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閑話~孤独な王子様(ナイトメア~語られない物語~)

あるところに、銀髪の美しい王子様がいました。

王子様は生まれた時から幽霊で透明人間でした。忌み子として生まれた王子様には名前がありませんでした。

それでも、王子様は不自由はありませんでした。名前を呼んでくれる人がいなかったからです。だから、名前なんてなくても困りませんでした。

王子様はひとりぼっちでしたが、沢山の物を持っていました。金ぴかのお城も、真っ白な駿馬も、全部可哀想な王子様を憐れんで、与えられたものでした。

王子様はそれらを得る代わりに与えられた自分の役割を知っていました。それは何も望まないことでした。

王子様の兄弟には名前がありました。それを呼んでくれる友人や家族、愛してくれる人もいました。

王子様はいつまでも、ひとりぼっちで、どこにも居場所がありませんでした。


ある日のことです。隣国の末のお姫様と王子様の結婚が決まりました。

王子様は顔をしかめました。それは最初から祝福された結婚ではありませんでした。

実はお姫様は人質として王子様に嫁ぐことになったのです。余り物同士の不幸せな結婚。そう思うと、王子様は憂鬱な気持ちになるのでした。

お姫様は王子様を好きになり兄のように慕いましたが、王子様は冷たく突き放しました。それがお姫様のためだと思ったからです。

王子様も自分を無視しないお姫様が大好きになりました。だから、お姫様が不幸にならないように国に帰す方法を考えることに没頭しました。

そうして、お姫様はひとりぼっちになりました。


ある日、お姫様は行方不明になりました。

王子様はどうしたことかと慌てました。王子様はお姫様を一生懸命探しました。そうして、夢魔のところにたどり着きました。

夢魔はお姫様を帰す条件に王子様の大事なものを一つだけ差し出すように要求しました。

王子様は即座に金ぴかのお城や白馬を差し出すと夢魔に言いましたが、夢魔は頷きませんでした。

「それは本当に君にとって大事なものか?」と聞かれて王子様は言葉を失います。

だって、王子様にはわかっていたのです。それらは何一つ、王子様が望んで得たものではなく、押し付けられたものだったからです。唯一、押し付けられたもので大切なものがあるとすれば…。

王子様の心を読んだように夢魔は笑い、気づいたら王子様は心を失って人形のように冷たくなったお姫様の脱け殻を抱いて戻っていました。

一番大事なものを失った王子様は嘆き、ぽろぽろと涙をこぼしました。

嘆く王子様に夢魔はせせら笑うように、心の内側から話しかけてきました。「大事なら、なぜ簡単に手放そうとしたのだ」と。

王子様はむきになっていいました。「大事だから手放そうとしたのだ」と。「存在しない自分ではお姫様を幸せにできないからだ」と。

夢魔はいいました。「お姫様の幸せなんて、お姫様にしかわからないだろう?」と。「君は君の嫌いな人間たちと同じように君の希望をお姫様に押し付けたんだ。君は結局、可哀想な自分を正当化して酔っているだけだよ」と。

夢魔の理不尽さに王子様は初めて、怒りました。「なら、どうすれば良かったんだ!誰も彼も勝手に役割を押し付けてくるじゃないか」と。

王子様の蒼い瞳からこぼれ落ちた涙がお姫様の白い頬に触れました。すると、どうしたことでしょうか。お姫様は意識を取り戻しました。ただ。


(ここでページは破りとられている)

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