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八章 独りと孤独

 

 (セント)ルルノは父から連絡を受け、姉ララナの身分証明者として広域警察本部署を訪れた。姉ララナといえば一人でなんでもできてしまう優れたひとであったが、杓子定規な警察組織に関わると一人でできることに限りがあるということであった。それも留置場を破って逃亡した竹神音とその手助けをした──ということになっている──堤端総の逃亡先に居合わせたとあってそれなりに疑われもしたのである。

 ルルノを呼び出したことをララナは申し訳なさそうにしていた。八年前の責めを課してしまっているララナに、ルルノとしては命を救われた恩返しをいつかしたかった──。

 竹神音と堤端総を広域警察本部署に引き渡して、ルルノはララナの家にやってきた。ララナをここにいざなった立場としては竹神音との進展や依頼について話すのが適当だったのだが、このタイミングだ。テーブルについて開口一番に挙げたのは、戦時のことである。

「わたしも、みんなも、お姉様に責めを感じてほしいだなんて思っていません。暴走はお姉様の責任ではなく、みんなの甘さだったんですから」

「瑠琉乃ちゃんも皆さんも優しいですね。私が悪神総裁の実力を見誤っていたからこその甘さであったことはいうまでもないとは当時も述べました。結論が出ている話はお終い(しま  )です」

 ララナは、当時もそのように自分の責任だと抱え込み、事実としてそんな側面もあったからみんなが何も言えず、ルルノも上手なフォロを入れられなかった。

 それでは責任を背負ったララナが苦しんで終りだ、と、八年経った今、ルルノはひしひしと感ずるのである。

 ララナはいつも苦しそうにしなかった。容姿も頭脳も優れたララナはまこと可愛いお人形のように微笑んでいて、手脚をねじ曲げられても苦しんでいることを他者に感ぜさせなかった。背負い込んだ責任も経験としてうまく積み上げていることだろう、と、周囲の人間に思い込ませた。実態はそうではない。ララナは八年前のことを独りで抱えて苦しみ続けている。だからルルノの世話になろうとしなかった。人員配置にも都度自腹を切っている。刑事に素性を尋ねられても社長令嬢を名乗らなかった。聖産業の名をちらつかせれば国の後ろ盾で身分を疑われることなどなかったというのに。

 迷惑を掛けたくない。

 八年前のことでララナが遠慮したことは明白だった。経験を積み上げられていなかった証拠としてこれほど確かなものはない。

「お姉様。今日こそははっきりとさせます」

「何をですか」

「戦時の死については、お姉様の責任は確かにあります」

 と、ルルノははっきりと前提を述べた上で、責任の追及を続けた。「前に出すぎた彼にも責任がありましたし、それを止めなかったメイさんの責任もあります。吹き飛ばされた彼を守れなかった私意馬(しいば)さんの責任もあれば即座に回復できなかったわたしの責任もあります。そこからガタガタと総崩れしたのは後衛陣の気構えが足りなかった。そこに付け込まれるのを防げなかったのは機動力に優れるフルーテ君の油断でした──、挙げたら切りがないんです。責任はあの場の一三人、みんなにありました」

「それは詭弁です」

「その作戦を立てたお姉様に全責任があると」

「特訓も致しましたね」

「お姉様は指導も策も完璧でした。欠如していたのはわたし達の鍛錬。わたし達には、お姉様の作戦を活かすポテンシャルがあったんです」

 事実、ララナの蘇生魔法によって蘇ったルルノ達は作戦通り立ち回って悪神総裁ジーンを退けた。ララナの蘇生魔法の追加効果となっていた圧倒的な強化効果分の鍛錬が、ルルノ達には足りていなかったということである。

 当時ルルノは、自身の努力は完璧だと慢心していた。不足ない、これで大丈夫、全力を尽くせば必ずなんとかなる、そう思っていた。だが、悪神総裁ジーンの実力はルルノの想像を遥かに超えていた。メンバの長である一長命の想像も超えていた。

「私は瑠琉乃ちゃん達が敵わないことを想定しておりました」

 と、ララナが言った。「ゆえに、強化効果を仕込んだ蘇生魔法を事前に準備しました」

「(実力を見誤っていたとの説明が矛盾する。そんなことにわたしは八年も……。)それでお姉様までお命を削っ──」

「お静かに」

 と、ララナが笑顔で言葉を遮った。「ここでは大きな声は厳禁です。壁が薄いので上にも横にも筒抜けなのです」

 気勢を挫かれたルルノは、

「申し訳ございません、お姉様……」

 謝るほかなかった。

 沈黙したルルノに、立ち上がったララナがお茶を淹れ、レモンチーズケーキを出した。

「迷惑を掛けたお詫びに用意していたのではございませんが、召し上がってください」

「オトさんに作ったんですか」

「判りましたか」

「男性の心を摑むにはまず胃袋から、などと、彼がいっていました」

 先程からちょくちょく口に出している「彼」とはルルノの夫。彼のことを知っているララナが納得した。

「賞味期限が切れてしまいますので、今回は私達でいただきます」

「頂戴します。ダゼダダのフードロスは年間一〇〇万トン以上とのデータもありますからね」

 フォークで食べるそれは、真夏のようなダゼダダの土地ではオアシスに思えるみずみずしさと爽やかさを湛えた(たた    )幸福の結晶である。なのに、なぜか胸に渇きが渦巻く。

「おいしい……。弛み(たゆ  )ないお手前です」

「ありがとうございます。無理して笑わなくてもよいのですよ」

 ……っ!

「気を張らないで、肩の力を抜いてくださいね」

 ……──。

 妹である自分に姉が向ける笑顔はなんの偽りもなく優しく温かい。それを感じたルルノの総身は恥じ入るように縮こまった。責任感の強いララナが他者の命を救えなかった。あまつさえ奪ってきた。その責めを課して姉が生きていることをルルノはもう追及できない。

 ……わたしが笑顔になれないのは、お姉様のせいじゃない。

 ルルノ達の甘さが招いたララナの自責の念を否定しきることのできない不甲斐なさゆえに、笑えないのである。

 ……無垢だった頃は、お姉様のお菓子を食べて素直に笑えていたというのに。

 戦争。ルルノ達はその渦中にいた。それぞれが非日常の中で命の奪い合いをし、命の危機に瀕し、血を見、血を流し、罪を背負った。互いの関係に負の面が生じないことなどあり得なかった。

 ……お姉様はきまじめだ。

 一度こうだと決めたら、間違いだと自ら考え直さない限り意見を曲げない。ルルノはそんなララナを、八年も変えられずにいる。

 ララナの先の言葉で、ルルノは悟ってしまった。

 ……わたしでは、きっと、変えられない。

 ケーキを食べ終えたルルノは、「仕事があるので、そろそろレフュラルに戻りますね」と、言ってララナと別れた。出立を見送る笑顔は、幼い頃と同じよう。

 子の頃からララナは大人だった。全ての行動に責任を持ち、誰をも安心させる笑顔を絶やさなかった。今も、同じだ。隙のない笑顔は、緩みのない意識の積み重ねだ──。

 ……お姉様が心から笑ってくれるようにする。そのためにわたしにできることは。

 一つ、ある。鍵は、竹神音だ。

 ルルノは、夕暮れの広域警察本部署を訪れた。

 言葉真本家当主言葉真国夫とダゼダダ警備国家警備大臣此方充との癒着の捜査に当たっている世界魔術師団による竹神音の取調べが予定では終わっている頃だったが、脱走事件の取調べも重なっており、ルルノが竹神音と面会できたのは本来面会時間外、夜二一時のことだった。

