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閑話~公爵子息の災厄~

コメントしようと思ったら感想消えちゃったみたいで、すみません(^^;返信も小説も遅筆ですm(_ _)m

基本、ぐだぐだです。はい。

ティルの娼館通い云々、気になっている方もいらっしゃるかもしれませんが、追々事情を更新する予定です。

彼女へのプロポーズは凄く勇気が必要だった。勝算は半々で彼女の気持ちがこちらに完全にはないのに気づいていたからだ。

それでも急いだのはもたもたしている間にまたタイミングを逃して後悔するのが嫌だったからだ。


隣で腕を絡めているレイチェルに俺は見とれた。彼女は記憶喪失なので、俺達が本当は夫婦だということを知らない。何故かはわからないが、頑なに兄妹だと信じている。よって、挙動には気を張る必要があった。

何せ、今から会う相手はこちらの事情を全く知らない。レイチェルが記憶を喪ったことは身内だけの秘密として留めている。

俺達が本当は婚約者同士だと人から聞いて彼女が知れば、どう転ぶか想像がつかなかった。

彼女は本当はわざと知らないふりをしているのではないかと、つい意地の悪いことを考えてしまう。

或いは、おとぎ話のようにキスをすれば全て思い出すのではないかとご都合主義なことを考えてしまう。

ちらりと彼女を見れば、こちらに気づいたようで不思議そうに小首を傾げて困ったようにはにかんだ。

ちょっとした仕草が可愛らし過ぎて俺はくらくらした。

ああ、彼女が好きだ。どうしようもないぐらいに。

もし、このまま思い出さないままなら彼女を連れて田舎に引きこもろう。できるなら今すぐにでも、そうしたい気分だった。

正直、記憶を失った彼女が俺以外の結婚相手を探すと言い出した時はどうにかなりそうだった。

ドリーがやれやれと肩を竦めたのがわかった。

しかし、俺にとっては死活問題だ。

このまま彼女が思い出さなかった場合、破談になり本当に他の奴と結婚してしまう可能性がある。そうならないためにも、再び俺を好きになってもらわなければならないのだが。


「レイチェル。久しぶりね!」


レイチェルは声の方を振り返り、考え込んだ後、僅かに首を傾げた。


「………ダリア?」


「どうして疑問形なの?」


「久しぶりすぎて、ぼーっとしていたんです。ごめんなさい」


「そうなの?」


戸惑った様子のレイチェルを訝しむような目で見てくるシュタイナー子爵令嬢を見て、俺は内心で唸った。


「シュタイナー子爵令嬢、こんばんは。少しお話ししたいことがあります」


ちらりと傍に控えていたドリーに目配せをして、レイチェルにはドリーと待つように伝えた。

少し離れてからシュタイナー子爵令嬢に事情を話せば、彼女は目を丸くして言った。


「まぁ!そんなことがあったんですの?」


「ええ。ですから、話を合わせて頂けると助かります」


「それは構いませんけど…。無理がありませんか?ティルナード様とレイチェル様はとても、ご兄妹には見えませんもの。鈍いレイチェルも流石に気づいているのでは?」


俺は曖昧に笑った。

シュタイナー子爵令嬢の言う通りだとは思ったが、そこをはっきりさせればレイチェルの性格的に間違いなく、留まってはくれないだろう。忘れられたことがどんなに辛くても、彼女を手離すのは嫌だった。

話を終えて、彼女の元に戻れば心なしかレイチェルはむっとしているように見えた。


「レイチェル?」


名前を呼べば、彼女はぷいっと顔を逸らした。


「何でもありません」


「レイチェルは何を怒っているの?」


「何も怒ってませんよ?」


「そう?ところで、貴女、どうして私がわかったの?」


「何となく。そうじゃないかと思ったんです。ティルナード様から聞いたんですか?」


「まぁ」


「忘れてしまったこともあるけど、思い出せることもあるのよ?顔を見れば靄がかかったのが晴れたみたいに思い出せるの」


「そうなの?その理屈で行くと、ティルナード様のことも、そろそろ思い出したかしら?」


レイチェルは顔を曇らせて、ふるふると左右に首を振った。

俺はがくりと肩を落とした。


「まぁ。焦ることはないわね。その内、思い出せるわ」


慰めるようにシュタイナー子爵令嬢は言った。


「ダリア…はティルナード様とはどういう?」


レイチェルは俺の腕にぎゅっとしがみつきながら、眉を寄せて言った。


「………どういうも何も、貴女を通じて知り合った知人よ。そんな据わった目で見なくても取らないから安心して」


レイチェルはまた首を傾げた。何かに戸惑っているようだった。


「教えて欲しいの。私の婚約者ってどんな方なの?」


迷いを振り切るように彼女は口を開いた。


「どんなって周りに羨ましがれるぐらい、素敵な方よ。貴女、凄く大事にされていたのよ?嫁馬鹿と言われるぐらいに」


「なら、どうして顔を見せに来て下さらないのかしら?」


レイチェルは俯いた。

シュタイナー子爵令嬢からの突き刺さるような視線を感じて、俺はたじろいだ。

俺が彼女の婚約者で、実に毎日顔を合わせているわけだが、それを言うわけにはいかない。


「それにね。おかしいの」


「何が?」


「ティルナード様達の話では私は公爵令嬢…ということになるのだけど、全く思い出さないの」


「無理もないわ。混乱しているのよ」


シュタイナー子爵令嬢は苦笑いした。


「多分、私は公爵令嬢ではないと思うの。違和感ばかりで、そうだったことが全く思い出せないの。私は本当は誰なの?」


「…レイチェルはどう思うの?」


「私の状態を哀れんだヴァレンティノ公爵家の方々が口裏を合わせているとか?本当は私だけが無関係の赤の他人なんじゃ」


思い詰めたようにレイチェルは言った。


「家族です!貴女は俺の…大事な人だ」


慌てて俺は彼女の身体を抱き寄せた。人目があろうが、構うものか。


「………貴方は本当は私の何?」


真っ直ぐ見つめられて、俺は答えていた。


「貴女は俺の婚約者です」


厳密には結婚しているが、まだ公表していないことなので、この場では口にすることはできない。それに、それを伝えれば、ますますレイチェルが混乱する気がした。


「嘘」


「嘘なもんか。こういうことで嘘をついて何になるって言うんだ」


はぁ、と息をついた。信じないだろうとは最初からわかっていた。レイチェルは昔からそうだった。


「レイチェル。今日は帰ろう?少し休んだ方が良い」


彼女は暫くして躊躇うように頷いた。

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