一石二鳥
シンが一回り大きな狼と対峙してる頃、うさたんズと狼達は互いに威嚇しながら徐々に近づいていた。
――キュアア
――グルルルル
円を描くようにじりじりと横に移動しながら渦のように近づいていく。アイズとウレアはクァルが抱えて退却している。そのため、足手まといを無くしたイムル達は心置きなく戦えている。
今のところ狼は合流して4匹、うさたんズは5匹と数からして有利にたっている。しかしレベルの面、体格でいえば狼達に軍配が上がる。それを埋めているのは数と技能だ。
先に動いたのは狼達だ。力の分散をはかるように散開し、ヒット&ウェイの要領で近付いては離れ、隙を窺いながら追い詰めていく。それに対してうさたんズは全方位に警戒しながら1ヶ所に固まっている。
狼の中では命令系統が決まっているのか一匹が声を上げると四方に散開してブレーキをし、うさたんズに飛び掛かった。彼等からしたら完璧な連携であり、空間も確保して着地点、狙った獲物の差別化もできていた。
しかし、相手が悪かった。うさたんズを狼達が飛び掛かってきた方向にそれぞれ走り出し、そのうちキアリは真ん中で狼達より高く飛び上がった。
狼達はうさたんズを見失い、戸惑いで一瞬動きが止まった。そこへ真上に跳び跳ねたキアリが地面に槍を突き刺した。それに驚いた狼達はえびのように後ろに跳び跳ねた。
狙ったかのように狼達の後方に現れたうさたんズは狼達の背中の上に飛び乗り、首元に槍を突き刺した。脳髄や首の骨を破壊された狼達は身体をビクビクしながら倒れた。
うさたんズは集合し、勝利の雄叫びをあげた。
――キュアアアアアアア
勝利宣言をしたうさたんズは狼を担いで主人の元に帰った。その頃にはアイズとウレアは目を覚ましていた。
「お、お疲れ様」
シンの元に帰ってきたうさたんズはねずみを狩ってきた猫のように獲物を見せびらかした。そんなうさたんズの頭を撫でながら誉めた。
「すごいね。僕も倒したよ。ちょっとボロボロだけど…」
一回り大きな狼は最初の頃の凛々しさの欠片もないほどボロボロだ。それに対して槍で一突きで倒された狼はきれいだ。見た目のきれいさについて褒めたのだが、大きさの違いでシンの方がすごいとうさたんズは誉めた。
「じゃあ帰ろっか」
うさたんズの反応に照れながらも狼を担いで拠点に帰還した。倒してきた獲物についてだが、大変長谷川さんに驚かれたが、狼は食べられないので捨ててきなさいと言われた。解せぬ。
皮については使えるが、今のところ革職人がいないためなにもできない。ということでこの一回り大きな狼は魔法生物にすることになった。
一回り大きな狼の魔石は進化に使うので悠太に預け、普通の狼の魔石を使うことにした。狼の死体に関していえば大量にあるのでキメラウルフにさらに合成した。
魔法生物はどうやら今のところ2種類の魔物なら混ぜられるようだ。これは試したのでわかった。ウルフラビットに対して三種類目としてカラスを混ぜようとしたらそもそも発動しなかった。
ということで同じ種類の狼の巨大化を目指す。今のキメラウルフは通常の狼より二回り大きいが、もう少しもふもふ感が欲しい。なのでキメラウルフであるチルコ、ティア、トーマを呼び出して希望を聞いた。
チルコとティアは今のままでいいとのことなのでトーマを巨大化することにした。積み上がった狼の死体の前まで来るともう一度トーマに確認した。
「トーマ、この量を見ればわかると思うが、軽く4倍の大きさになると思うんだけど、大丈夫?」
――グルッ
「よし、いくよ」
トーマと大量の狼の死体を合成した。トーマにまとわりつくように狼の死体は吸い込まれた。トーマを中心に紫色の光が発光し、トーマの影は大きくなっていった。
光が収まるとそこには3倍ほど大きくなったトーマが立っていた。凛々しいと言うか禍々しい牙に針山のように鋭い毛を持った5本の尻尾、もふもふどころか刺々した全身の毛は鎧のようだ。3つあった頭は1つになったが、口の大きさは3つあったときよりも大きい。
「と、トーマなのか?」
――グガァ
ステータスを開いてみるとそこには。
《トーマのステータス》
名前:トーマ
合成前:キメラウルフLv8
合成後:ダイアウルフLv1
武力《4→16》魔力《1→2》気力《1→2》
耐力《3→14》速力《4→15》技力《3→9》
スキル《超嗅覚Lv2→4》《速力上昇Lv1→5》《瞬歩Lv1→4》《威圧Lv2new》《統率Lv1new》
トーマのレベルは1になり、ダイアウルフという種族になっていた。能力値も大幅にアップしていた。数値でいうと42ほど上がっていた。推測するに15と35で進化したのだろう。スキルレベルのアップは狼を大量に合成して経験が蓄積したから。そしてスキルが二つ増えたのは進化をしたからだろう。
「これで死体もなくなったし、トーマも強くなって一石二鳥だな」
――グルッ