 魔導手錠を掛けられた竹神音が面会時間外に一会議室へ連れてこられたのは誤認逮捕された身ゆえの特例。誤認逮捕と判明した時点で解放されることもあり得たが、そうされないほどの疑惑が付き纏っている。それが〈竹神音〉という人間である。

「初めまして、聖瑠琉乃です。姉がお世話になっています」

「そんな硬くならんでもいいよ。気楽にして」

 ルルノは席を立って挨拶したが、竹神音はというと左手で口を押さえて欠伸をしている。

 竹神音は飾らないひと。そんな観察を伝えたのはララナにほかならない。観察情報は姉の好意的なもので実際とは異なるのではないかと思い緊張していたルルノだが、気が和らいだ。

「お疲れのところ申し訳ございません。どうしても話したいことがあってお訪ねしました」

「お前さんの姉のことか」

「はい。お願いしたいことがあるんです」

「その話、請けるよ」

「内容を話していないんですが」

 当惑したルルノに、頰杖をついて口に手を当てながら眠そうな竹神音が言う。

「世界魔術師団のほうから広域警察に話が行ったみたいでね。どうやら脱走の件を不問にして俺を解放する運びになったみたいなんよ。いくら大物政治家の不祥事を暴いたからって警備府所管の広域警察がそんな話を簡単に吞むはずがない。タイミングからいってレフュラル表大国がバックについとるお前さんの口利きがあったと観ていい。既成事実もできてまっとるし、こういう取引に応ぜんのは社会的にはあかんのやろ」

 状況把握した上で、ルルノのお願いがなんなのか竹神音は察している。ルルノはそれを感じ取った。ただ、竹神音の状況把握にはやや歪んだ感性が窺えた。

「取引ということはありません。わたしは、あなたの告発がこの国をいいほうに向かわせると期待しているんです。そして、それをしたあなたなら相応しいと感じています」

「いいほうとは飽くまでお前さんの価値観だ。ダゼダダ育ちでもないお前さんの価値観がダゼダダ民の価値観と一致すると考えとるような傲慢を感ずるんやけど」

 竹神音の舌鋒は鋭い。「まあ、それはいい。さっきの国云云には噓があるな」

「……ごめんください、ありますね、嘘」

 ルルノは白状する。「国のことは別にして、わたしは個人的な感情で、あなたにお姉様をお願いしたいと思っているんです」

 竹神音が瞼を閉じて机に突っ伏す。

「一度言ったが、請けるよ」

「何をお願いするか、肝心なことをお話していません」

 再び当惑のルルノ。

 竹神音が言うのは、

「お前さんの姉を捕まえて悪いんやけど、あの子、頭いい癖にアホやからな。どうしようもない過ちをぐじぐじ考えとるんやろう。それでいて未来のことも考えとるから、いっぱいいっぱいなとこがある。つまりお前さんのお願いは、そのどうしようもないことについて、あの子の心を変えてくれってことやないの」

「……はい」

 竹神音は、ララナから聞いていた通りの人物であった。少ない情報から限りなく本当に近い状況を推測してしまう。ルルノのお願いについては寸分違わず言い当てた恰好だ。ルルノはそんな竹神音の隣席に寄って耳打ち、改めてお願いの内容と動機を伝える。

「お姉様は八年前、仲間達を一度死なせています。そのことをずっと気に病んでいるんです。お姉様だけの責任ではないのに……。そのことを納得させて、お姉様が心から笑えるようにしてほしいんです」

「解った」

 安請合い(やすうけあ  )のような即答であった。ルルノは耳打ちをやめて尋ねた。

「本当に、いいんですか」

 失礼ながら脅しも入れる。「もしお姉様が作り笑いもしなくなったらわたしはあなたを怨みます」

「怨まれ慣れとるから構わんが、そうはならんよ」

「自信がおありなんですね」

「いや、眠いから話を早く終わらせたい」

 ……本当に、このひとで大丈夫なのか。

 あまりの飾らなさを前に自分の判断を一瞬疑ったルルノだが、竹神音が次に発した言葉に絆された(ほだ     )

「家族なのに過去のようには笑い合えん。やから、個人的な感情だ」

 竹神音は、ルルノがいだいている蟠りを完全に見抜いていた。

 ルルノは、竹神音の問に小さくうなづいた。

「お願いできますか」

「一つ断っとく」

「なんでしょう」

「芽生えた罪の意識は根が残る」

「……消せない、と、いうことですか」

「おまけにミントみたいに繁殖力が強い。適度に残せるなら人生の差色(さしいろ)になるが溢れ返ったり時が経ったりすると台無しになる」

「今のお姉様を、わたしは台無し寸前だと思っています……」

 そんな姉を変えられない。支えることすらできるかどうか。

「人心掌握・操作に長けるあなたでも罪の意識はどうにもならないんですね」

「噂の竹神音なら精神魔法で記憶を弄る犯罪行為も躊躇なくできると期待したん」

「そうとまでは……」

「冗談だ」

 わざわざ顔を上げて真顔で言う冗談か。

 三度(みたび)当惑したルルノに、

罪過(ざいか)は死んでも消えんよ」

「…………」

 竹神音の言葉が、重く、重く、伸しかかった。

「ひと一人の力では、罪になんて抗えん。踏み越えてはならん一線を踏み越えた先で根づく種こそが罪なんやから、当然だ」

「わたしは……もう、何もできません」

「安心しろ」

 竹神音が両腕に顔をうづめた。「俺もあの子のお菓子を気に入っとるからな。浮かん顔で作られたらまずくなって俺に取っても不利益やから、適度に芽を間引く(まび )わ」

「よろしくお願い致します」

「俺は俺の勝手でしか動かんから、そういう堅苦しいのは要らんよ。明日にも解放されるって話やし、それまでゆっくり寝させて」

「はい……。では、わたしはこれで失礼します」

 竹神音が本当に寝息を立ててしまったので、ルルノは部屋の隅にいた看守に面会の終了を告げて広域警察本部署をあとにした。

 ひとに任せきりにすることが不安でないわけは当然ない。が、姉が好いた竹神音をルルノは信ずることにした。

 ……それに、どこか、安心している。

 悟りきった物言いをする竹神音が、どこかララナに似ていた気がしたからだろうか。そんな竹神音ならばララナの心を変えてくれるかも知れない、と、ルルノは思えたのである。

「さて、わたしはわたしの仕事に戻らないと」

 姉のよい変化を祈りつつ、ルルノは帰途についた。

 

 

