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1話)センチメンタルな君と僕

※当作品は純愛思考のラブコメです。決して、ホラーではありません。ただ、すこしヤンデレなだけです。関連わーどは、妹/ブラコン/シスコン/ストーカー/優等生/幼なじみ/アイドル/人殺し/臓器/ヤンデレ/メンヘラ/恋愛/純愛/ラブコメ

一面真っ青な雲ひとつない空。淋しいほど殺風景な空は僕の心の中みたいだ。



こんな空の下、僕は少女と向かい合う。しかし彼女は俯いたまま、なかなか言葉を発しようとしない。


もう10分も経ったよ……そろそろ帰ろうかな。


痺れをきらせた僕は、彼女に背を向けて一歩足をあげた……


「あの!!好きです!!」


突然、放課後の屋上に響き渡る女の子の声。意を決したような、力強い声。僕は振り返って一言こう言った。


「ごめん、坂本さんとは付き合えない」


そしてまた、彼女に背を向ける。



ごめんね……僕には君と付き合えない理由があるんだ。大切な、約束が……


僕は今度こそ屋上の出口へと歩みだした。


「どうして…どうして亜樹じゃ駄目なの!?」


突然叫びだした坂本さん。――なんだ?

僕は振り返る。


「相澤君が付き合ってくれないなら私、死んでやる!!!」そして大きなカッターナイフを取り出して、自分の左胸にあてる。だがその刃先は小刻みに震え一点に定まることはない。


そんな一生懸命な彼女をみたら、僕は何故だか笑えてきた。


そしてもう一度、振り向き直して彼女の元へ歩を進める。


「な、何!? いくら優しい言葉をかけてくれても、付き合ってくれないなら無駄なんだからね!!」



彼女は慌てながらそんな言葉を発する。対する僕は、無言で彼女へと近寄る。



そして、彼女ともう一度向き合って、こう言う。


「ひとつ、いいこと教えてあげるよ」


更に一歩踏み出し、僕は、









彼女の身体を強く 抱きしめた。


「そんな震えた手じゃ、死ねないよ」


「うっ……あ、あ゛ぁ゛……」


腕を離した瞬間、目の前で崩れ落ちる彼女。左胸にはカッターナイフが突き立ち、傷口から血が滴り落ちる。口をぱくぱくと魚のように開け閉めしていて、何だか滑稽だ。



「よーし、処理をしないとね」


坂本さんが完全に動かなくなったのを確認して、僕は彼に電話をかける。


『…プルルルプルルルプルガチャ もしもし?』


「あ、大樹? 僕だけど、また新鮮なのが入ったから、今すぐ学校にきて」


なんだか魚屋さんみたいだな……まあ、似てるといえば似てる…か……


『本当か?今行く ガチャ…プープープー…』




しばらくその場でのんびりと待っていると、


「優、お待たせー」


彼は大きなケースを抱えてやって来た。彼の名は舛田大樹ますだたいき。本人いわく、舛田の"舛"の漢字がどこぞの大臣と一緒なのがポイントらしい……何がポイントなのか、僕には理解できないけど……「それでこれが新しい奴か?お前にしては綺麗なやり方だな」


彼女を細部にわたってじっくりと見ながら彼は言う。なんだか言い方がムカつくな……


「僕にしては綺麗ってどういうことだよ。まるでいつもがよっぽど酷いみたいじゃないか」


「ははっ。だってホントの事じゃないか。それにしても、今日の品は完璧だな。肺も肝臓も眼球も…うん、ほとんどの臓器が完璧な状態だ。これならかなり値が弾むぜ?」


彼は、彼女の腹をまるで魚のように切り開き、こう言った。いつもながら思うけれど、彼の手捌きはいつ見ても素晴らしい。



そして僕があれこれ思っている間にも作業は進み、持ってきた大きなケースに臓器を慣れた手つきでしまっていく。


「それより、どうなんだ?お前の妹は」


ふと、大樹がケースに目を向けながら聞いてくる。


「まあまあ…かな」


そう答えた僕だが、実は僕には妹がいる。

しかし、妹はかなり珍しい病気にかかり毎日薬を飲まなければいけない。飲んでいれば普通の人と変わりないが、少しでも飲まないとすぐに体調を崩し、最悪の場合死に至る。だが、その薬は日本では認可されておらず保険がきかない。そのため、毎月金銭的に膨大な負担がかかる。臓器を大樹に売っているのもこのためだ。


