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 魔王と姫騎士が勇者談議に花を咲かせ、コリンナと三少女がお菓子を頬張っていると馬車は止まり、勇者が扉を開く。


「着いたぞ~」


 勇者の言葉に魔王はすぐに馬車から降り、コリンナ、三少女と続き、最後に姫騎士が覚悟を決めて馬車から降りる。

 皆が降りると勇者は巨大な馬車をアイテムボックスに仕舞い、テレージアの通訳の元、アルマを牧場に帰す。

 それが終わると魔王と勇者は歩き出し、皆も続くが、姫騎士は魔王に詰め寄る。


「ここが魔都なのか?」

「はい。どうかしましたか?」

「もっとおどろおどろしい建物が建ち並んでいると思っていたのだが……ド田舎??」

「なっ……田舎じゃないです~。大都会です~~~」

「何処がだ!? 我々の落とした町の方が、まだ都会だったぞ! それに城は何処にあるんだ!?」


 だから言ったのに。その想像はハズレだと……


 姫騎士の剣幕にたじたじとなった魔王は、しゅんとして勇者に助けを求め、説明を丸投げにしていた。その説明も聞いていたが、勇者も同意見だったので、魔都を(けな)されたと頬を膨らませる事となっていた。




 その後、魔王城と呼ばれるログハウスに到着した魔王一行は、四天王に出迎えられ、さっそくリビングの円卓で会議を始め……


「お腹すいたから、先にお昼にしない?」


 空気の読めない妖精女王だ。テレージアの一言で、昼食を交えての自己紹介となった。

 四天王を紹介すると姫騎士は緊張していたが、見た目と風格が合致しないので、これまた混乱する事となっていた。

 次に姫騎士たちの紹介を終わらせると、蛇の目を持つおじさん、スベンが質問をする。


「姫騎士さんは、王族の方なのですから、なんとか円満に和平に持って行けないでしょうか?」


 まっとうな質問だ。だが、ここへ来ても戦いを避けようとするとは、魔族らしくない魔族だ。


「私の発言力は、それほど強くない。我が国では父上の力が絶対で、説き伏せられる者も一人も居ないから、その方法は無理だな」


 四天王の二人は、スベンの質問に「その手があったか」と目を輝かせていたが、答えを聞いて心底落胆する。

 そこでお昼ごはんをムシャムシャしていたコリンナが手を上げる。


「じゃあ、姫騎士を人質にとったとか言って、話し合いに持って行ったら?」

「人質だ??」

「そんな卑劣(ひれつ)な手があるのか……」

「その発想はありませんでした」

「んなっ……戦争なんだから、それぐらいするでしょ!」


 コリンナの発言に、四天王の三人は軽蔑(けいべつ)の目で見るので、コリンナが噛み付くと、今度は震え出す。たかが少女一人におびえるとは、デカイだけで頼りにならないおっさん達だ。


「それも無理だな。王位継承権の無い私なんか、簡単に切り捨てられる」

「ひどいだ~!」

「自分の子供だろ?」

「親のする事ではないです……」


 本心から心配する三人に、姫騎士は苦笑いだ。いかついおっさん達が涙するのが不思議なのだろう。


「ふぅ~。食った食った」


 そして空気の読めない妖精女王は黙っていて欲しい。




 テレージアが食べ終わると、順次、食事が終わり、ようやく戦争の話に移る。


「今日よりおよそ六日後、人族が進軍します。コリンナさんと少し話し合ったのですが、湖と崖に掛けて、壁を築きたいと思います。スベンさん。出来ませんか?」

「壁ですか……出来ない事は無いのですが、どれぐらいの規模をお考えですか?」

「コリンナさん?」

「高い壁がいいんじゃない? 人が絶対に登れなければ侵入出来ないでしょ?」

「そうだとすると、最低5メートルぐらいですかね? 日数があまりないので間に合うかどうか」

「じゃあ、2メートルぐらいならどう?」

「それならば余裕を持って間に合いますが、中途半端じゃないですか?」

「上から物を投げたり、登ろうとした者は武器で攻撃したらいいじゃない? 無いよりマシでしょ?」

「人を殺す事になってしまいます……」

「はあ? 戦争なんだから、人は死ぬわよ!」


 唐突なスベンの発言に、コリンナは声を荒げる。すると、四天王の三人は震える。そんな皆を黙って見ていた姫騎士が間に入る。


「私も甘いと思うぞ。相手は殺しに来るのだから、殺すつもりで戦わないと死ぬだけだ」

「自国の国民が死ぬのですよ? 姫騎士さんは、それでいいのですか?」

「……良い訳はない。だが、非があるのは人族だ。その罪に血を流すのならば道理だ」

「姫騎士さん……」


 (うつむ)く姫騎士を心配する魔王。少しの沈黙の後、魔王が口を開く。


「血が流れるのは仕方がありません。ですが、その流れる血を少なくする戦い方をしましょう」

「魔王殿……」

「それには、コリンナさんの作戦が重要になるはずです。どうかお願いします」


 魔王に頭を下げられ、皆の期待のこもった目に、コリンナは頭をかきながら声を出す。


「出来るだけ考えてみるわ。スベンさんだっけ? 魔族が使える魔法、他にも特技……なんでもいいわ。教えてちょうだい」

「はい!!」


 コリンナとスベンは隣り合って座り、話し合う。しばらくその話を聞いていた姫騎士だったが、次の議題を魔王に提案する。


「守るだけでは、戦争は終わらない。長引けば両軍の兵士を損耗(そんもう)して死者が増える。こちらから攻める事も考えねばならないのでは?」

「攻めるですか……具体的にどうすればいいのですか?」

「上兄様が大将だから、これを討ち取れればいいのだが、そこまでの道のりが遠い。防衛で勝ち、次に兵士どうしの決戦。その後、功城戦で町を落として、ようやく目の前に上兄様が姿を現すだろう」

「長い道のりですね。それに死傷者が多く出ます……」

「そうだな」


 魔王と姫騎士は、お互いの国民が傷付く姿を想像し、暗い顔をして黙る。



「それじゃあ、防衛戦と決戦を一緒にやったらどう? ちょっとは早く、大将を拝めるかも?」


 スベンから話を聞いていたコリンナが、魔王達の話も聞いていたのか、声を出した。


「そんなこと出来るのですか?」

「向こうしだいだけどね。でも、やる価値はあるんじゃない?」

「はい!」


 この後、コリンナから詳しく作戦の概要を聞いた魔王達は、各所に連絡を取って戦争の準備を急ピッチで始める。


 その作業は朝まで掛かり、まったく話に参加していなかった勇者は、寂しくアルマに抱かれて眠ったらしい。


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