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59.話したいことがあるのですが

4回目の投稿です!

遅くに帰ってきたティルは何となく浮かない顔をしていた。仕事で何かあったんだろうか。

出掛けのティルの様子が気になった私は寝ずに彼の帰りを待っていた。


「おかえりなさい」


「ただいま」


ティルは出迎えた私に気づくと、ぎゅっと抱き締めた。


「ルーカスから手紙を預かっている。机の上に置いておくから」


「お兄様から?」


何かあったんだろうか。最近はこれといって何も報告するようなことはなかったような気がする。

ティルは上衣をドリーに預けると、長いコンパスで自室に向かった。私も短い足でちょこちょこと後を追いかける。

彼は考え事をしているらしく私が追いかけているのには気づかない様子だった。そのため、必然的に小走りになる。普段は全くわからなかったが、本来ティルはこのぐらい早く歩くのだと私は驚いた。


「ティルナード様。レイチェル様のためにもう少しゆっくり歩きませんか?」


ドリーに言われて初めてティルは気づいたように足を止めた。私は勢い余って彼の背中に鼻をぶつけた。


「レイチェル?……ごめん」


やっぱり様子がおかしい。


「ティル。あの…」


「夜も遅いからもう休んだ方が良い」


ティルは私の髪を優しく撫でた。


「でも」


諦めきれない私はすがるようにティルの服を掴んだ。

話したいことがあった。なぜ、ツェリーエのコンサートが駄目なのか。ルーカスとはどんな話をしたのか。浮かない顔をしているのは何故なのか。


「すみません。…少し疲れているんだ。話はまた今度にしましょう」


私はティルの服から指を離し、とぼとぼと部屋に戻った。部屋に戻ってすぐ、ドリーがティルに預かったらしい書簡を持ってきた。


「ありがとう、ドリー。ティルは?」


「今日はあちらで休むそうです。少し考えたいことがあるとか」


「私はティルの気にさわるようなことをしたんでしょうか?」


「いいえ。機嫌を損ねているというよりは戸惑ってらっしゃるようです。暫くしたら元通りになりますよ」


ドリーはそう言うと一礼して部屋を出ていった。


「だと良いのだけど」


ペーパーナイフで書簡の封を切り、内容に目を通した。

中からは私宛の手紙が何通か出てきた。差出人は一通はダリアから、もう一通は…。


「レイモンド?」


その名前には確かに見覚えがあった。

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