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『みんな~? 楽しんでるしぃ~??』

「「「「「わああああ」」」」」

『ありがと~。じゃあ、次の曲、行くしぃ!』

「「「「「わああああ」」」」」


 ファッションショーは、サシャの登場でアイドルコンサートに変わり、サシャの歌と踊りに、観客の兵士達は沸き上がる。





 時は少し戻り、サシャがファッションショーに出たいと言い出した頃……


 ヨハンネスはせかせかと動いていた。


 姫騎士達に事情を説明すると、難しい顔をされたが、決定事項なので協力してもらわなくてはならない。

 相談の結果、ひとまず勇者さえ眠らせればなんとかなるかもとなったので、最前列に居た勇者をヨハンネスが呼び出し、テントの脇に待機していた魔王が飛び掛かった。

 これで最大の障壁であった勇者は夢の世界に旅立ったので、観客に事情説明。と言っても、全員サシャの存在は知っていたので、勇者にだけは絶対に知られてはいけないと念を押しただけだ。


 ようやく準備が整うと、サシャの登場。フリフリのドレスを着たサシャは空から舞い降り、歌って踊り出したのだ。


 ファッションショーに出たいと聞いていただけのヨハンネスや姫騎士達は、口をあんぐり。本当に隠す気があるのかと、陰口を叩いている。

 ただし、サシャの行動で我に返った魔王達は、急に恥ずかしくなったようだ。


「あんなに人が集まっていたのですね……」


 胸元を強調されたドレスを着る魔王は、人の多さに恥ずかしそうに胸を隠す。


「私の威厳が……」


 純白のドレスを着た姫騎士も、反省して小さくなる。


「うぅぅ……オレは何をしてたんだ」


 フリフリのドレスを着たコリンナまでも、後悔しているようだ。


 そうして三人は舞台に目を移すと、サシャ以外の歌声も聞こえている事に気付いた。


「テレージアさんの歌声も聞こえません?」

「ああ。しかし、何処にいるのだ?」

「う~ん……いた!!」


 テレージアはサシャより前に出て、パタパタと飛びながら歌って踊っている。


 テレージアは暇すぎて、同じく暇していたサシャと意気投合。歌や躍りを習ってマスターしていた。服も、この日のために、新調していたようだ。

 ただし、ほとんどの人はテレージアに気付いていないみたいだ。


「よく見えませんけど、歌は完璧みたいですね」

「いつの間に覚えたんだか……」

「恥ずかしくないのかな?」


 魔王、姫騎士、コリンナは、遠い目をしながらサシャのアイドルコンサートを見ている。どうやら、ファッションショーでも恥ずかしいのに、アイドルコンサートは、魔王達にはハードルが高いようだ。


 そうして突っ立て見ていると完全に日が落ちたが、アイドルコンサートは終わらない。三人はいつもの服に着替えを終わらせてどうしたモノかと考えていたら、姫騎士の元へ、参謀のペティーナがやって来て、報告を告げる。


「そうか。出て来たか……。ヨハンネス。サシャを止めておいてくれ」

「はい! ……はい!? 自分がですか??」


 姫騎士の指示に、勢いよく返事したヨハンネスは、姫騎士を二度見する。よっぽどサシャに近付きたくないのだろう。


「頼んだぞ」

「……はい」


 しかし、敬愛する姫騎士に肩を叩かれたヨハンネスは、渋々返事をするのであった。



 姫騎士はペティーナのあとに続き、会議に使っているテントに入るとすぐに行動に移す。

 騎士や兵士、馬車を集め、帝都の方向に駆け、しばらくすると、数十人の人族と接触した。

 剣を構えた兵士で囲むと、人族は怯えるように手を上げるが、ランプで照らされた姫騎士を見ると、パッと表情が明るくなった。

 どうやら、帝都から抜け出した住人だったようだ。


 しかし帝国軍の刺客の可能性もあるので、事情聴取と持ち物の検査をする。住人も素直に従い、敵意の無い者と判断した姫騎士は住人を馬車に乗せ、自陣に戻る。

 そこで食事を配布すると、感謝の言葉を送る住人に手を振り、魔王達の元へ戻った。


「まだやっているのか!!」


 そう。サシャの歌声は自陣に戻った時から聞こえていたので、姫騎士は急いでこちらに来たのだが、魔王達は全員頭を掻いて、「面目ない」といった表情をしている。


「いちおうヨハンネスさんが止めに行ったのですが……あの通りです」

「ヨ、ヨハンネス~~~!!」


 かわいそうなヨハンネス。サシャを止めに行ったのだがボコられ、気を失って倒れている。だが、姫騎士が看病してくれたので、幸せそうな顔に変わっていた。


「で、では、魔王殿……」

「む、無理です!!」


 姫騎士は魔王を見るが、食い気味に断られてしまった。


「コリンナ?」

「………」


 コリンナに至っては、目すら合わせてくれない。当然、フリーデも見たが、夢の世界の住人になっているので、役に立つわけがない。

 結局は自分で行くしかないと悟った姫騎士は、サシャの元へと向か……


「ついて来てくれ! お願いだ!!」


 一人では心細いのか、魔王達に無理を言ってついて来てもらう姫騎士であったとさ。



 曲が終わり、サシャがMCに切り替えてテレージアと「キャッキャッ」としているのを見ると、姫騎士達は頷き合い、ステージに乱入する。


「失礼する!」


 姫騎士の声を聞いて、サシャは目を輝かせる。


「クリクリ達も一緒に歌うしぃ!」


 マイクを姫騎士の前に持っていくサシャの手は、やんわりと弾かれた。


「すまない。そろそろ解散したいのだ」

「え~~~!」

「も、もう日が暮れてしまいましたし、解散しましょ?」


 姫騎士の言葉にサシャが嫌そうにしたら、魔王も優しく宥めようとする。


「こうなったら、朝まで行くしぃ!!」

「いやいや。明日、帝都攻略があるからダメよ!」


 オールを示唆するサシャには、さすがにコリンナもツッコンでしまった。


「あ……」

「わかってくれたな?」


 サシャもようやく遊んでいる場合ではないと気付き……


「もう一曲だけ!」


 気付いたが、わがままを言って、一曲どころか二曲も歌うのであったとさ。


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