 田創町立魔法学園高等部は地元ではそれなりに名のある学園で、その学園首席〈首席生(しゅせきせい)〉ともなれば未来を嘱望される存在。そんな総が逮捕されたとあって、翌日朝には報道番組に総の行動が取り上げられていた。未成年ということもあって名前こそ伏せられていたが、〔名門高等魔法学園首席の少年〕と、いう文言で固有名詞に想像がつきそうなものであった。だが、それが総の選んだ道。茨の道ではあるが、己の罪に向き合うことはとても大事だ。

 ……私も、向き合わなくてはなりません。

 ララナの罪は、八年間、忘れたことのないものである。瑠琉乃がまたその話に触れるとは考えていなかったが、それもあって改めて考える必要性を感じた。

 ……どうしたものでしょうか。

 瑠琉乃が言うことを理屈では解っていたが、ララナは納得できていない。それはあの戦場にあって無感情だったはずのララナが唯一揺さぶられた「罪悪感」という感情だからだろうか。それかやはり──。

 もやもやと考えながらもララナの手はお菓子を作り、足は買物へと歩み出していた。

 それから、食べ合せ( た   あわ   )がよいかはさておき蕎麦と蜜柑、再び作ったレモンチーズケーキを確認して、ララナは広域警察本部署にやってきた。じりじりと照りつける太陽光も気にせず正面玄関脇で正午まで待った。

「ほんまストーカやな」

 オトが言葉とともに前を通りすぎていく。勝手に待っていた身なので彼のそっけない態度を咎めずララナは斜め後ろを歩いた。

「お疲れさまです。お菓子はご入用ですか」

 透明のクッキングパックに入ったクッキを掲げているララナを、オトがちらっと。

「硬いの、柔らかいの」

「柔らかいものです。巷では『しっとり』などを冠して売られております」

「それは商品か」

「差入れです。留置場で食事をお召しとは存じますがお菓子は少ないでしょう」

「ああ。商品じゃないならもらうとしよう」

 只より恐いものはないと言っていたオトがララナの腹蔵ない差入れは受け取った。袋に指先を入れてクッキを一つ抓んだオトに、ララナは尋ねる。

「ハードクッキはお口に合いませんか」

「もともと嫌いで今は喉が渇いとるからな」

「ではお飲物(のみもの)を」

 ララナはペットボトルの水出し緑茶を隣空間から取り出した。

「準備がいいが、冷えとるのは苦手やな」

「常温まで温めます」

 広域警察本部署に行くまでに買った飲物なので、魔法で加熱してからオトに手渡した。

「ふむ、昨日のストーキングで解ってはいたが、魔法の腕もなかなかやな」

「妹達にはよく冷やしてあげたものです」

「身分証明者として来とった妹以外にも妹がおるんやな」

「はい。私を含めれば三姉妹です」

「血縁がないことを気にしとるん」

「今はさほど気にしておりません。妹達は私をよく理解しております。私も妹達を大切に思います。家族は家族ですし、妹は妹です。ただし、元来の形を忘れないことも必要だと私は考えております」

 緑茶荘の帰途を辿る中、陽炎を追うように歩くララナとオトは、こうして文字通りの雑談に興じていたのだが、

「ところで」

 と、オトが話の質を変えた。「お前さん、お菓子作り失敗したことある」

「はい、ございます。それがいかがされましたか」

「失敗作は棄てるん」

「私が食べきりますので棄てません」

「例えば炭化しとっても」

「はい」

 と、ララナは返事をして、(今の回答は駄目でしょう)と、思った。一般的には健康被害を考えて炭化物を棄てる。それを食べるなどと言っては失敗作を食べきるという発言自体が嘘だと言っているようなもの。せめて肥料にするなど別の回答をすべきだった。

 けれどもオトはそこに興味がなかったか、貧しい暮しを覗かせる。

「失敗作なら遠慮なくもらえると思ったんやけど残念だ。今までの商品にしてもこの差入れにしても高品質やからな、失敗作を期待してはなかったが、そうか、食ってまうのか」

「……オト様、ひょっとすると私のお菓子をご所望ですか」

「無職で無財産の俺が渡せる代金は情報か時間やけど、自分のことにしても癒着の件にしても渡すべきもんは残っとらんからな。棄てるもんをあわよくば只で引き取ろうかと思ったんよ」

 そういうことだったのか。廃棄のものに限っているとは言え自分の作るお菓子を求めてもらえていることにララナは顔が火照るようだった。

 だから当然のように申し出た。

「ご迷惑でなければ、お菓子をお届け致します。勿論お代はいただきません」

 ──何はともあれ、自然に話すことができるようになって、オトとの付合いもそれなりに深まってきたはずであった。恋愛的に、積極的になってもよい頃ではないか。恋愛というものを経験したことがないララナは、できる限り素直に、正直に、オトにアタックすることにしたのだった。

 が、

「要らん」

 と、オトの答はいつぞやと変りなかった。「お前さんが未来改変を目指して俺に取り入ろうとしとることは変らんわけやからな。俺はお前さんの行為を無警戒に受け取れる()()とは思わんよ」

「……。そうですよね」

 腹蔵ない差入れは「差し入れる」という行為でしかない。だからオトは受け取った。

 ララナの積極性は、差入れを含めて行動に限られている。言葉ではっきりと好意を伝えたわけではなく、オトの警戒心は依然として保たれている。それに、ララナのいだく好意と未来改変とが全く紐づいていないわけがないことはララナ自身も解っている。現在のオトの信頼を勝ち取り、オトが過去における未来改変を成し遂げると確約しなかった場合、十中八九オトは過去に行かない。すると、歴史や記憶のいわゆる()()が発生する。ララナは過去にオトと逢わなかったという歴史が積み重なり、記憶からオトが消滅する。ララナがオトを捜し始めたのは過去に逢っていたから。それがなければ瑠琉乃がオトのことを知ることもララナを派遣する展開もあり得なかった。

 オトと再会することができない。

 そんな現在を危惧していない、と、ララナは言えない。

 ……これほどに、感情が不安定になっているのです。

 不安定というのは一概に悪いことではない。特にララナは、心を揺さぶられるようなことがめったになかった。それなのに、オトとのこの一週間、ララナは戦時より懸命になってどきどきしたり悲しんだりショックを受けたり嬉しかったりした。

 ……オト様は、私の人生になくてはならない方なのです。

 退屈とまでは言わないが、障壁に守られた体は、心を動かすこともやめてしまった。そんな体に触れ、心を揺さぶるオトの存在が唯一、見えざる障壁の中に閉じ込められた身を「独り」から解放してくれる。

 馬車や魔導車が行き交う通りから並木道に差しかかるまで、沈黙が続いた。

 先に口を開いたのはオトである。

「お前さん、これからどうするん」

「昼食ですか」

「いや、ざっくりといえば未来のことだ。俺が知る限り、言葉真本家当主言葉真国夫と警備大臣此方充の癒着がこの町の貧民の原因ないし遠因になっとる。各人が逮捕されたことで少なくとも就職しとる貧民にはまともな給料が行き渡ることになるやろうから、身代金要求を始めとする阿呆な動きが少し減るやろ。この町は住みよくなる──。お前さんが引っ越してきたことで一〇三号室の事故物件扱いが正式に消える。俺もいずれは緑茶荘を出るから、一〇三号室の借手問題は完全に解決できる。俺が訊いとるのは、そのあとのことやよ」