でも、一人の命の為だけにこんなに沢山の無関係な人の命を奪っていいのだろうか……


「そうか。俺は、いいと思うぞ。ただ生きているだけの人間なんていてもいなくても変わらないさ♪」


難しい顔をしている僕の心境を読み取ったのか、大樹は明るくそう言った。



…………



流れる沈黙。

ちなみに、ここまでシリアスな展開に引っ張ってきて悪いけれど、全て冗談。

そもそも、妹は全くもって健康だ。まあ病気といえば病気かもしれないが……ブラコンという名前のね。



ふふっ、騙さ……ゲフンゲフン


え? じゃあ何故人を殺すのかって? そりゃあ、趣味だからだよ。みんながフィギュアを沢山集めるのと大して変わりはないよ。




しばらくして、片付けが終わったのだろうか、ふと、大樹が立ち上がる。


「よーし、こんなもんだろ。臭いが少し残っちまったが、そこはリセッシュでシュシュっとしといてくれ」


にひひと笑いながら大樹は言う。うーん…僕的には、リセッシュよりファブリーズなんだけどな……



***


あれからちゃんと、常備しているファブリーズで消臭をしてから下校し、今は、僕は玄関の前にいる。


『ガチャ…』


「ただいまー」


僕がその声を発した瞬間、てくてくと、居間から足音が聞こえ、少女が飛び出してきた。


「おかえり、お兄ちゃん」

ぽふっ…と彼女は僕の胸に飛び込む。嬉しそうに目を細めている姿がなんともかわいらしい。


「いきなり飛び込んできたら危ないよ、美奈」


僕は飛び込んできた彼女に優しく言う。そう、彼女の名は相澤美奈あいざわみな、僕の妹だ。そして、


「だって、お兄ちゃんと一緒にいたいから……」


ブラコンなんだよね。まあ、かくいう僕も人のこと言えた義理じゃあないけど……だって、かわいいんだもん……



僕たちはしばらくそのままでいた。すると、


「お兄ちゃん、何これ…?」


美奈がいつものかわいらしい声でなく、低く抑揚のない声で聞いてくる。急にどうしたんだろう…


「ん?どうかしたか?美奈」


「なんでお兄ちゃんの服に他の女の髪の毛がついてるの?」


つーっと髪の毛を弄りながら、これまた抑揚のない声で言う。妬いているのか…可愛い奴め。


「そういえば、今日女子とぶつかったから、その時付いたのかもしれないな」


僕はそれがあたかも本当のことのように答える。そりゃあ、妹は僕が趣味で人を殺してるなんて知らないからね。



「……嘘つき」


このときの僕には彼女の言葉は届かなかった……


「あ、それよりお兄ちゃん。さっき、アイツから電話が来てたよ」


「美奈、沙織のことをあいつとか呼ぶんじゃない」


こつんと僕は美奈に優しくげんこつをする。美奈は

「だって…」などと言いながら頬を膨らます。ホント、かわいらしいなあ……


それより、用件はなんなんだろう?


気になった僕は、部屋に戻り、沙織に電話をする。


『プルル もしもし、沙織です』




***


「ふう……今日も優はかっこよかったな」


お風呂に入りながら、私は優の姿を思い出す。私の中は、優でいっぱいだな…」



お風呂から上がって、部屋に入ると、タイミングよく携帯が鳴りはじめる。優だ!

私はワンコールで通話ボタンを押した。


「もしもし、沙織です」


『あ、沙織? 僕、優だけど、今日はどういう用事で?』


電話越しだけど、いつも通りの優しい声。私の、私だけの為に発せられた声が、私の耳に・肌に・心に染み渡る。



「うん、そうそう聞いてー、………」



今日の愚痴やら何まで、私は優に伝えた。優は、しっかりと私の言葉を聞いてくれる。それだけでも、私は幸せだ……



『もうこんな時間だ。今日はここらへんにしようか』


どきっ……私を幸せから突き放す言葉。本当はもっと話していたい…でも、気持ちとは裏腹に口は動く。


「うん、そうだね。じゃあ、また明日ね! おやすみなさい」


『おやすみ…ガチャ…プープープー……』



――さみしい――

電話を切った瞬間、どうしようもないくらいの寂しさに駆られる。


私は、机の中にある、ヤスリを取り出した。


淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい……


この気持ちと共に、何度も何度も手首にヤスリをかける。手首から血が滲み出るのが、何故だか落ち着く。真っ赤な液体が、私を癒す。


この時ふと思う。優の血は、どれだけ私を癒してくれるのだろうと……


よだれが垂れてきそうになるのを堪えながら、私はヤスリをかけ続ける。






気がつけば、夜は深くなり時計の針は12時を指していた。


もう、寝ようかな。ヤスリで皮がべろべろに剥けた手首を見ながら思う。うん、もう寝よう、明日も優を迎えに行かなきゃ…


私は優の笑顔を心に焼き付けながら、目を閉じた。

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