」


 魔王は恥ずかしいのか、徐々に声が小さくなる。


「それを言うなら、魔王殿こそ……」


 姫騎士も、どうやら恥ずかしいみたいだ。


「あ! コリンナは、何をしていたんだ!」

「そうですよ! いまもお兄ちゃんに抱きついたままです!!」


 お互い恥ずかしい事を隠すように、標的をコリンナに移して糾弾する。


「普通に一緒に寝てただけだけど……ダメ?」


 コリンナ、悪い子。ただ寝ていただけと開き直った。コリンナのクリティカルヒットを喰らった魔王と姫騎士は、その手があったかと思い、テンションが下がる。自分より年下に、言い訳を考えていた事にも恥ずかしくなったようだ。


「それで二人は、なんでアニキのベッドに居るの?」

「それは……」

「アレだ……」


 コリンナの素直な言い分はもう使えないので、年上である二人は口ごもる。そうして、情けない二人が言い訳を考えていると、救世主が現れた。


「う~ん……なに喋ってるのよ~」


 昨夜、「妖精は見た」をしていて、夜遅くまで起きていたテレージアだ。勇者の胸元からモソモソと現れた。


「「「テレージア(さん)まで!」」」


 何故かこんな小さな妖精まで、驚きの対象になってしまっている。


「もう~。なんなのよ~」

「なんでテレージアさんがお兄ちゃんの胸元から出て来るのですか!」

「そうだ! そんな所で寝ていて、恥ずかしくないのか!」

「オレにいいように言っておいて、なにしてるのよ!」

「はあ? なに言ってるかわかんないんだけど~」


 皆、共通の敵を見付けたので、テレージアを批難するが、こんな小さな妖精に何を言っているんだか……。なかなかやまない批難の声に、ついにテレージアが怒り出す。


「うるさいわね~。言っておくけど、あんた達の行動はずっと見てたんだからね? 誰が一番に来たか、誰が何をしたか、全部知ってるんだからね?」

「「「え……」」」


 テレージアの予期せぬ反撃に、三人は固まる。


「一番先に来た子は勇者の頭をね~……」

「テレージアさん! お腹すきませんか?」


 テレージアの言葉を魔王が遮るが、それは答えを言っているようなものだぞ?


「二番目に来た子はいきなり布団に潜ったわね~……」

「テレージア! オレも腹が減ったし、何か食いに行こう!」


 コリンナも、さっきまでの悪い子はどこに行った?


「三番目は、見つめるだけって~……」

「テレージア! 早く食べに行こう!」


 姫騎士も、焦り過ぎだ。しかし……


「あたしは食いしん坊か!」


 その通り。ツッコミのボキャブラリーが低過ぎる。


「それに……そろいもそろって、このヘタレ~~~!!」


 その通り。皆、何もせずに熟睡したんだから、おっさん妖精女王には物足りない。怒られても当然だ。

 だが、三人を敵に回したテレージアは体を掴まれ、一緒にベッドルームから連れ出された。

 残された勇者は気絶していたので、キャットファイトに巻き込まれなくて、幸せだったと言えよう。



 その後、勇者も目を覚まして会議室に顔を出す。朝食はすでに始まっていたので、皆に朝の挨拶をするがテレージアしか返してくれず、不思議に思いながら空いている隅の席に腰掛ける。

 勇者は夕食を食べていなかったので、用意されていた朝食をバクバク食べ始めるが、四天王のおっさん三人に、殺気のこもった目で見られ、いたたまれなくなって手を止める。


「なんで睨んでいるんだ?」

「「「………」」」


 返事がない。ただ睨むだけだ。なので、勇者は魔王に問い掛ける。


「サシャ? どうしてこっち見ないんだ? 姫騎士もコリンナもどうした?」

「「「………」」」


 返事がない。ただ顔を赤くして横を見るだけだ。理由がわからない勇者は、ぐふぐふ笑っているテレージアと三少女に声を掛けようとするが、笑い方が気持ち悪かったので諦める事にしたようだ。


 それは正解。テレージアがこの場の空気を作ったのだからな。


 テレージアは昨夜の出来事を勇者が来る前に、全部ぶっちゃけた。その結果、四天王のおっさん三人は烈火のごとく怒り、やり場のない怒りを睨むことで解消している。魔王達はと言うと、恥ずかしくて死にそうになので、勇者と目を合わせられない。

 全て勇者のせいではないのに、全ての罪は勇者になってしまっているのだから、いたたまれないのは仕方がない事だ。



 静かな朝食が終われば、勇者は逃げ出すように会議室を出る。元凶のテレージアはと言うと魔王に捕まって、ポイッと追い出されてしまうのであった。


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