「なるほど。仰るように事が運んだ場合、私の仕事は完了ということになりますので、以前のように復興ボランティアに従事するでしょう」

「先の戦争のやな。主な活動地は」

「北レフュラル大陸でした。此度を機にダゼダダ大陸の状況を観て回り、必要なところへ参ろうかと」

「警備国家やぞ。被害はどの国より少なかったし、ハード面の建て直しは済んどるよ」

「ソフト面を当たりましょう」

「余談だが、魔物襲撃被害が他国の半分以下しかないほどの防衛力なんよ」

「データ上では存じておりましたが、実際もそうなのですね」

「先の戦争の情報には秘匿・対内・対外さまざまあるから仕方ないとは思うがレフュラル国外には目が行き届いてなかったみたいやな。それはそうとボランティア。それって愉しいの」

 オトが興味を持っているのだとしたら水を注すようだが、ララナは正直に応える。

「愉しくはございません」

 ララナは自己満足の償いの旅をしていたのである。傷ついた人人を目にするたびもっと手を尽くせたのではないかと後悔するばかりであった。

「オト様はいかがなさりますか」

「俺か。親不孝で家出することになるからな、いっそ神界にでも居を構えようかと思うよ。希望としては非一般性が問われんようなところを探す」

「素的な計画ですね」

「いや、いや、親を見捨てる時点で卑しい腹積り(はらづも  )だ」

「神界とはいえ居を構えると仰るからには費用の当てがおありということですよね。無職でも魔法がお得意のオト様がただちにお金を得る手段はレアメタル発掘や魔物討伐です。どちらもお母様にお金を残していくことができます」

「なんや、お前さんも読心を使うん」

「戦時でもないので使いません。推測だったのですが、当たりましたか」

「まあね」

 と、オトが溜息をつくように。「貧乏なりに懸命に働いてくれとるお母さんやからね。お金で全て解決するみたいで後味が悪いが、一貧民の最たる悩み、金銭問題だけでも解決して去るのがいいとは思うんよ」

「お母様を一週間お見かけしておりませんが、出稼ぎに出られているのでしたね」

「ああ。レフュラルにな」

「ご帰宅は不定期ですか」

「帰宅は週末、多くて月に四回、少なくて一回やな」

「オト様が緑茶荘を出られる前に、お会いにならないのですか」

「感謝はしとるけど話すことがないし黙って出てくよ。そのほうが向こうは気が楽やろ」

 オトがそう言うのは、罪を犯して母親に迷惑を掛けている自覚があるからだろう。母親から迷惑だと言われたことがあるか、そんな気配を感じたことがあるか。

 でも、仮にも母親だ。子であるオトがなんの連絡もなく家を出ていって気が楽になることなどあるのだろうか。問題を抱えたオトと面して怒りや迷惑を感ずることはあっても、姿が見えなくなったら心配するのではないか。それが母親なのでは、と、ララナは理想を当て嵌めそうになっていた。

「まあ、あとでいろいろとメンドーなことがあるといかんから、書置き(かきお  )くらいはしてくよ」

「──左様になさるのがよろしいですね」

 折を観てオトの家族に会いに行こうと考えていたが、ララナはまだオトの母親を知らない。長年一緒に暮らしていたオトが書置きで充分と言うのなら、それはララナの理想混り(まじ  )の推測より正しいだろう。

 農道に差しかかり、水田を左手に歩く。

「お前さんにもらったおはぎを除けば、最近米を食べとらんな」

「そうなのですか」

「お前さんが来る前は三袋一〇〇ラルの焼きそばを、一日一袋だけ開けて具なしで食べとったから。ほら、それやと一箇月の食費が一〇〇〇ラルやから、米を買うより安いんよ」

「お顔の色が優れなかったわけです……」

 月に一〇キロの米を食べるとしたらブレンドでも三〇〇〇ラル前後の出費だ。

「なぜ左様なお食事ばかりを」

「無職の脛齧りが屋根風呂つき宿に住むことを許され一食三三ラル以上と調理代金諸諸を恵んでもらえるなんて贅沢な話やろ。家がなくお湯も食も満足にいただけん(もん)が無数におる。時代の犠牲者、戦災者や難民がそれだ」

「世界に視野を広げた相対的立場を考えることは非常に大切なことと存じます。ですがそれとこれとは別問題です」

 貧民ゆえ。あえて言えば、オトの考え方が災いしてお金を稼げないことが大きい。戦災者や難民は、働きたくても職がなく、稼ぎたくても稼げない。似ているようで状況が全く異なる。問題の掏り替えだ。

 オトの状況はこのままではよくならない。先日購入した乾麺の三割蕎麦ですら焼きそば麺に換算して約九日分となりオトに取っては贅沢品だったということだが、栄養バランスが悪い。また、麺類ばかりでは味気ないのではないか、とも。

 ……蕎麦を米にチェンジすることは可能です。

 考えたら行動に移る。「オト様。食事の約束を本日に移しましょう」

「そんな話もあったな」

「白米を炊きます。食事をお伴してもよろしいでしょうか」

「未来改変のための胃袋摑み作戦か」

 と、オトが笑って警戒を見せる。

 そう言われるとララナも強くは出られないところだった。けれども、どう転んでも未来改変に繋がる道しかララナにはない。臆していては時間の無駄だ。

「未来改変のため、是非お願い致します」

 と、ララナは開き直るようにしてオトの背中にお願いした。

 オトが稲穂を眺めて、

「背に腹は代えられんか。揺る(ゆ )(こうべ)や心に染みて(そ  )意を挫かん(くじ    )、と」

「……私、なぜだか悪いことをしているような心地です」

「安心しろ。お前さんが悪いわけやないよ。働きゃよかった話で、俺はそれを怠った」

「それは仕方がございません。オト様にはオト様に合った暮し方(くら  かた)がおありと存じます」

 それを押しても母親にお金を残して去ろうとしているオトは、親孝行したい気持がじつは強くあるのだろう。

 さておき、ララナはオトになんとしても白米を食べてもらわなければならない気がした。未来改変のためと言うよりは、オトの精神衛生上、好ましくないと感ずる。

「我慢も限度を超えると逆効果です。ここは未来改変のことをお忘れになって白米を召し上がってください」

「うまいこと乗せられた気がしてならんな」

「お乗りくださいませ。私、無理にでも白米をオト様のお口に運びます。必要とあらば空間転移で胃の中に放り込ませていただきますが」

「おまっ、なんちゅう恐ろしいことを考えとん。米じゃなかったら殺せる域やげ」

 と、オトが眉間に(しわ)を寄せた。「魔法をそんな阿呆なことに使うんやないわ」

「でしたら、オト様は箸を持ってお待ちください。茶碗に白米を盛って、おかずを載せたお皿とともにお届け致します」

「強引やな」

「ストーカですからね」

「ここでそれを認めるのか。いや、まあ、……はあ、もういいや」

 オトが溜息をついて、理屈っぽい許容。「この欲には敵わん。白米をくれ」

「──はい!」

 押しきった(!)と、ララナは内心悦んだ。

 右折で商店街を望む十字路。これを左手に進んで緑茶荘に到着。オトが自宅に入るのを見届けて、ララナも自宅に入った。五枚のレジ袋に米を一合ずつ入れて口を結ぶと、それを大きめの買物袋に詰め、ほかの食材も入れた。それらとレモンチーズケーキの載った皿を抱えて呼鈴を鳴らしたララナを、オトが出迎えた。

