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~雨傘~   作者: 美鈴
36/63

第5話 ~夢追い人~ 6/6


 その頃、ジョージとユグは食堂から執務室へ向かっていた。しかし、その執務室のドアの前で誰かが座り込んでいた。


「……ん?」


「……あ、ユグ! やっと来た!」


 ドアの前にいた青年はぱあっ、と顔を上げてこちらに手を振る。ユグは急ぐこともなく通常のペースで近寄り、ジョージも付いていく。


「誰だ?」


「前に話したバイトだ」


「あれっ、新しい部下の人? ……っていうか、レグナムル家の屋敷にいた人じゃん。

 初めまして、俺ナキル=リコレイス。皆からはナキって呼ばれてて、ユグにバイトで雇ってもらってるんだ。よろしく!」


 青年ーーーナキルは明るい笑顔で手を差し出した。青い短髪に頭頂部から目元へ金髪のメッシュが一筋入ったサラサラヘアーが印象的だった。背はそんなに高くないが、鍛えているのかガッチリした筋肉質である。少し年下だろうか。

 ジョージはナキルの手を取り、笑みを作る。


「ジョージ=ルータスです。何故レグナムル家の事を?」


「あぁ、俺ユグ達とルイール警備の任務に就いてたんだ。で、ルイールが混乱してて俺だけ自警騎士団の手伝いしてたんだけど、落ち着いてきたし、ユグに報告もあったから戻ってきた」


 身元が知られていたため僅かに疑心を抱いたが、ナキルの快活な様子を見ると、そこまで疑う必要はないと思った。ユグに雇われたバイトということのようだし。


「立ち話もなんだ。報告は部屋で聞こう」




□■□




 ソファにナキと一緒に座ると、ユグは対面のソファに座り、俺とナキに一つづつ飴玉を投げ渡した。今日はレモン味。

 ユグは腕を組んで、ナキの方を見た。


「それで、ルイールはどうだった」


「あれ以来幽鬼は見てないけど、多分まだいると思う。魔女の抹殺が狙いだしさ」


「でも見つからない、と」


「うん。何日も探したけど、全然」


 ナキルは首を振り、ユグは口元に指を当てて考える。その間にジョージはナキルに質問した。


「レグナムル家がどうなってるか、知らないっすか?」


「レグナムル卿は自警騎士団と一緒に幽鬼の捜索をしてる。それと、俺伝言も頼まれてるんだ」


「伝言? ユミル様から?」


 予想外のワードにジョージは首を傾げ、ナキルは頷いた。ユグも思考を一旦置いておき、顔を上げる。


「"できるだけ早くミリアを家に連れてくるように"って。その、ミリアってお嬢様をルイールに連れていくために俺ここに来た」


「…俺はミリア様の付き人です。幽鬼がいるかもしれないルイールにミリア様を連れてくるように…本当にユミル様がそんな事を?」


 変な話だ。危険から遠ざけるためにお嬢をCOAに保護してもらったはずなのに、何故?


「う、疑われてる? いや、ほんとなんだよ! これ見てくれ」


 ナキルは懐から手紙を差し出し、ジョージは受け取って内容を読む。

 俺とお嬢に宛てた手紙で、ナキの言った通りの内容がユミル様の字で書かれていた。…間違いないようだ。


「もしかしたら疑われるかも、ってレグナムル卿が書いてくれたんだ」


「みたいっすね。ユミル様の字ですから」


「ナキ、レグナムル卿は他に何か言ってなかったのか?」


「いや、何も……でも何か怖い顔をしてたよ」


「ふむ…」


 ユグは呟いてから一瞬考えて、頷いた。


「わかった、ナキ。ご苦労だったな。ジョージ、二日後にミリアを連れてルイールに向かう。彼女にも伝えておけ。…危険もあるだろうから、覚悟しておけ」


「…わかった」


 幽鬼が気掛かりだが、ユミル様はそれをわかってて連れてくるように言ってるはずだ。なら行くしかない。


「ナキ、お前学校は大丈夫か?」


「あぁ、今長期休暇だから大丈夫。……宿題以外は」


「学業に支障きたすなよ。クビにしなくてはならなくなる」


「う…それは困るな、ほんと」


 ナキルは苦笑いし、ジョージはその様子を口を挟まずに聞いていた。…学生だったのか。


「今日はもう遅い、二人共休め。ジョージはミリアにさっきの話を伝えておけ」


 そう言うと、ユグはジョージに茶封筒を手渡した。前回任務分の給料である。


「お、ありがとう!」


「じゃユグ、お疲れ様ー!」


 ナキルは笑顔で手を振って、ジョージと一緒に部屋を出ていった。ナキルがジョージに話しかけてる声が遠ざかり、ユグは自分のデスクに座る。

 …レグナムル卿の考えは何となく察していた。


「さて、どうしたものか…」


 おそらく、ミリアを側に置くつもりだ。




□■□




「…お、お嬢!? どうしたんすか!?」


「ジョージ…遅かったですわね……」


 ナキルと別れてミリアを迎えに食堂に行くと、ミリアが机に突っ伏していた。ミリアの対面にいたリコリスが隣に移動しており、「お疲れー♪あんたも飲む?」とか言いながらチューハイを飲んでいた。側に大量の空き缶が並べられている。


「いや、いらないけど……ってかお嬢? 大丈夫っすか」


「キャーー!」


「ええ!?」


 ジョージを見た瞬間、悲鳴を上げてミリアは顔を覆い、そっぽを向いた。ちょっとショック。


「あー、ミリアはあたしが部屋まで送ってくから。ジョージは先帰っててくれるかい」


「何があったんだよ……まぁ、じゃ頼む」


「ああジョージ! 待って助けて追いてかない…キャー!」


「何なんすか! めんどくさい!!」


 ルイール帰還の話が明日出来るか不安である。


.


サブストーリー扱いにしようと思ったのですが、やはり本編と同じようにしました。

ナキルの設定はルイール帰還の話になったら載せます!

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