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~雨傘~   作者: 美鈴
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第6話 〜神を殺した一族たち〜 1/8


「よし、着いたぞ」


 フラバースから車で数時間走り、小さな村近くにある駐車スペースに車を停める。ユグの運転と助手席にいるリコリスのナビでここまで来て、現在夕方前だ。ルイールには一日で着かないため、今日はこの村で宿を取って明日向かうらしい。

 後部座席の左側に座っていたナキルは、すぐに降りて体を伸ばす。


「あー疲れたー! 車早いけど窮屈なんだよなー」


「ほんと、肩凝るっす」


 ジョージも肩を回しながら車を降り、最後にミリアも俯いて出てくる。


「あ、あなた達よく平気ですわね……こんな揺れる乗り物、乗って………うっぷ」


「大丈夫かい? ミリア、車酔い?」


 リコリスも降りてミリアの背中をさすり、ジョージは懐から水を取り出した。ナキルはその様子を見て聞く。


「車初めてだったのか?」


「ええ、こんなに揺れるなんて……馬車なら大丈夫なんですけれど」


「うーん…馬車のが揺れると思うけどなぁ」


「そうっすねー。はいお嬢」


 ジョージは水筒から水をついで渡し、ミリアは一息つく。


「まぁ初めて乗るものだし、こんなもんじゃないっすか」


「ジョージは乗った事ありますの?」


「いや、初めてっす」


「ううう…なんで私だけ………」


 水をチビチビ飲みながら恨めしそうに呟くと、少し落ち着いたのか大きく息をつく。


「乗り物酔いは、平衡感覚や体幹を鍛える事で克服できるらしいぞ。せいぜい鍛える事だ」


 ユグは車から降りて鍵をかけながら言う。


「少し休んでいろ。リコリスは付いて来い、宿を取りに行くぞ」


「はいよー。じゃ二人共、ミリアよろしく頼むよー」


 ユグはリコリスを連れて村へ向かっていった。二人の背中を見送り、ジョージはミリアの背中をさする。すると、ナキルは思い付いたように笑顔になった。


「そういえば乗り物酔いには梅干しがいいって聞いたことある! 買ってこようか?」


「う、梅干し!? 嫌ですわ! 断固お断りします!」


「あれ、ミリアって梅干し嫌いなのか?」


「おこちゃま舌なんすよ」


 軽く馬鹿にしたように笑うジョージを殴ろうとするが、回復しきっておらず、ミリアは手を下ろした。


「うう……覚えてなさいこのチャラ男…」


「へー、ジョージはチャラ男なのか。うん、見た目通りだな!」


「見た目通り!? 普通の格好してるだろ!?」


 悪意無く笑うナキルにジョージは少しショックを受ける。

 ちなみにジョージの格好はルイールを出たときと変わらず、帽子にファーが付いた黒いロングパーカーを着ており、手首と腰にチェーンアクセサリーが数本付いている。チェーン部分にチャラ男要素を感じたのかもしれない。

 そんな会話をしていたその時ーーー


「あ、あの! すみません!」


 村の方から薄汚れたマントを被った女が息を切らせて走ってきた。


「旅の方! お願いします。息子を助けてください!」


「え…っと?」


「お願いします! 息子を……」


 女はぼうっ、っと姿がぼやける。……ジュリアと同じ、鬼子だ。気付いたミリアは先に口を開いた。


「お待ちなさい、あなた鬼子ですの? それに息子って……」


「くそっ、あの女どこ行った?」


「探せ! 早く村から追い出せ!」


 村の中からそんな話し声が聞こえる。ジョージと女は声のする方を見て、女は隠れるように下がる。


「場所変えましょう。お嬢、乗り物酔いは?」


「もう平気ですわ」


「あっちの方から聞こえる。こっちに行こう」


 ナキルの指した路地に4人は逃げる様に隠れるのだった。




□■□




「私、カンナと言います。数日前に…息子のヤシンとこの村に訪れて……」


 女ーーーカンナはぽつぽつと話し始める。旅をしている彼女と息子のヤシンは、謎の集団に襲われたのだという。まだ幼い息子を隠して自分だけ誘拐され、なんとか逃げ出してこの村に急いで戻ってきたらしい。だが息子がこの村のどこにもいないのだと言う。


「息子とは、この宿の裏で待ち合わせる約束をしていました。でもいなくて……」


「その謎の集団に拐われたんじゃないか、ってこと?」


 ナキルの言葉に女ーーーカンナはコクンと頷き、次に心配そうに見上げていたミリアが質問した。


「あなたはその誘拐犯達に殺された、ということですの?」


「いえ…お恥ずかしい話なのですが、逃げる途中魔物に襲われてしまって……」


「それで死んでも死にきれず、息子探しにここに来た、ってことっすか。…鬼子になってでも」


「…はい」


 カンナは俯きがちにまた頷き、ジョージはじっと見つめる。会ってからずっとだが、カンナが隠すように顔を上げないのが気になった。まるで何か見られたくないものがあるような………


「(もしかして……)」


 昔一人で旅をしていた時、暗い路地裏にボロボロの衣服で隠れるように身を寄せている人達を何度も見た。その人達はなぜか頭に鬼の様なツノが2本生えており


「見つけたぞ! 神殺しめ!」


 "神殺しの一族"、そう呼ばれていた。


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