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043


 刀の切れ味を確かめていた姫騎士と勇者であったが、その切れ味を見たドアーフは、包丁の技法に使えそうだと刀を見ている。そうしていると、会計を済ませた魔王がやって来て、刀を持つドアーフに興奮して声を掛ける。


「あ! その剣を作ってくれるのですか?」

「いや……」

「やっぱりドアーフさんは、ドアーフさんなのですね。頑張って作ってください!!」

「だから……」

「ありがとうございます!」

「待って……」


 魔王はドアーフの両手を握り、早口で捲し立てると、馬車に群がっているドアーフ達の元へと走って行った。

 その姿を見ていた勇者と姫騎士は、ニヤニヤしながらドアーフの肩をポンッと叩く。


「決定したみたいだな」

「魔王殿の頼みは断れないんじゃないか?」

「うっ……これは無理だ! 見る限り作るのは難しそうだし、扱える者も少ないだろう!!」

「確かにな~」

「それならば、一般的なソードでいいだろう」


 姫騎士は両刃の剣を手に取って、ドアーフに手渡す。ドアーフは鞘から抜くと剣を見つめる。


「さっきのと比べると、切れ味が悪そうだな」

「いまは数だ。難しい物より、こちらの剣の方が作りやすいだろう?」

「……そうだな。魔王様のお願いだ。やってやるよ!」


 交渉成立。ドアーフはソードと刀を持って、馬車を見ていた集団と話し合う。すると、ドアーフを見送った姫騎士は残念そうな声を出す。


「あ……刀が……」

「そんなに気に入ったのか?」

「ああ。お前も持って行かれて良かったのか?」

「四本あるから、一本ぐらいなら……妹に土下座でもするよ」

「まだあるのか!? ならば私にも貸してくれ!」

「え?」

「ダメか?」


 姫騎士は勇者に潤んだ瞳で詰め寄る。


「……わかったよ」

「ありがとう!」

「まぁここ一年、この刀を使っていなかったし、そこまでは怒られないかも?」

「そうなのか? じゃあ、妹殿はどうやって戦っていたんだ?」

「力が上がって、すぐに折れるようになったから、もっと優れた刀を使っていたんだ」

「これより上があるのか……」

「例えばこれ」


 勇者はアイテムボックスから、ひと振りの刀を取り出す。


「それは?」

「何か魔法が付与されていると言っていたな」

「見せてくれ!!」

「あ、ああ……」


 姫騎士は勇者から刀を奪い取ると、鞘から抜いて刀身を見る。


「素晴らしい! 先ほどの刀より、さらに洗練されている。それに軽い!!」

「あ、確か、スピードが上がるんだったかな?」

「スピードが……こっちを貸してくれ!」

「それはダメだ。二本しか残っていないからな」

「二本もあるじゃないか!」

「でもな~」

「ちなみに、どれぐらい保管しているのだ?」

「半年ぐらいかな~?」

「ちなみに、ちなみにだけど、妹殿は、最後はどのような刀を使っていたんだ?」

「ちょっと前までは、炎が出る魔刀を使っていて、それが折れたから、絶対に折れない作りの刀を作っていたな。それは雷が出たな」

「絶対に折れない!? 雷が!? と言う事は……」


 姫騎士は頭をフル回転させて、ある答えに気付いたようだ。


「それって、勇者殿を倉庫にしていないか? 絶対に折れないなら、他の刀は使わないだろ?」

「いや、また使うかもしれないから入れておいてくれと頼まれたから、使うだろ?」

「絶対使わないぞ! それは物を捨てられない者の常套句(じょうとうく)だ! そもそも、半年も一年も放置している時点で忘れているだろ!!」

「でもな~。使うって言ってたしな~」


 姫騎士は興奮して説得するが、勇者はのらりくらりと弁明する。このままではらちが明かないと、姫騎士は最終手段に出る。


「……貸してくれたら、起こす機会があれば踏んでやる」

「本当か!?」

「あ、ああ……」

「わかった! よく考えたら、妹に怒られる時も踏まれていたし、逆にご褒美を貰えるかも知れないな」

「う、うん……」


 それの何処がご褒美なのかわからない姫騎士だが、思ったよりも変態な勇者に、ドン引きして肯定するしかなかったようだ。

 そうこうしていると、ドアーフとの話が終わった魔王が勇者に声を掛ける。


「お兄ちゃん! 馬車を分解してもいいかとドアーフさんが言っているのですが、分解してもいいですよね?」

「え……馬車は、あと四台しか持っていないんだが……」

「そうなんですか……いいみたいです~~~!」


 魔王は勇者の返事を聞くと、ドアーフに叫んで知らせる。その声を聞いて、ドアーフ達は馬車を引いて自分達の町へと帰って行った。


「いいとは言ってないんだが……」

「え!? そうだったのですか? 四台もあるならいいのかと思いました。すみません……」

「うっ……かわいい。じゃなく、まぁいいよ」


 勇者の言葉にしゅんとして謝った魔王だったが、その顔を見た勇者は許可を出す。


「お兄ちゃん……あ、ありがとうございます」


 そして、勇者の気持ち悪い顔を見て、気持ち悪がる魔王であった。そのやり取りを見ていた姫騎士は、魔王には簡単に許可する勇者に対してブツブツ言っていた。





「それじゃあ、行きましょうか!」


 魔王は音頭を取るが、例の如く担がれて勇者が歩き出す。その後に続き、テレージアがパタパタと魔王の膝に乗り、姫騎士、コリンナ、三少女と続く。

 牧場に預けてあった巨大ホルスタインのアルマを受け取ると、驚く姫騎士達を無視して馬車を繋ぎ、アルマに揺られて魔都に向かう魔王一行であった……



「「「「「ぎゃ~~~!」」」」」

「テレージアさん! アルマちゃんを止めてくださ~~~い!! ぺっぺっぺっ」


 走り出したアルマの後ろ脚で跳ね上げられた土に、急停止を余儀なくされる魔王一行であった。


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