「なんか大袈裟な量やな」

「まずはケーキ皿をお受け取りください」

「食後のデザートか」

「はい。炭水化物が多くなりますので、こちらの野菜で栄養を補うことに致しましょう」

「ネギとハクサイとシイタケと──、鍋でもできそうやな」

「何を作るか決めずに全部持って参りましたので、鍋も可能ですよ」

「なるほど。じゃあ、お入り(はい  )

 オトがケーキ皿を受け取り、食材の入った袋をさりげなく指先に引っかけていった。

 先に奥へ行くオト。ララナも部屋の鍵を掛けてから彼に続いた。

 ……オト様の──。

 心に余裕があるためか、オトとの距離が近くなったからか。

 ……あるいは感覚が──。

 以前は感じなかった家の空気を強く感じた。相変らずカーテンは閉めきられて薄暗いが、どこか、ぬくもりが灯っている。

 ダイニングテーブルにケーキ皿と買物袋を置いたオトが、食材を一つ一つ取り出していく。

「オト様、ありがとうございます」

「危なっかしいから、幼子みたいに物を両手いっぱいに抱えてくんな」

「重心を考えて持っておりましたので落としません」

「一般論やよ。お前さん、体格は初等部児童とそう変わらんのやから、周りを冷や冷やさせるようなことをすんなってこと」

「申し訳ございません。どんなリクエストにも対応できるよう考えなしに食材を詰め込んだ感は否めません」

「あざとくないのは美点やな」

「なんのことですか」

「無意識か。逆にあざといな」

「……どういうことでしょう」

「判らんなら判らんでいい。それがお前さんのいいところだ」

 オトの言ったことの半分も理解できなかったララナだが、料理についての意見はできる。

「鍋を仕込むには肉類が足りませんか」

「みたいやね。お前さんは普段から肉食わへんの」

「はい。概ね野菜とお菓子で済ませております」

「俺と大差なく不健康やない」

「それはご自身の正当化です。焼きそば麺のみのほうが断然に不健康です」

 と、ララナは断言して、「あ」と、忘れ物を思い出した。

「いまさらなのですが、キッチンは女の戦場と申します。無断でお借りしては──」

「お母さんはこだわらんから構わん。手伝うことはあるか」

 ……オト様が。

「焼きそばしか焼けん癖にと思ったか。使った調理器具を洗うくらいならできるぞ」

「いいえ、左様なことは考えておりません。私が振る舞わせていただく予定でしたので、お力添えいただいてよいものかと思案しておりました」

「安心しろ。監視もかねとるから厚意じゃないぞ」

「監視ですか」

「ここぞとばかりに洗脳の類の魔法を仕込まれとったりしたら意図せず未来改変に荷担してまうかも知れんからな」

 失礼な口振りであるが、それゆえにララナは冗談と察した。

「オト様ならその手の魔法を見抜かれるでしょう。ご冗談はさておき、お力添えいただけるなら是非」

「冗談が通じるとは」

「驚かれましたか」

「ちょっと感心した。俺の冗談を真に受けんヤツはあんまおらへんからね」

 そりゃ無表情で癪に障るようなことを言われれば誰もが真に受けるだろう。

「オト様を解するため余念がないのですが、少しは察せられたのだと自信が湧きました」

「やや自惚れとるな。精進しろ」

 それもまた聞くひとが聞けばカチンと来るのだろうが、ララナはエールと解釈、

「精進致します」

 と、応えた。

 オトがやにわに、真顔で言い放つ。

「俺はヤキソバメンか」

「体を作った栄養の大部分、と、いうことでしょうか」

「流れがぶつ切りとはいえツッコミは期待薄か」

「つっこみとは、なんのことでしょう」

「なんでもない。精進しろ」

「はい」

 と、うなづくも、(なんだったのでしょう……)と、ララナは内心無理解であった。

 どこか疲れた表情のオトを眺めて、ララナは段取りを決める。

「分担ですが、包丁をお使いになりますか」

「焼きそば麺を焼くことしかできんわけじゃないって。何を切ればいい」

「野菜各種をお願い致します」

「了解」

 オトが野菜を片手にキッチンへ。使い古した木製の小さな俎板を取り出して、その上で野菜を手際よく切る。

「慣れていらっしゃる」

「いやだから焼きそ……まあいいや。このくらい普通やろ」

「そうですか。私が旅をした頃、仲間の男性陣は包丁にほぼ触れておりませんでした」

「できるけどやらんかったんやない」

「いいえ。何度か男性陣で行動した際に苦労した様子でしたので、不慣れであったことは間違いございません。男性は皆そうなのだと思っておりました」

「親や姉妹に恵まれて幼いときに自炊を怠ってきたんやろうな。男は家事を任せっきりにしてその労働の対価をケチるクズばっかやからな」

 いつも通りの無表情でオトが辛辣な物言い。昨日直接拒絶されたからだろうか、ララナは自身への拒絶よりもその言葉を刺刺しく感じた。

 ……借金のこともそうですが、お父様と確執がおありなのでしょう。

 日常的な愉しみの一つとして料理があるだろう。父親とのことも気になるが、今は負の感情を掘り下げるよりオトの愉しめそうな機会に目を向けて意識改善を働きかけたい。

 ……少し話を逸らします。

 キッチンや冷蔵庫を一通り観ていたララナは気づく。

「調味料がほとんどございませんね」

「余っとるのはよく買う醤油と塩やな」

「焼きそばの弊害ですね」

「語弊を生んだことを全ての焼きそば支持者に謝れ。俺自身の責任に反論の余地はないが」

 その通り。偏った食事が問題だ。

 ララナは空間転移魔法で自宅のキッチンから調味料を取り寄せ、土鍋をコンロに置いた。

「そのくらい歩いて取りに行け」

「あ、つい。癖です」

「直したほうがいいな」

 呆れたオトに、ララナは先程の話の続きをする。

「一概に申せませんが、仲間は確かに両親や姉妹に恵まれております。包丁慣れした子、フルーテ君というのですが、彼は得物が短剣だからだと思いました。ですが、なるほど、家庭環境は大いに関係があるでしょう」

