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~雨傘~   作者: 美鈴
23/63

第3話 ~踏み出した一歩~ 7/7


「…ミリアは大丈夫? さっき怒っていたようだけど」


「…それは、その……」


 ミリアはアリアから目を反らせて、言い澱んでしまう。


「私か今ここにいるのは、あなたとお話したかったからなの。あの夜、魔女が目覚めた時から話したかったんだよ」


 屋敷で騒ぎがあった日の事だ。そういえば、アリアの声は傘を投げようとした時に聞こえた声に似ている気がする。


「あの時の声、あなたでしたのね」


「うん、あの時から私はあなたとジョージと話したかった。ジョージは残念ながら、今いないみたいだけど」


「ジョージはCOAの任務に行ってしまいましたわ。私は……」


 ミリアは少しむくれた様子で言い捨てる。


「私だけ…置いてけぼり」


「…そっか」


「わかってますの。私が無力なことぐらい。でも…それでも…」


「うん」


「ジョージの力になりたいの」


 ジョージと初めて話した時から、私はずっと護られてばかりだった。今この状況で何が出来るのかわからないけど、護られてばかりはもう嫌だった。


「ねぇアリア。私、どうすればジョージと対等になれるのかしら」


「ふふふ」


 アリアは何故か嬉しそうに笑い、首を横に少し倒す。


「ミリアにとっての"対等"って何?」


「それは…一緒に戦ったり…一緒に考えたり……大変なことがあっても頼ってもらえるように……とか…」


「何で出来ないと思う?」


「だから、私が…その、弱いから」


「なら、それが答えじゃない?」


 アリアの言葉にミリアは少し考える。と、思い付いたように顔を上げた。


「そう…そうですわ! アリア、私行ってきます!」


「はい、行ってらっしゃい」


 ミリアは笑顔で傘を手に持ち、部屋のドアを勢いよく開ける。すると、見張りの男にぶつかりそうになった。


「うわっ、びっくりした! どうかされましたか?」


「ねぇあなた! ちょっと案内してくださる?」


「ええ?」


 ミリアは見張りの男を引っ張って走り去り、アリアはひらひらと手を振って見送るのだった。


「…がんばってね」




□■□




 機関の訓練所には、現在兵士部門の人間数人と、指令長ノイルが訓練に精を出していた。任務の無い者が自主練によく使う部屋である。ノイルは指令長という立場上暇ではないのだが、書類仕事が苦手な彼はデスクワークが嫌になったらよく来ていた。


「…よし。おい、誰か俺と一試合組まないか?」


 汗をタオルで拭いてさわやかに聞くが、その場にいる者達は互いに顔を見合わせる。ノイルと組むといつもボロボロになるのだ。COAトップクラスの実力者である彼は、まったく容赦がない。


「なんだ、誰もやらないのか?」


「い、いやこれから任務なので…」


 ノイルがつまらなさそうに剣を肩に担いだその時ーーー


「頼もォォォォォォォ!!」


 入り口扉の向こうから少女特有の甲高い声が聞こえた。…道場破り?


「たーのーもォォォォ!!」


 今度は入り口の扉がドンドン叩かれている。声の主に何となく予想がついたノイルは苦笑いしながら扉を開けた。


「たーのー…きゃあ!」


「…ずいぶん可愛い道場破りだな。どうかしたかミリア嬢」


 ミリアは驚いて一歩後退する。その後ろでは彼女の部屋で見張っていた男が会釈していた。


「すみません、どうしてもここに連れていけと言われまして…」


「あぁ、いいさ。それで? どうしたんだ」


 ノイルはミリアへ聞く。ミリアは目の前の剣を肩に担ぐノイルを上から下まで見てから、唇を引き締めノイルの目を見る。


「あなた、強い?」


「うん? あぁ、結構強いと思うぞ」


「…あの!」


 やるのよ! 私! 言うのよ私!


「私に、戦い方を教えて下さい! …強くして下さい!」


 ミリアは大きな声で言い、ノイルに向かって勢いよく頭を下げた。…い、言ってしまった…! 心臓がバクバク言ってる。

 ノイルは少し驚いた。箱入りのお嬢様がまさかここに来て戦い方を教わろうとは。しかも俺みたいな貴族でもない男に頭を下げてまで。


「…一応聞くけど、遊びで来たわけじゃないんだよな?」


「当たり前ですわ」


 頭を上げたミリアには覚悟のような強い意志があるように見えた。まるで子供のような真っ直ぐな瞳に、ノイルは笑みが零れた。


「ちょうど暇してたとこなんだ。入んな」


 ノイルは訓練所内に入っていきながら来るように手招きし、ミリアは緊張したように一歩踏み出した。


 …やりたいことやほしい物は、いつもお姉様に言っていた。やりたいことのために自分で考えて行動したのは、これが初めてだった。


 きっと、これは大人になるための一歩だ。


.

ようやく3話目!今回はゆるゆるでお送りしました(^-^)/

(2話のリコリスの名前間違ったので訂正しました)


~ざっくりとキャラ紹介~

ユグ=ワーグナー

身長183センチ。外見は黒髪、腰まで尻尾髪の無造作ヘアー。切れ長の濃い青の瞳に薄茶縁長方形型レンズのメガネかけてる。 深い緑のコート、露出少ない。


武器:杖(1メートルほどの銀製、針みたいなもの)

攻撃★★☆☆☆________魔力★★★★★

防御★★☆☆☆________魔法防御★★★★★

素早さ★★★☆☆______精神★★★★☆


リコリス=マンジェシカ

身長168センチ、スタイルの良い美人。巨乳。外見はワインみたいな深い色の赤髪のショートヘアー、右前髪の一房だけ少し長く、ビーズ飾りが縦に3つ付いてる。くせの無い直毛。

服は赤系、動きやすそうな物。ショートパンツ。テンガロンハットかぶってる。


武器:両手銃

攻撃★★★☆☆________魔力★★★★☆

防御★★☆☆☆________魔法防御★★★★☆

素早さ★☆☆☆☆______精神★★★☆☆


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