表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~雨傘~   作者: 美鈴
46/63

第6話 〜神を殺した一族たち〜 8/8


「その通りだ、こいつの姉は俺の死んだ親友だった。……あいつの処刑の前日に、リコリスの事を頼まれた」


「頼まれたって………呪い、解けるのか?」


 ナキルの問いに、ユグは目を伏せる。


「さっき言った鬼化術は、呪いを解くための研究の中で生まれた。人から鬼子に変化するなら術があるなら、逆もあるはずだ。

 …なんとしても解かなければならない。俺は約束を違えたくはない」


「…そうだったすか」


 そこまで思っているなら、ユグ自身が研究に専念すべきだと思ったが、それをしない理由は聞かなかった。一つだけだとか言われそうだから。

 と、思っていたらミリアが口を挟んだ。


「そこまで言うなら、あなたが研究した方が良いじゃありませんの。何で研究しませんの?」


「質問は一つだけだ、いい加減宿に帰るぞ」


「ケチ眼鏡!」


 案の定ユグは答えずミリアは悪態付きながら追いかけていった。


「…………………」


「リコリス?」


「あ、うん。ごめんごめん、嫌な事思い出しちまって………あたし、ネレイスに謝りたいことあったんだけど、謝れなくってさ」


 ジョージが声をかけると、リコリスは気まずそうに頬をかいて僅かに俯く。


「恨んでるかもしんないね」


「…死んだ人は、生きてる人の幸せを願うらしいよ」


 ナキルがリコリスに近寄り、優しい声で続ける。


「俺の母さんが言ってた。死んだ人は生きてる人の幸せを願ってる。家族、友達、自分の大切な人……その人達に言いたいことがあって、探しているうちにこの世に迷ってしまうって。きっと、リコリスの姉ちゃんもリコリスの幸せを願ってるんじゃないか? もし、リコリスにとって死んだ姉ちゃんが大切だったなら、きっと」


「ネレイスさんがどんな人か知らないけど、俺もあまり悲観しなくていいと思う。ネレイスさんがどう思ってるのかわかんねーんだし、考えるだけ無駄だろ。だから元気だしてくだせーよ」


「…そう、かな」


 カンナさんだってヤシンの幸せを願っていた。リコリスの姉もそうであったらいい。

 そんな風に思いながら、ジョージはリコリスの肩を叩いた。すると、ナキルはくるっと宿の方へ向き、ぐーっと背伸びをして歩き出した。


「俺お腹空いたー! 早く宿行こうジョージ、リコリス」


「そうっすねー、夕飯なんだろうな」


 ジョージもリコリスに手招きしながら、ナキルに付いていった。

 リコリスは苦しそうに、胸に拳を当てる。


「リコリス…」


 誰にも聞こえない声で呟いた後、ジョージ達を追いかけたのだった。




□■□




 宿に戻り、部屋で夕飯のハンバーグ定食を皆で食べる。ジョージはハンバーグを食べつつナキルを見た。


「いやーすごいっすね」


「んぐっ、うん、確かにこれ美味いよなぁ。ご飯がすすむよ!」


「いやナキルがだよ」


「俺結構バイトしててさ、急いで食べなきゃいけない時もあるから早食いなんだ」


「早食いの話でもねーよ」


 ジョージはご飯をかき込んでいるナキルの横に高々と積まれたご飯茶碗と、ハンバーグの皿の山を見て言う。まだ食べ始めて10分弱だが既に大盛り茶碗が十数個、皿に至ってはテーブルに置けなくて床に数十枚積んである。さっきから宿の人が忙しそうに出入りしていた。


「強くなるにはたくさん食べるといいからな!」


「まぁわかるけど……じゃ俺もおかわり」


「むっ、でしたら私もおかわり!」


「お嬢、太ったっつって泣きますよ?」


「ミリアまだ15だろう? ちょっとぐらいたくさん食べても大丈夫さ」


「お前ら少しは静かに食えんのか」


 既に食べ終わっているユグは呆れたように眺め、リコリスも笑いながら皆とわいわい賑やかにハンバーグを食べる。


「私、今日頑張りましたもの。消費した分食べますわ!」


「今日は大変でしたねー。車から落ちそうになってた時はマジで焦りましたよ。冷や汗止まんなかったっす」


「確かに! あたしも目を疑ったよ、よく無事だったねぇ」


 リコリスは食べ終わってフォークを置き、ハンバーグを頬張っていたミリアは水を飲む。


「んぐっ………ふう、ほんとに死ぬかと思いましたわよ。いざ鬼子を叩こうとした時、何故か猫の鳴き声がして気が散っちゃいまして」


「猫?」


「それで前から落ち葉が飛んできて、バランス崩しちゃいましたの。あの時は助かりましたわ、ナキ」


 ミリアはお礼をナキルに向けて言う。…が、何故かナキルはフォークを持つ手を止め、顔が引き攣っていた。ユグはそんなナキルを鋭い眼光で見つめ、聞き返す。


「猫の鳴き声、だと?」


「え? ええ、何故か後ろから…」


「み、ミリア待って……」


 食べるのを止め、ナキルが焦ってミリアを止めようとしたその時ーーー隅に置いたナキルの鞄の中から「ニャー」と鳴き声がした。ユグは目を釣り上げる。


「お前またか! また拾って来たのか! 元いた場所に返して来い馬鹿が」


「だって! 森の中で一人ぼっちだったんだよ! それに可愛かったんだもん!」


「飼えもしないのに拾ってくるなと何回も言っているだろうが!」


 怒りの表情のユグに向かって泣きそうになりながらナキルは言い返す。その横でジョージはリコリスに聞いた。


「猫でも拾ってきたんすか?」


「うーん、そんなとこかね。ナキル小動物好きみたいでさ、このやり取りもかれこれ5、6回は見たかな」


「めちゃくちゃ拾ってきてんじゃねーか。少しも懲りてないっすね」


「でも、私も猫好きですわよ。飼いたくなる気持ちもわかりますわ」


 ミリアはうきうきとそう言いながら、外に出たがるようにニャーニャー鳴いている鞄を開ける。

 中にいたのは仮面を付けた猫だった。猫はシャーッと毛を逆立てるとミリアの手を引っ掻いた。


「きゃー! いったぁぁぁぁ!」


「お嬢ー!? ちょっ、これ鬼子じゃねーっすか!何拾ってきてんだ!」


「だって俺に懐いてたんだもん! COAで飼おう!」


「飼えるかァァァ! ユグの言う通り捨てて来いすぐに!」


「その前に私があの世に送ってやりますわ! 覚悟ー!」


「ギャー! 待ってミリア!!」


 結局、次の日に猫の鬼子は村から離れた森に帰し、一行はいよいよルイールへと出発したのだった。


.



ユグ、リコリス、ナキルのお話でした!


ナキルの設定↓


ナキル=リコレイス

身長170センチ。青い短髪に前髪一房だけ金のメッシュ。ガタイがよく筋肉質、力が強く足も早い。

ピチッとした黒いTシャツに黄色い腰紐と、青いニッカポッカ(とび職の人みたいなズボン)着用。動きやすさ重視。


武器:クロー(鉄爪)

攻撃★★★★★________魔力★★☆☆☆

防御★★★★★________魔法防御☆☆☆☆☆

素早さ★★★★☆______精神★★☆☆☆


〜追伸〜

評価、ブックマークありがとうございました!すごく嬉しかったです(^^)

更新頑張ります!


.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