「フルーテ」

 オトが手を休めず反応した。「一二英雄が一角、戦前は魔物の一種に分類されとった小鬼の少年やな」

「はい。フルーテ君は正当な扱いを受けない一族に生まれ、地位向上のために強くなることを目指しておりました」

「目的を達成したわけだ。悪神討伐戦争後、小鬼は魔物とは全く異なる種族やって世界での見解が是正されたからな」

「両親が早くに亡くなったという彼は努力家です。包丁の扱いも努力の一環です」

「魔物ではないとはいえ、小鬼が最初から人間の口に合う料理を作れたん」

「最初は不慣れでしたが、急速に上達してくれたので安心して任せられました」

「そうか」

 何気なく相槌を打ったオトが言う。「お前さんの仲間は一二英雄。戦時に磨いたストーキングもとい尾行技術も神界仕込みか」

「はい、左様にございます」

 オトに対しては隠すことでもないので、ララナは雑談もかねて昔話をする。

「私は当時、主に一人で行動しておりました。悪神軍ことキルアシオ軍の動向と私の仲間の動向を観察し、そのときのレベルに応じて最適な敵と遭遇するように仲間を仕向けることが目的でした」

「悪神総裁ジーン討伐における裏の立役者ってとこやな。やけど、今のお前さんからはちょっと想像がつかん役回りだ」

「そうですね。非力である演技をして仲間を欺き、彼らの成長を目指しておりました。正直に立ち回ったのは、じつを申しますとオト様に対してのみ、今回が初めてなのです」

「普通の男ならお前さんに気に入られとると嬉しがるところなんやろうけど、不思議に思えども感心はせんな」

 オトが野菜を笊に入れて軽く水洗いし、一部を灰汁抜きした。「他人を欺くほうか、俺に対するように馬鹿正直なほうか、どっちが本当のお前さんなん。どちらにせよ、偽りの自分を使って他者を騙しとった時点で感心できんが」

「痛いところを衝かれ(つ  )ました。私も、その点を評価することができません。誠心誠意向き合わずして信頼は築けません」

「自分を客観的に非難できるのは美点やな」

 オトが野菜を鍋に移したので、場所を入れ替わったララナは水と一部調味料とを合わせて入れ、火を点けた。

「あ、お米を炊きましょう」

「主食ができてないんじゃ話にならんもんね」

 オトに取ってはメインディッシュでもあろう。

 緑茶荘の全戸に浄水器が常設されているため感染症予防に用いる塩素や配管劣化などで生ずる水道水利用の諸問題はクリアされている。米研ぎや炊飯に使っても味・香りに支障がないことはおはぎでも証明済みだ。米に浸透しやすい軟水である点や一四から一六度の温度で安定している点もここの水道水は炊飯に適している。ここからは炊飯の技術になるが、精米技術の進歩が著しい昨今、米を研ぐ作業はほぼ不要である。釜に入れた生米(なまごめ)を一五度前後の綺麗な軟水でさっと濯いだあと浅い水に浸して大きく円を一〇回描くように研ぎ、たっぷりの水を注いで三度切って米研ぎを終え、炊飯器に釜をセット、定量の軟水を加えて炊飯ボタンを押せばあとは待つだけ。炊飯に使う水に炭酸水を用いると加熱効率が高まって炊き上がりの贅沢感が増すが──、今回はあえて水道水にした。

「温暖なダゼダダで冷たい水が得られるのは主食のためでしょうか」

「最近はレフュラルの流れでパン派も増えとるが、水温は地下一五メートル程度で冷やされとるからやと思うよ」

「なるほど、地下水道のお蔭でしたか」

 炊飯ボタンを押して鍋に掛ける火力を調整するララナに、オトが問う。

「過去の自分と今の自分、どちらがより自分らしいか、解っとらんってことはないやろうな」

「過去の私は偽物です。私の師匠に当たる女性、セラちゃんが、私のポーカーフェイスを活かして欺く側の役割を振ったに過ぎません」

「セラというと一二英雄のラセラユナか。テレビの演者がスポンサを始めとする関係者、方方に配慮したキャラを演じとることがある」

「唐突になんのお話でしょう」

「まあ聞け。仮に偽りのキャラでもそれが認められれば演者はオファを受ける。他者を愉しませる、自身が愉しむ、ほかにも名声や地位、さまざまな利益を得るという演者の目的に適っとるから、そのキャラを演じ続けてくわけだ。さて、そこで話を戻すが、お前さんはさっき役割を自分の目的といった。少なくともやり甲斐(  がい)や役回りの必要性を感じて立ち回っとったんやろ。そんな自分を偽物といいきるのもいかがなもんかね」

「そうですね……」

 利益があるから演ずる。演者とララナは同じだ。

「言葉を改めます。昔の私は努力して扮飾した自分でした」

「ん、納得しよう。で、お前さんはどちらがより自分らしいと感じとるん」

「今の私です」

「即答やな」

「以前の言動を記憶していないと偽りの自分を保てませんので、考えなしには手も口を動かせませんでした。それに引換え今は自由。昨日のように考えなしに発言してしまう過ちもございますが、間違いを間違いと正すことができるのは幸せなことだと存じます」

「ふうん、そんなもんなんや」

「ええ、そんなものです」

 鍋の中が温まり始めている。

「オト様はいかがでしょう。昔のご自分と今のご自分、どちらがよりご自分らしいですか」

「俺はどっちもらしくないな」

「……。それはどのような意味でしょうか」

「俺は未だ扮飾、いや、偽装しとるってことやよ。独りを選んではみたものの、こうやってお前さんと接しとるやろ。決断が矛盾しとるってことだ」

「それは──」

 よい変化なのではないだろうか。と、ララナは言おうとしたが、右手のオトの口が開いた。

「お前さんが俺に合わせてくれとるから楽なんかも」

 彼のその認識を、ララナは否定しておく。

「私は自分の思うままに動いております。私が無理をして合わせているように、オト様はお感じでしたか」

「そうはいわんけどね、俺から観たら結果的にそうなっとる」

 そんな見方ができないわけではないが──。消耗した魔導燈(まどうとう)に照らされた仄暗い横顔。えも言われぬ空虚(くうきょ)

「ま、俺がそうさせとるだけかも判らんが」

「それは──」

「ん、」

 と、応じたような小さなうなづきのあとオトが瞼を閉じて、わずか間を置いて、

 ……っ!

 突風のような魔力がララナに吹きつけて、消えた。

「今、なんか言ったか」

「え」

「ああ、なんも言ってないならいいんよ。寝不足でちょっと意識が飛んどったみたい」

 半眼で鍋を見るオトは、変わらぬ無表情である。

 が、先程オトが瞼を閉じていた一瞬間に、ララナは確かに感じた。今まで一度として感じなかったオトの個体魔力を。

 魔力を潜めるには極度の集中と警戒心、技術、それから生まれ持った才能が必要だ。空間転移などを使った際や眠っている夜間も魔力を潜めていたオトの才と技術を疑う余地はないので、集中や警戒心が意図せず解かれたということ。つまり、ララナが魔力を感じたことがオトの意識が飛んでいたことの証拠になるのだ。

