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 双子王者の到着した訓練場では、すでに試験が開始されており、試験官の騎士が志願者と実践形式で戦い、力を見ている姿があった。

 サシャと勇者は番号が連番であった為、隣り合ってイスに座り、皆の戦いを眺める。


「おお~。派手にやってるな~」

「そう? ウチのほうが派手じゃね?」

「そうだな。いや……サシャの戦い方は美しい!!」

「兄貴に褒められても気持ち悪いだけだしぃ!」

「事実なんだからいいだろ?」

「そうだけど……」

「しかしなんだ……剣も魔法も、サシャより凄い人はいないんだな」

「確かに……試験官すら、余裕で倒せちゃいそうだしぃ。このレベルなら、全員相手しても倒せちゃうしぃ」

「あはは。サシャなら絶対に勝てるな」

「簡単だしぃ! あはははは」


 珍しくサシャは勇者と意見が一致し、一緒に大声で笑い合う。そうして二人で笑っていると、隣に座るがたいのいいオッサンが、苛立った声を出す。


「ハッ! 小娘が、何が全員相手して勝てるだ。お前のような小娘なんか、角ウサギすら勝てるわけがないだろう」

「はあ? んなの、万匹来たところで数の内に入らないしぃ!」

「がはは。強がるなら、もっとマシな嘘をつけ。小娘らしい嘘だな。がはははは」

「嘘じゃないしぃ! 兄貴も言ってやれしぃ!!」

「怒るサシャもかわいいな~」

「キモッ! そんなこと言えとは言ってないしぃぃぃ!!」


 それからサシャが一方的に勇者を(ののし)り、がたいのいいオッサンは会話に入る事ができなくなる。しかしその声は大きく、試験官にまで届く事となった。


「おい! 何を騒いでいるんだ!!」


 試験官に怒鳴られたサシャは、悪びれる事なく答える。


「このオッサンが、ウチをバカにしたから悪いんだしぃ」

「はあ!?」


 オッサンはサシャの言い分に驚く。最初にバカにしたのは事実だが、サシャが一人で騒いでいた時間のほうが圧倒的に長いのだから致し方ない。


「お前がずっと騒いでいたんだろうが!」

「オッサンがウチを笑うから悪いんだしぃ」


 当然、オッサンも口が悪いので文句を言い、口喧嘩に発展してしまったので、試験官が止めに入る。


「静かにしろ! お前達はここに何をしに来たのかわかっているのか!!」

「だってオッサンが……」

「オッサン言うな! これでも俺は21だ!!」

「嘘言うなしぃ!!」

「なっ……嘘じゃないぞ!!」


 試験官が止めに入るも、口喧嘩は拍車が掛かる。そうしていると、オッサンの番号が呼ばれた。

 口喧嘩をしている場合じゃなくなったオッサンは、舌打ちしながら試験官の前に立つ。


「ふむ……北の国のゲオルフか。この国にまで貴殿の名は聞こえているぞ」


 試験官の褒め言葉に、ゲオルフはニヤリとしながらサシャを見る。するとサシャは、あっかんべをして目を逸らす。


「だが、試験は試験だ。腕前はきっちり見させてもらおう」

「おうよ!」


 試験官は模擬刀を構え、ゲオルフは自身の得物、バトルアックスを構える。その光景を見たサシャはゲオルフにちゃちゃを入れる。


「うっわ……刃のある武器を使うなんて汚いしぃ。卑怯者だしぃ!」

「うるさいわ! 自分の得意武器を使えって説明で言われただろ!!」

「そうなの?」

「さあ??」


 サシャは説明を聞いているフリをしていただけなので勇者に振るが、勇者はサシャを見る事に集中していたのでまったく聞いていなかった。


「どうして二人して聞いていないんだ!!」

「もういい! 早く掛かって来い!!」

「や~い。怒られてやんの~」


 ゲオルフがサシャに詰め寄ろうとするが、試験官が怒鳴り、それを茶化すサシャは試験官に睨まれて、口笛を吹きながらそっぽ向く。



 ひとまず場が落ち着くと、試験官が再度始めの号令を掛ける。


 そこからはゲオルフの猛攻が始まった。

 ゲオルフは自分の身の丈はありそうな斧を軽々と振り回し、試験官を攻撃し続ける。


「あのオッサン。意外とやるじゃん」

「そうなのか? ほとんど避けられているぞ?」

「兄貴はわかってないしぃ。今まで試験官は防御すらさせていなかったしぃ。それなのにあんな大きな斧で当てるなんて、それだけ繊細な攻撃をしてるって事だしぃ」

「さすがサシャ! よくわかるな~」

「兄貴がバカなだけだしぃ」


 二人が軽口を言い合っていてもゲオルフの攻撃は止まらない。しかし、体力は無限とはいかず、疲れが見え始めた頃に試験官が攻撃に移り、善戦虚しく、首元にピタリと剣を止められてギブアップを宣言する。

 それから試験官がゲオルフに、二言、三言、声を掛け、息を切らしたゲオルフは少し進んだところで腰を下ろす。


「次だ! 23番、前に出ろ!!」

「ウチだしぃ!!」


 サシャは意気揚々と、駆け足で試験官の前に立つのであった。


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