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「次はどうしたらいいしぃ?」


 一通りの作業を終えたサシャは、城攻めの最終確認をしていた姫騎士達の会議に、許可なく入って来た。


「サシャ殿か……これより城の中で戦う事となるから、大きな攻撃はいらないのだが……」


 サシャに暴れられると城が崩れると感じた姫騎士は、やんわりと拒否してみる。


「ま、峰打ちで倒してやるしぃ!」


 しかし、まったく聞いてくれない。なので、城の地図を広げて、壊してはいけない場所をこんこんと説明する姫騎士。


「ぜんぜん信用してないしぃ!!」


 何度も壊さないようにお願いされたサシャのツッコミ。そりゃ、これまでの経緯が悪いのだから仕方がない。

 それからサシャを組み込んだ作戦を隊長クラスに説明していると、サシャの顔色が変わった。


「どうかしたか?」


 いきなり険しい顔に変わったサシャに、姫騎士は不思議に思う。


「なんか、ヤバイ気がするしぃ……」

「ヤバイ??」

「シッ!!」


 サシャが皆に静かにするように言い聞かせていると、地面が小刻みに揺れ出した。なので、サシャは地面に耳をつけて確認する。


「デカイのが地下で動いてるっぽい?」

「確かに……」


 姫騎士やその他の者もサシャをマネて音を確認している中、サシャは立ち上がる。


「ウチの勘的に言うと、かなりヤバイ奴だしぃ。元の世界の魔王ぐらい……それ以上かもしんないしぃ」

「サシャ殿でも倒せないのか?」

「ウチ? ウチもあの頃より強くなったかんね。負けるわけがないっしょ~。でも、派手な戦いになると思うから、場所が欲しいしぃ」

「なるほど……」


 サシャの言葉を聞いて、不安な顔をしていた姫騎士は安心し、兵を操る。現在、民や兵士が居ない場所を聞くと、その近辺にはできるだけ迅速に距離を取るように指示を出す。

 その導線も近付かないように指示を出し、残っている者には急いで離れるように指示を出した。



 そうして各所に連絡をしていると、険しい顔をした勇者が駆け寄って来た。


「姫騎士……なんだかヤバイ奴が近付いているぞ」

「勇者殿もか……」

「俺も??」


 姫騎士の失言。サシャの存在を知られるわけにもいかないので、慌ててごまかす。


「いや、なんでもない。その敵は、東の地を空けているから、そこで対応する予定だ」

「東か……確かにそっちから嫌な感じがするな。俺はどうしたらいい?」

「そうだな……」


 姫騎士がフードを深く被ったサシャを見ると、手をブンブンと横に振っていた。なので姫騎士は空気を読んで、勇者に作戦を言い渡す。


「ひとまず、ヤバイと言われている敵は最長老様が相手をする。勇者殿は城攻めに協力してくれ」

「最長老が……いや、俺もそっちに行くよ」


 しかし空気の読めない……いや、敵の強さに空気を読んで、勇者は危険の正体に向かおうと言うが、サシャは激しく手を横に振っている。


「まずは城攻めだ。その後、余裕ができたらヤバイ敵に向かってくれ」

「そうか……」


 ようやく作戦の決まった姫騎士は、城攻めに移る。


 先鋒は勇者単独の突進。城の扉を吹き飛ばしてもらう。そして城内を走っている間に、姫騎士はサシャを見る。


「もういいぞ」

「オッケー。ウチも行くしぃ!」


 サシャは勇者が消えると、空を舞って城のてっぺんにて敵が現れるのを待つ。


『よし! 我々も突撃だ~~~!!』

「「「「「おおおお!!」」」」」


 サシャが空に飛び上がった直後、姫騎士は兵士を鼓舞して、勇者が開けた穴から雪崩れ込む。


 ()くして、帝都攻防戦、最終決戦が始まった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 城の中に飛び込んだ勇者は、剣を向ける兵士や騎士を跳ねながら走っていた。集団が居れば薙ぎ倒し、逃げる兵士も追い掛けて跳ね飛ばす。ほどほどまで進むと後方が騒がしくなって来たので、(きびす)を返して姫騎士の援護にあたる。

 姫騎士は勇者に指示を出しながら兵を操り、倒れた帝国兵は速やかに拘束されて場外に運ばせる。

 それでも戦いにくい城内。剣や弓矢、魔法が飛び交い、自軍にも負傷者が出る。その場合は、後方支援のペティーナに連絡を入れ、交代要員を送ってもらう。


 そうこうしていたら、一階は完全制圧。勇者を先頭に階段に向かうが、その時、地面が大きく揺れた。


「な、なんだ!?」


 姫騎士軍は、こけたり尻餅をつく者が続出。このままではマズイと感じた姫騎士は叫ぶ。


『しゃがめ! 揺れが収まるまで待機~~~! 勇者殿も戻ってくれ!!』


 姫騎士軍が揺れに耐える態勢を取ると、外から大きな音が聞こえて来るのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 サシャは城のてっぺんから敵が現れるのを待っていた。


「そろそろだしぃ」


 サシャが真剣な顔で呟くと、東の城壁が崩れ、大きな穴が開いて瓦礫が沈んで行く。その数十秒後、巨大な頭が見え、地面を持ち上げながら、高さ50メートルを超える人のような形をした物体が姿を現した。


「ゴーレム?? じゃないしぃ……」


 サシャは、一見ゴーレムに見える巨人に、疑問を抱く。


「ま、隙だらけの今の内に、ぶっ飛ばすしぃ!!」


 ここで動かれると多くの人が巻き込まれると感じたサシャは、呪文の詠唱を始め、両手を掲げる。そのサシャの頭上には、大きな金属の塊が作り出され、巨人に向かって二本の雷が走った。


「喰らえ~! 【電磁砲】!!」


 サシャの叫びと同時に、雷鳴と金属の塊がぶつかった衝撃音が響き渡る。驚く事に、金属の塊は瞬きする間に巨人の胸に直撃。運動エネルギーと大質量のぶつかり合いに、大きな衝撃音を発生させる。

 その衝撃に金属はヒビが入るが、巨人を押し込み、帝都を囲む外壁から、2キロほど離れた地点まで移動させた。

 もちろん、その導線の家やお店は木っ端微塵。それでも帝都内で巨人に暴れられるよりは、最小の被害だとサシャは判断したのだ。



 瞬間移動にも似た攻撃を喰らった巨人であったが、立ったまま動きを見せない。サシャも転移魔法で追い付いたが、首を傾げている。


「う~ん……ちょっとへこんだだけ? 兄貴ぐらい頑丈な奴だしぃ。でも、まったく動かないってどゆこと?」


 サシャは不思議に思いながらも様子を見て近付かない。そんなサシャの耳に、気持ちの悪い声が聞こえて来た。


「くふっ、くふっ、くふふふ」


 端末の声だ。その声を聞いたサシャは、警戒を強めるのであった。


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