 包丁を持って立っているときに意識が飛ぶというのは尋常ではないが、ララナは慌てずオトの様子を確認した。

「(以前ほど顔色が優れないということはござりませんね。)お体、大事ござりませんか」

「じろじろ見んな。大丈夫やよ」

「……本当に。どちらかに異常はござりませんか」

「ああ。お前さんがいうこともあながち間違っとらん。不健康な偏食やったからな」

 と、わずかながら反省を見せたオトに、ララナは微笑みかける。

「でしたら食生活を改善です。私が栄養のあるものをお届け致します。オト様に焼きそばばかりを調理させは致しません」

「いや、だから、焼きそばしか焼けんわけじゃ。何度目なん、このツッコミ」

 と、オトが溜息をついて、「まあ、ありがたいことこの上ない申し出やけど、そこまでしてもらう義理もないし、要らんよ」

「おや、義理はございます」

「ん、なんかあるっけ」

「私達、お隣さんではございませんか」

「……──」

 眉を軽く持ち上げたオトがララナを見つめている。まじまじと視られて、ララナはどきどきしてしまった。

「いかがされましたか、オト様」

「あいや、記憶の連結というか付合(ふごう)というか」

 ララナは両手を合わせて笑顔で仕掛ける。

「なるほど、思い出し笑いですか」

「笑ってないが」

「ばれましたね」

「鎌の荒さ……」

「ともかくです」

 オトの眼に疲労を感ずる。「食生活に加えて先達ての留置ですから、お疲れなのではござりませんか」

「阿呆なやり取りのせいやったり」

「メンドーでしたか」

「そうとまでは。まあ、ちょっと疲れてはおるかもな。普段運動してないせいも多分に影響があるやろうけど」

 包丁を置いたオトが、先程のララナの言葉に応ずる。「忘れかけとったが、お前さん、隣人やったな」

 それを忘れるほどに、眼中になかったということか。

 ララナは、正直に尋ねることにした。

「私の存在は、オト様のお心に留まりませんでしたか」

「さっき留まったよ」

「──」

 擦り抜けざまにララナの肩を軽く叩いて、オトがダイニング(より)の壁に凭れ(もた  )かかった。

「お前さん、さっき『お隣さん』っていったやろ。なんか、急に鈴音を思い出したわ」

「鈴音さんを──」

 父親とは別に負の感情を掘り起こしかねない話題だろうが、穿鑿(せんさく)を避けたいなら彼は直接的なことを口にしなかっただろう。

「お話、伺ってもよろしいですか」

「昼食の支払いもあるし、過日の付けもある。話そう」

 とことんまでにララナに借りを作らない寸法だが、オトの話をララナは聞きたかった。

「ここからは私が作らせていただきますね」

「ああ、よろしく。じゃ、いささかつまらん話だがBGMのように聞き流しておくれよ」

 普通なら語らないこと、と、オトが言っているように聞こえたララナである。うなづきこそしても「はい」とは言わず、耳を欹てて(そばだ     )調理する。

「前に軽く話したが、鈴音と再会したこの緑茶荘で、俺はお母さんの離婚後ということもあってつまらん気分でおった。と、いうのも、言葉真本家当主と警備大臣の癒着に関連して、当の本家当主言葉真国夫に新家(あらや)の俺が意見したことが離婚原因の一つとなった可能性が高かった」

 言葉真国夫と此方充の癒着を知っていたのは、また、癒着の証拠となる書類の在り処(あ か)を知っていたのは、オトが一四歳にしてその不正を知っていたからだったのだ。

「そんなこんなでつまらん思いをしとった俺に気づいて接触してきたのが鈴音ね。あの子は変人でね、俺みたいな犯罪者に怖気づくこともなく世話を焼こうとした。で、有難迷惑(ありがためいわく)やったから俺はいつかいったんよ、鬱陶しいから来んなって。やけど聞きゃしない。ある意味、お前さんにそっくりだわ。そんな鈴音がある日、残り物と称して煮物を差し入れた。俺は要らんといった。もらう義理がないともね。やけど鈴音はいうわけだ、お隣さんですから義理はあるでしょう、って」

 当時の鈴音の言葉とララナの言葉がオトの中でダブっていた。

「いや、はっきりいってあれは噓やろうとすぐに解った。あの子は以前から明らかに俺を気にしとった。そのときはまだ理由は定かじゃなかったけどね、あとになって聞いたのは迷子の鈴音を案内してやったんだそうだ。初等部に進学して間もない頃、学園でのことで俺は憶えてなかったけど、あの子に取っては恩人になっとった。体が弱いから、迷子になっても彷徨うような体力はなかったし、声を張り上げる体力もなかった。大勢の中に突然放り込まれたような心境と人見知りが災いして他人に助けを求める勇気も出んかった。そんなときに俺があの子の手を黙って引いたらしい。俺は当時、似たようなことを誰に対してもやっとったから鈴音とのことは記憶にないが、心の声でSOSと行きたい場所を知ったんやろう」

 煮立つ鍋の様子を観て火加減を調整したララナは、使い終えた調理器具を洗っていく。

「正確にいえば、そのあとも何度か俺達は()っとった。鈴音の口から聞いたのは、野良犬から助けたときの話だが、俺はそれも憶えとらん。察しがつくやろうけど、それが事件を起こす以前の話だからだ。俺は今以上にテキトーやったから、とにかく周囲に合わせるだけ合わせて、いちいち記憶することはなかった。記憶しとるのは、主に長い付合いのあった総達とのことくらいだ。お前さんの言葉を借りれば、扮飾した自分を保つために偽りの言動を記憶する必要があった。鈴音のことで憶えとるのは、お前さんが突き止めたアスレチックでの出逢い、正確にはそれも再会やけど、俺の認識では初顔合せやから出逢いとしておく。それから、緑茶荘での再会以来のことを記憶しとる。緑茶荘で再会してからは、鈴音からの接触が多くて鬱陶しかったくらいで、結果的に記憶せざるを得んかったのかも知れんが、まんまと鈴音に乗せられてまった。鈴音の家を訪ねるまでになって、いつの間にかあの子と話すのが日課みたいになっとった。鈴音は笑っとったし、俺もそこそこ愉しかった。鈴音のいう()()()()()()()は、たぶん、口実に過ぎんかった」

 わずか間を置いてオトが纏める。

「現実は今に辿りついた。俺は鈴音を殺してこうしとる。鈴音を、中途半端な義理関係のままであの世に送ってまった。終わったことやからどうにもならんが、『偽る』というのが罪深い行為である理由はそこにあるのかも知れんな」

 すっかり野菜に火が通り、ララナはコンロの火を切った。

 話の終りを感じて、ララナは口を開いた。

「オト様は、今のご自分も自分らしくないと仰りました。拝察致しますところ、鈴音さんとお会いになっていた頃が最もオト様らしかったのではないでしょうか」

「と、いうと」

「オト様はお独りでいることを選ばれました。しかしながら孤独を選択した、と、いうことではなかったのでしょう。合わせる必要のない鈴音さんと無理のない距離を保った関係でいることが心地よかったのです。オト様は最後あえて濁されたようですが、私は確と存じます。鈴音さんは『オト様を愛していた』と」

