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 バルトルトがリュディガーから多数の魔物に襲われたシャヌクホルツ王都の現状を聞いていると、一人の女が空から降って来た。


「外は粗方、片付いたしぃ」


 サシャだ。空から降り立ったサシャを見たリュディガーは驚いているが、バルトルトのほうが驚きが大きいようだ。


「もう終わったのか!?」

「けっこう数がいたから、テンション上がって飛ばし過ぎたしぃ」


 「にしし」と笑うサシャに、バルトルトは一抹の不安を抱く。


「派手に魔法を使っていたようだが、魔力は大丈夫なのか?」

「ちょっち使い過ぎたかな? ま、残りは町中の一万と、外の千ちょっとだから、節約すればなんとかなるっしょ~」


 サシャが残りの魔物の数を伝えると、リュディガーが反応する。


「報告では五万近くいると聞いていたが……こんな小娘一人で、そんな事ができるわけないだろ?」

「小娘言うなしぃ!」


 サシャがぷりぷりすると、バルトルトが慌てて止めに入る。


「信じられないだろうが、サシャなら可能だと思う。紹介が遅れたが、この二人は勇者サシャと、勇者……兄だ」

「勇者兄??」

「美少女勇者サシャとバカ兄貴だしぃ!」


 バルトルトが紹介するが、サシャが訂正し、リュディガーはよけい混乱する。自分を美少女と言って、勇者が一人消えたのだから致し方ない。そのバカも「キャーキャー」言って、サシャを称えているからな。


「ま、まぁ言いたい事はわかる。さっきまでずっと鳴り響いていた大きな爆発音を聞いただろ? サシャの魔法だ」

「勇者の魔法……」

「サシャ。もう少し町中を減らしてくれるか? こちらも出撃の準備が整い次第、打って出る」

「お安い御用だしぃ!」

「あ! サシャ~!!」


 サシャが城壁から飛び降りると、勇者も追って飛び降りる。そして、サシャは刀を抜きながら走り、オークの群れに突撃するのであった。




 その姿を見たリュディガーは驚愕する。


「なんだあの剣は……」


 踊るように刀を振るサシャは、オークを次々に肉塊に変えている。


「あの男は何してるんだ?」


 サシャの真後ろについた勇者は、動きに合わせて楽しそうに笑っている。


「気持ちはわかる……」


 バルトルトも、何度も見た二人の行動なのだが、いまだについて行けていないようだ。


「だが、もう間もなくこちらが優勢に傾く。準備を急ごう」

「あ、ああ……」


 呆気に取られているリュディガーだったが、劣勢だった自軍が盛り返す可能性が出たので、気を取り直して作戦会議を執り行う。

 魔物と人族兵の数は、サシャの活躍でほぼ同数となり、現在進行形で魔物は減っているので、掃討戦に移行するようだ。


 兵士を城門に並ばせ、サシャが去った城門から出陣。サシャの取りこぼしを複数で危なげなく処理する。

 ただし、サシャは城壁を一周するように戦っているので、通る道は嵐のような危険地帯になっている。なので近付いた場合は、速やかに兵士を城門から入れ、嵐が去ってからまた出撃と繰り返す。


 バルトルトも戦闘に加わり、小一時間が過ぎた頃、サシャが近付いて来た。


「おっちゃ~ん。もうウチいらなくね?」


 どうやら、戦況が終わりに近付き、弱い魔物に飽きたようだ。


「そうだな……ここまで来たら、あとは大丈夫そうだ。次に備えて休んでいてくれ」

「忙しいなら、先に行ってるしぃ」

「そうはいかない。サシャだけだと、他国の者からの協力をもらえないからな」

「ふ~ん……じゃあ寝てるしぃ。なんかあったら、呼んでくれしぃ」


 サシャは納得したわけではなさそうだが、少し疲れたからか、城壁に向かって歩く。しかしその時、町に轟音が響き渡る。その轟音は鳴りやまず、凄い速さで城へと近付く。


「おっちゃん! なんかヤバイ奴が来たしぃ!!」


 勇者の勘で危険を察知したサシャは、振り返り様に叫ぶ。


「サシャが焦るほどか!? 退避だ! 全軍、直ちに退避~~~!!」


 バルトルトも焦りながら指示を出し、兵士は逃げるように城門に向かう。サシャは兵士とは逆行して歩き、今までとは信じられないような真面目な顔をしている。


「サシャのレアフェイス、いただきました!」


 勇者は回り込んで見てるよ。後ろ向きに歩いてよくやるよ。


「兄貴……邪魔」

「あ……すまない」


 サシャに叱られた勇者は、すごすごと道を開けて後ろにつく。


 そうして兵士が続々と城壁内に消えて行く中、轟音をあげている主が町を破壊して現れた。


「モオオォォォ~~!!」


 轟音の主は、双子勇者の目の前で止まる。牛の頭を持つ魔物、ミノタウロスだ。だが、普通のミノタウロスより巨大で、(まとう)う気配も桁違い。サシャもよりいっそう気を張り詰める。


「貴様が我が同胞を殺しまくった人族か!」


 ミノタウロスもサシャの力を感じ取ったのか、断定するように喋る。するとサシャは……


「喋ったしぃ!!」


 驚いた。どうやら、魔物が喋るのは初めてだったようだ。


「我を下等な魔物と思っておるのか? 我は魔王様に仕える四天王の中で、最強のタウロス様だ! 同胞の仇をとらせてもらうぞ。モォォォ~!!」


 タウロスは名乗りを終えると、大声を出して威嚇する。サシャはその声に(おく)する事なく返答する。


「なんでいきなり四天王最強が来てんだしぃ!!」


 いや、納得いかないからか、噛み付いた。そりゃ、四天王一発目が最弱じゃなくて、最強ではそう思うか……


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