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~雨傘~   作者: 美鈴
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第4話 ~鬼子への変貌~ 2/7

 

 それから何度か戦闘がありつつ、日が沈む前に任務先の洞窟前に到着した。ジョージは入り口で息を付く。


「やっと着いたっすか」


「んー! でもやっぱいつもより戦闘楽だよ。ジョージ意外とやるじゃないかい」


 リコリスは背伸びをして笑顔でジョージを見る。ジョージは来るだけでも意外とハードな道のりに、多少疲労感を感じつつ思ったことを言った


「よく今まで二人でやってましたね。魔導士二人じゃ前衛いなくて不便でしょ」


「バイトがいる時はともかく、俺達二人のみの時は、大抵見つかる前に魔法で蹴散らしている」


「バイト? そんなん雇ってるんすか」


 あまり公にしない組織だと思っていたが、バイト雇う事もあるのか。意外そうに聞くと、リコリスは苦笑いした。


「基本雇うことはしないんだけど…ほら、あたしら二人しかいないからさ」


「あぁ……」


 何故二人しかいないのかはあえて聞かなかった。バイト許可してまで班員二人ということは……


「……おい、何故俺を見る」


「あははは! 違う違う! 確かにユグは嫌われやすいけれどそれはそれ!」


「あ、なんだ」


「確かにそれもなくはないけどね」


「…失礼なやつらだ」


 ユグは呆れたように息をついて、洞窟へと歩き出す。


「そのうち会うこともあるだろうから、そのバイトの事はその時説明する。まずは任務だ、この洞窟にいる鬼子を一時退避させる。……ん?」


 ユグはさっと辺りを見回す。そしてある一点を見つめ、茂みの中へ水の魔法放った。


「うぎゃぁぁぁ! 冷てぇぇぇぇぇ!」


 茂みから男が悲鳴をあげながら飛び出した。リコリスはさっと銃を構えるが、ジョージは見覚えの有りすぎる頭に半眼になった。


「てめぇ眼鏡野郎なにしやがんだ! 俺様の髪型がくずれちまったじゃねぇかゴルァ!!」


 レイヌの街で一緒にカレーを食べたモヒカン軍団の一人である。しかも多分隣の席でカレー食べてた奴。


「あ、てめぇこないだの! 何してやがんだこんなところで!」


「なんだ、お前の友達か」


「俺にモヒカンの友達はいません気のせいっす」


「おい待てやコルァ! 何他人のフリしてんだテメェェェェ!!」


 ズカズカと近寄ってくるモヒカン頭を押さえる。意外と力強いため、ジョージは嫌そうに離そうとする


「何なんすかあんた、こんなとこで何やってんすか。モヒカンのスカウトなら街に戻った方がいいですよ。散髪屋辺りに」


「別に俺らスカウトで仲間集めてねぇから!! そんなんじゃねぇよ! 俺は人を探しに来たんだよ!!」


「人探し? こんな辺鄙な場所にかい?」


 リコリスが話に入って聞き返す。彼女に気付いたモヒカン男はジョージから離れる。


「あぁ、俺はここに…その……死んだはずのおばちゃんの旦那がいるって聞いて来たんだよ」


「肝試し? 一人でやって楽しいんすか」


「違うわァァァ!! ほんとにいるって聞いたんだよ舐めてんのかテメェェェ!」


 モヒカンは一度叫んだ後、少し落ち着いて説明を始めた。


「一週間前、この洞窟に人の姿をした"何か"がいるって噂を聞いたんだ。そん時は俺だって信じちゃいなかったよ。……でも、来てみたら確かに"いた"んだ。しかも写真で見たおばちゃんの旦那にそっくりだった」


「いや、そんなん見間違いじゃねーですか。ねぇ?」


 笑い飛ばすようにジョージはユグとリコリスに振り返って聞く。が、何故か神妙な顔をで互いに見合わせていた。


「その幽霊もどきはどこにいる」


「この洞窟の奥だ」


「わかった、行こう」


 即答したユグを、ジョージはポカーンとした表情で見る。


「…マジで?」


「さっ、あたしらも行くよー」




 □■□




 ひんやりとした薄暗い洞窟内をた4人は進んでいく。ある程度視認出来るように所々ランプが灯っているため、人の手が入っている場所のようだ。所々つるはしが岩壁に立て掛けられており、現在も使われている採掘場だろう。


「おばちゃんの旦那はよ、ここで働いていたらしいぜ。んで何年も前に、落石にあって死んじまった」


「会ったこと無いんすか?」


「あぁ、写真だけ見たことあってな」


「会ったこともない人間を探しに、こんな危険な場所に来たのか?」


 ユグが振り返り聞くと、モヒカンは前を見据えて、真面目な顔で言った。


「確かに旦那は知らねぇ奴だけど、おばちゃんは俺の恩人なんだ。だからもし、本当に生きてんなら、おばちゃんに会わせてやりてぇんだよ。おばちゃん、あまり口にしねぇけど多分寂しいんじゃねえかと思うから…」


「随分慕っているんだねぇ」


「当然だろ」


「…そうなんだ」


 迷いなく言い放ったモヒカンをリコリスは少し浮かない顔で見ており、ジョージは気になって聞いてみた。


「どうかしましたか」


「いや、まぁ、うん……何でもないよ」


 リコリスは愛想笑いのような微妙な笑顔で応える。ふと、前を歩いていたユグが足を止めた。


「…おい、その幽霊がいたのはここか?」


「…あぁ、だがもうちょい奥の方だ」


「わかった、ならあとは俺たちが行く。お前はここで待っていろ」


「はぁ!? 何言ってんだ! 俺も行くに決まってんだろ。」


「この先は一般人立ち入り禁止だ。危険もある、残れモヒカン馬鹿」


「誰がモヒカン馬鹿だコルァ!」


 ユグに食って掛かるモヒカンに、ジョージはやれやれと言ったようにユグを見た。


「別に連れてってもいいんじゃないっすか。ここまで普通に一緒に来れたんだし、おばちゃんの旦那さん見ないと納得しないっすよ。このモヒカン馬鹿」


「待って、ジョージ」


 後ろからコートを引かれ、振り向くとリコリスが困った顔で見上げていた。


「そうじゃない…そういう話じゃないんだ」


「? どういうことっすか?」


 その時ーーー洞窟の方から人の声が聞こえた。


 .

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