「根拠は」

「鈴音さんのことを多分に憶えていらっしゃります」

 悲しいかな、ララナはオトの記憶にそこまで残れているか判らないのである。オトにいだかれてしまっている警戒心が大きな影を落としているだろうが、ララナが正直に好意を告げ続けていれば薄れていただろう。かつての鈴音のようにオトの拒絶を聞きもしないでアピールする勇気さえあれば──。どこかで拒絶を恐れて、ララナは踏み込みきれずにいる。扮飾だったはずの嘘つきな自分が、妙な慎重さを発揮してしまっている。自由に行動できるはずの自分を、縛っている。

 しばらく沈黙していたオトがララナをダイニングに誘い、テーブル席に着席して話す。

「お前さんの話を聞いて、まあ、それもあり得るのかも知れんと思ったよ。けど、鈴音が俺を愛しとったとする根拠はちょっと納得いかん。俺は嫌なことほどねちっこく憶えとるし」

「嫌なこととは、不快なことですか」

「ざっくりいえばそうやな」

「不快感は、他者への信頼や期待が生んでいる感覚です」

「正論だが信頼も期待もしとらん。世間に流れた情報で見てくるようなヤツが不快なんよ」

「有名人ならではの不快感ですか」

「有名人とは違うが、名が知れ渡っとるってところは同じかもな」

「であれば、やはりオト様は他者に信頼も期待もしていらっしゃる。世間に出回った情報に左右されず己の眼を信じて面した者を観ることができるのが普通であるのだと、オト様は考えていらっしゃるのではないでしょうか」

「普通やないの」

「違います。普通の人人は簡単に情報に流されてしまいます。それがある種の危機回避でもございます。テレビで地震速報が流れたら机の下や安全な場所に身を隠そうとするのと同じ、納豆が血液をさらさらにすると聞けば買いたくなる、野菜のビタミンが美肌に有用と聞けば食べたくなる、それらと同じです」

「地震速報なんか無視で番組本体を観ることもあるやろ。俺みたいな偏食家は健康寿命を意識した情報にも流さたりはせんしな」

「左様です。皆、欲した情報を信じたいものなのです」

「なるほど、さっき俺がした話に擬えるなら、方方に配慮して綺麗に取り繕われたキャラを愛するわけだ。けど、問題は鈴音の気持やろ」

「オト様は先程自ら仰りました。お気づきではないのですか」

「ん。そうやっけ。──」

 腕組をして自身の発言を振り返ったオトに、ララナは先回りして指摘した。

「──そうです。オト様は、ご自分を色眼鏡で見なかった鈴音さんに知らず知らず好意を持って接しておられたのです。もともとオト様に好意を持っていた鈴音さんが、オト様の好意を感じないはずがございません。一方的だった想いが、反応のある想いに変わったのです。その瞬間から、鈴音さんがオト様に尽くしたくなったことはいうまでもないことでしょう」

 自分ならきっとそうなって、そうする。ララナはそんな予想も踏まえて鈴音の想いを表現する。

「鈴音さんは体が弱いなりにオト様とできることの全てをやり尽くしていたはずです。それを愛と表さず、なんと表されますか」

「……ん」

 オトが、腕組を解いて、短い溜息。「そうか、同じ女やもんな、男の俺よりは、鈴音の気持に察しがつきやすかったかも知れん」

「オト様は鈍くはござりません。鈴音さんの想いを、確と感じていらっしゃったはずです」

「そうやね、忘れようとしとるだけで、憶えとるよ」

 オトが認めた。「鈴音は俺を、愛しとったんやな──」

 鍋のいい匂いが漂い、オトがどこか明るい面持でララナを見やった。

「これは、……心に留めとこう」

「はい。鈴音さんのお心、忘れないであげてください」

「それもそうやけど、いま言ったのは鈴音のことじゃない」

 おもむろに立ち上がり本棚を軽く横へ除けて塞がれていたカーテンを静かに開けたオトが、ララナを振り向いて言うのは、

「お前さんのことも、いい意味で心に留めとくよ」

「……オト様──」

 オトの真顔をララナは正面から見つめ返した。逆光のせいか、神神しく(こうごう    )さえある彼の姿に見蕩れて(みと  )、息も忘れた。

 ……私を、認めてくださったのですね。

 警戒されているとばかり思っていたから、言葉にできない悦びにララナは打ち震えた。

 ふと重なる匂い。

「さて、白米は炊けたかね」

 と、オトがキッチンへと向かい、ララナは我に返った。

「蒸らしがございますので、蓋を開けてはなりませんよ」

「んなこた解っとる。鍋の摘まみ食いを敢行する」

「それもなりません」

 ララナは空間転移して土鍋の蓋を閉じ、オトの摘まみ食いを阻止した。

「調味料のときもそうだが魔法の無駄遣いは感心できんぞ」

「左様に思し(おぼ  )でしたら摘まみ食いはなさらないでください。お行儀の悪いことを止めるためなら無駄ではございませんよね」

「ふぅ……、腹の減った身にはキツイ設問だ」

 いそいそとダイニングに引き返す背中がかわいそうに思えて、ララナは味見皿に少量の具材と出汁を取ってオトに届けた。溶けるようにしてテーブルに突っ伏していたオトが目にするや手を伸ばした味見皿をララナはすんなり渡した。

「どうぞ、召し上がってください」

「ありちょん」

 と、オトが砕けた言回し(いいまわ  )で礼を言い、味見皿に口をつけた。「おぉ、シャバの飯はうめぇな」

「(うめぇ、ですか。)味加減はよろしいですか」

「問題ない。よくもまあ一発でこんなにうまく味つけできるもんやよ」

「勘です」

「熟練の主婦のようなことを。まあ、しかし、味の好みが近いようで安心したわ。どえら濃いの出されたら水を足すとこやった」

「出汁を効かせればしっかり味を感じます。塩や醤油を大量に使う必要はございません」

「さっき出汁入れとらんかったことない」

「家庭料理を意識して粉末出汁を今いれました。出汁の種類で手法が異なりますが今回は昆布やシイタケも際立った出汁をくれますので、それらから余計な雑味が溢れないよう高温・沸騰に曝さないように致しました。余談を挟めば、味噌は香りが飛んでしまいますので食べる直前に溶くのがよいとされておりますね」

「お菓子だけでなく料理も作れるとは」

 オトが空になった味見皿をララナに差し出して、「お前さんに嫁入り修業なんかは不要そうやな」

「あ、えっと、その……、そうですか」

「彼氏と喧嘩中やったか」

「い、いいえ、そうでは……」

「なんや、希しく歯切れ悪いやん」

「それは……その、仕方がないのです」

 と、ララナはぼそっと答えた。オトに嫁入り修業という言葉を向けられた。ただそれだけなのに、

 子どもを作って、一緒にあやしたり、食卓を囲んだり、愉しく話したり、

 なんて、妄想が膨らんでララナは高揚してしまい、お茶を濁すしかなかった。

「仕方ない、ね。ま、いいけど」

 と、オトが何か悟ったような細目でララナを流し見て、「じゃ、米の蒸らしが済んだら昼飯としよう」

 ララナは、味見皿を取り落とさないように小さくうなづくのが精一杯だった。

 

 

 

──八章 終──

 

 

 

 

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