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034


 騎兵の手当てを頼んだ姫騎士だったが、テレージアがキレてなかなか話が進まないので勇者に頼む。


「包帯を持っていないか?」

「ああ。あるぞ。サシャとテレージアは馬を頼む」

「わかりました」

「まだ話は終わってないわよ~……ムグッ」

「話は後で聞きますから、お願いします」


 テレージアは魔王に捕まって馬の元へと運ばれ、姫騎士と勇者は負傷者の手当てにあたる。すると、姫騎士は勇者の顔を見ながら疑問を口にする。


「お前は不思議な男だな。体は強靭なのに、誰一人傷を負わせないとは……」

「頑丈だけが取り柄なんだ」

「そんな事はないだろう。走るのも速いし、馬にも負けない力がある。それほどの力があれば、殴るだけでも敵は倒せるだろう」

「かもな。でも、出来ないんだ」

「血を見るのが怖いってわけでもなさそうだが……私の見立てでは、かなりの修羅場を経験しているのだろ?」

「買い被り過ぎだよ」

「話したく無いと言う事か……」

「いや。修羅場に居ても、立っているだけで、俺は何もしていないんだ」

「……そうなのか」

「お喋りしてないで、手を動かそう。日が暮れてしまいそうだ」

「……わかった」


 姫騎士は質問を諦めて、勇者と黙々と応急手当てをする。




 一方、魔王達はと言うと……


「お馬さん。かなり苦しそうです。治せそうですか?」

「誰に言ってるのよ! このテレージア様に任せなさい!!」

「さすがテレージアさんです!」

「へへん。もっと褒めなさ~い」

「すごいすご~い……これでいいですか?」

「やっつけ仕事か!」

「まあまあ。お願いしますよ~」

「わかったわよ……と言いたいところだけど、あたしは集合魔法しか使えないのよね~」

「は?」


 テレージアの発言に、珍しく魔王は顔を歪める。よいしょまでさせられたのだから、仕方がない事だろう。


「だ、だから、魔王も手伝って! そしたら簡単に治せるのよ」

「……いいですけど、どうするのですか?」

「魔王って魔力が多いでしょ? それを分けてくれたらいいのよ」

「そんな魔法は知りません」

「あたしの詠唱の後に続いてくれたらいいだけよ。それなら出来るでしょ?」

「魔族の使う集団魔法みたいなモノですか……わかりました。それではお願いします」

「オッケー!」


 テレージアの唱える呪文に続き、魔王も呪文を唱える。詠唱が終わると【癒しの風】が完成し、馬の怪我が完全に治るのであった。



「かなりの魔力を使うのですね」

「本来は妖精10人以上でやるからね。それを魔王一人でやって、ケロッとしてるなんてたいしたものよ」

「テレージアさんに褒められました! 奇跡です!!」

「あたしだって褒める時は褒めるのよ!」


 魔王の言葉にテレージアは照れて、プイッと横を向く。魔王はそんなテレージアは無視して馬を撫でていると、二人の元へ勇者が走って来た。


「一人死にそうな奴がいるんだ。ちょちょいと治してくれないか?」

「コリンナの味方をするわけじゃないけど、助ける必要あるの? 魔王の敵が減るのよ?」

「あ、そっか。それじゃあ、魔力が尽きたとでも言っておくか」

「それはダメですよ。助けられる命があるのなら、助けましょう!」

「サシャがいいのなら、俺はかまわないぞ」

「もう! わかったわよ。ホント甘いんだから~」


 テレージアは悪態をつくが顔は笑っているので、怒っているわけではなさそうだ。


 皆で姫騎士の元へ行くと、テレージアは相談する。


「あたしの治療魔法は強すぎて、完全に治ってしまうんだけど、どうする?」

「動けないままの方がいいのだが……まぁ治してから、足を折るなりすればいいか」

「わりと残酷な事を言うのね……」

「でしたら私が治療してみます」

「サシャが?」

「弱い回復魔法なら使えますので、血止めぐらいなら出来ると思いますよ」

「じゃあ、魔王に任せるわ」

「はい!」


 魔王が呪文を唱えると血は止まったが、完全には治せなく、ちょうどいい塩梅で治す事は出来たようだ。そこを包帯を巻いて、応急手当てを終わらせる。

 魔王が加わった事で、応急手当はスピードアップし、全員の手当てを終わらせると勇者は馬を追い掛け、二頭捕まえて戻って来た。

 皆には信じられないモノを見る目で見られていたが……


「馬か……私は乗れるけど、他はどうだか」

「私も乗れますけど……」


 姫騎士と魔王は馬に乗れるようだが、その他は首を横に振っているので、勇者は元々の案を実行する。


「ああ。馬車を出すから、繋ぐのを手伝ってくれ」

「馬車を……あの男は、どうなっているのだ?」

「まぁお兄ちゃんは変わっていますからね」

「変態よ」

「それで話を終わらせないでくれ! 剣は効かないし、家は出て来るし、かなり変だぞ!!」


 姫騎士はついにキレた。今まで我慢していたのかも知れないが、魔王もテレージアも、説明出来ないので宥める事しか出来ない。

 当の本人も、自分の能力を詳しく知らないので、笑って答えるしか出来ないのであった。


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