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 魔物に襲われ、救出を待つシャヌクホルツ王都に向かう双子勇者はサンクルアンネン王国を立つ。それから数時間後、めいっぱい飛ばすサシャに遅れまいと走る勇者。

 しかし、出遅れてしまっているのでサシャを見失う。それでも勇者は走り続け、夕暮れ時に街道に立つサシャを発見した。

 すると勇者は、さらにスピードを上げて大声でサシャの名を呼びながら近付き、地面を削って止まる事となった。


「サシャが俺を待っていてくれた……」

「そんなんじゃないしぃ! てか、おっちゃんは生きてるしぃ?」


 感動している勇者を他所に、サシャはバルトルトの生死を確認する。もちろんチャリオットには、馬車酔いに苦しんだバルトルトの死体が乗っていた……


「まったくだらしないしぃ……もういいや。兄貴、メシ!」

「おう! 任せておけ」


 サシャの命令を聞いた勇者は食事の用意を始める。と言っても、パーティーに出ていた料理とテーブル等をアイテムボックスから取り出すだけ。サシャが好んで食べていた物を拝借して来たようだ。

 サシャはもちろん美味しくいただくが、勇者への感謝は無い。勇者もサシャの喜ぶ顔を見れただけで幸せなようだ。


 そうこうしていたらバルトルトも復活して、食事を少しだけ胃に入れる。まだ完全復活といかないようなので、水を飲みながら会話に入る。


「今日はここで夜営にするのか?」

「進みたいのは山々なんだけどね~。空からだと、暗くて通り過ぎてしまいそうだしぃ」

「確かにな……少し待て、連絡を取ってみる」


 バルトルトはそう言いながらチャリオットに戻り、シャヌクホルツ王都の兵と通信マジックアイテムで連絡を取る。一通りの情報を聞いたバルトルトは、マジックアイテムの節約の為に、すぐに切ってサシャの元へ戻る。


「どうだったしぃ?」

「夜になって、魔物も攻撃を止めているみたいだ。ここからなら、昼までには着けるだろう。それまで耐えるように言っておいた」

「うっし。じゃあ、寝るしぃ! その前にシャワー!」

「おう!」


 話がまとまったサシャは、話をまったく聞いていなかった勇者にシャワールームを取り出させる。そして、バルトルトが覗かないように見張っていろと命令してゆっくり入る。

 寝床は荷車の上で毛布を頭から被って寝るのだが、サシャは視線を感じてなかなか寝付けないようだ。

 当然、勇者がジーーーっと見てるから気持ち悪いのだろう。


 そんな気持ち悪い勇者に、バルトルトが声を掛ける。


「見張りは俺がやっておくから、お前も寝ろ」

「サシャを襲う気だな! がるるぅぅ」

「違うわ! お前が寝不足だと、明日の戦闘に支障が出ると言っているんだ! 俺より役に立つはずだからな」

「がるるぅぅ。そんな事を言っても信じないぞ!」

「うっさいしぃ!」


 二人のやり取りに、迷惑に思ったサシャが毛布をバッと(めく)って怒鳴る。


「おっちゃんの言う通り、兄貴の出番が来るかもしれないから寝ろしぃ」

「サシャが俺を頼っている……任せておけ!」


 サシャの言葉に感動した勇者は毛布にくるまれると一瞬で眠った。ただ単に、勇者に見られたくないサシャの知的な策だったのだが……


 バルトルトも命令されただけで一瞬で眠る勇者に「なんだこいつ?」って目をして夜は更けていく。






「【大爆発】だしぃ!!」


 翌朝、夜営地を出発した勇者一行は、昼よりかなり早い時間にシャヌクホルツ王都に到着した。そこでサシャが、外壁を四方から攻めている魔物を爆発魔法で一掃する。


「まだまだ~! 喰らえしぃ!!」


 空からのサシャの攻撃は一方的。ゴブリン、オーク、トロール、オーガ、数万もの魔物が爆発に巻き込まれて死んでいく。

 その中を勇者はチャリオットを引き、外壁の穴から侵入する。そうして城の建つ中央に向けてひた走る。

 しかし、町中にも魔物が入り込んでおり、勇者に向かって来る魔物が多くいる。まぁ勇者が跳ねまくっているから問題ないようだ。



 しばらく走り、城の手前に居たオーク部隊の肉の壁を、ボーリングのピンの如く薙ぎ倒した勇者は城門の前でストップする。すると、人族兵が何事かと弓を構えた。


「待て! 待て~! 私はサンクルアンネン王国騎士団、副団長のバルトルトだ。強力な援軍を連れて来た。入れてくれ~!」

「しばし待たれよ~」


 チャリオットから叫ぶバルトルトであったが、魔物に取り囲まれている現状では、すんなりと開門とはいかないようだ。

 その間もオーク達は勇者とバルトルトに、にじり寄っている。


「いつ開くのかな?」

「くっ……早くしろ」

「待つのも面倒だし、勝手に入ろう」

「この高い城壁をどうやってだ?」

「いい方法がある」


 バルトルトは勇者の言葉に嫌な予感が走り、逃げ出そうとするが、あっと言う間に回り込まれて脇に手を入れられた。


「待て! やめろ~!!」

「たかいたか~い」

「ぎゃ~~~!」


 城壁のそばから高く投げられたバルトルトは悲鳴をあげて飛んで行った。勇者も投げた瞬間にチャリオットをアイテムボックスに仕舞ってジャンプ。宙にいるバルトルトの首根っこを掴んで城壁に降り立つのであった。


「し、侵入者だ~!」


 当然、勝手に入って来た勇者達は、兵士に囲まれて剣を向けられる。


「この紋章を見てくれ! それと、リュディガー将軍にバルトルトが来たと言ってくれたらわかってくれるはずだ!」


 バルトルトが慌ててリュディガーの名を出すと、兵士も顔を見合わせて殺気が減る。そして、どちらも膠着(こうちゃく)状態となっていると、数人の騎士が走って来た。


「皆の者、剣を降ろせ! バルトルト殿は味方だ!!」


 どうやら、バルトルトの名を聞いたリュディガーは、直接会いに来たようだ。リュディガーの声に、兵士達は武器を下ろし、持ち場に戻って行った。


「本当に、一日で来てくれたのだな」


 リュディガーは感謝の言葉を述べながら、バルトルトと握手を交わす。勇者は……サシャに会いに行きたくてそわそわしているな。


「ああ。しかし、ここまで攻め込まれていたとは驚きだ。民は大丈夫か?」

「ほとんど城に避難させているが、正直、被害の程はわからない」

「そうか……」


 バルトルトがリュディガーから凄惨(せいさん)な現状を聞いていると、一人の女が空から降って来るのであった。


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