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異世界戦記  作者: 日本武尊
第五章
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第六十一話 グラミアム海軍、その実力



「ポール観測機より報告!敵戦艦部隊を確認!数は15!」


 通信兵がサザンクロスから飛び立った瑞雲改めポール水上機からの報告を伝える。


「こちらより多いか。だが、文句を言っていられん!艦隊!最大船速!」


 艦隊は速度を上げつつ陣形を単縦陣にして敵戦艦部隊に向かう。


「間も無くサザンクロス級の射程内に入りますが、どうします?」


「うむ。最初はサザンクロス、トリオンファン、デヴァスタシオンの有効射程内に入り次第砲撃、ベルキューズ級は有効射程内に入り次第順次射撃を開始せよと伝え。

 ならびに水雷戦隊は好機を見て突撃せよと伝え」


「はっ!」



「しかし、これは難しいですね」


「あぁ」


 提督と参謀は索敵機からの報告から敵艦隊の配置と現在地を海図に駒を置いて、どう動くべきか考える。


「反航戦か同航戦を持ち込もうにも、戦力の差がある以上一方的にやられるのが目に見えます」


「うむ。それに敵艦の砲の口径がどのくらいあるのかも分からん。だが、すくなくとも旗艦とその同型艦は16インチはあるかもしれん」


「本艦と同等ですか」


「まぁ、こちらは50口径だ。仮に相手の16インチ砲が45口径なら、僅かだがこちらの方が射程が長い上、精度もある」


「ですがベルキューズ級は14インチです。いくら扶桑海軍からもたらされた新設計の55口径砲だとしても、射程では16インチには及びません。

 それに装甲もサザンクロス級と比べれば厚さと質共に大きく劣ります」


 ベルキューズ級の搭載する主砲は新たに設計された55口径の新型連装砲で、貫徹能力が高く、専用の『重量弾』が使用可能なので質量的威力は16インチに匹敵するが、その分射程は劣る。

 それに加え、元々が旧式艦とあって、16インチ砲の前では装甲は頼りない。


「……」


 提督は頭に生える竜の角に触りながら駒を見つめる。


「せめて、敵の指揮系統に混乱を生じさせる事ができれば、こちらにもチャンスはあるのですが」


「……うむ」


 提督は敵の旗艦を示している駒を凝視する。


「敵が旗艦にどれだけ指揮に依存しているかだな」


「?」


「いや、そうならば、こう動くべきと考えている」


 提督はこちらの艦隊の駒を動かす。


「っ!これは!」


 参謀は提督の意図に気づき驚く。


「危険ではあるが、こうするしかない」


「確かにそうですが、これでは我が艦隊は一方的にやられます!下手をすれば、全滅の可能性が!」


「だが、これを耐え凌いだその先で、勝機は現れる」


「……」


「数で劣る我々がこの海戦で有利に立つには、これしかない」


「……」





「観測機より報告!敵戦艦部隊を確認!11時の方向!距離3万8千!」


 ソビエツカヤ・ロシアの艦橋では観測機からの報告を通信兵が伝えると、司令官と参謀は双眼鏡を覗く。


「ふむ。先頭の3隻は同型で大きいな」


「えぇ。恐らくこのソビエツカヤ・ロシアと同等かと」


「となると、16インチはあると考えた方がいいか」


「ですが他の艦はガングート級より小柄の様に見えますので、主砲は小さいと思われます」


「うむ。なら、こちらから一方的に撃てるな」


「はい」



「ん?」


 双眼鏡で敵艦隊を見ていると、艦隊の動きに変化が現れる。


「なんだ?艦隊が右へ回頭を始めたぞ」


「自ら側面を見せるとは?気でも狂ったか?」


「だが、これは神が与えてくれたチャンスだ。無駄にはするな」


 司令官は制帽を脱ぎ十字を描くと再度前を見る。


「回頭始め。敵戦艦を海の藻屑にしろ!」


 全戦艦は回頭を始め砲がすべて敵艦隊へと向けられ、照準を定めた砲から砲撃が始まる。




『敵艦発砲!!』


「……」


 防空指揮所からの報告が艦橋に届き、しばらくして空気を切り裂く独特の音と共に砲弾が艦隊周囲の海面に着弾し、いくつもの巨大な水柱を上げる。


「こ、これは……!」


「やはり相手の全ての戦艦の砲は16インチはあるか」


 衝撃で船体が揺れるのを感じながら呟く間にも次々と砲弾の雨が艦隊の周囲に着弾して巨大な水柱を上げ、轟音と衝撃が襲う。


「ッ!砲術長!狙うは敵旗艦だ!他には目をくれるな!」


『了解!扶桑海軍の大砲屋から学んだ技術を見せてやります!!』


 艦長は伝声管に向かって叫び、砲術長へ指示を送ると砲術長よりそう返事が返ってくる。


(あと2,3回で命中弾はあるな)



 そう考えた直後、金属が砕け爆発する音が響く。


「っ!ベルキューズ及びアルミード、レーヌに直撃弾!」


 その報告を聞きとっさに艦隊を全体的に見渡せる場所に向かうと、デヴァスタシオンの後ろを航行するベルキューズとその後ろを航行するアルミードとレーヌが黒煙を上げている。

 するとベルキューズの艦橋に設置されている探照灯が点滅する。


「『サ・ン・バ・ン・ホ・ウ・ト・ウ・ニ・チョ・ク・ゲ・キ・ソ・ン・カ・イ・ス・ル・モ・コ・ウ・コ・ウ・ニ・シ・ショ・ウ・ナ・シ』か」


 提督はホッと安堵の息をつく。


「何とか耐えましたが、次は……」


「分かっている。こちらの戦力が削がれる前にやるぞ」


「ハッ!」



「っ!アルミードとレーヌより入電!『我、機関損傷!戦速維持困難!』」


「なに!?」


 通信兵からの報告を聞き提督は目を見開く。


『指揮所から艦橋!アルミードとレーヌが艦隊から落伍しています!』


 艦隊から黒煙を上げるアルミードとレーヌが艦列から逸れていく。


「やはり16インチには耐えられなかったか!」


「くっ!」



 しかし直後にサザンクロスに砲弾が3発直撃し、その内1発は弾いたが2発が左舷副砲群に直撃し、数門を吹き飛ばす。


「ぬぉっ!?」


 衝撃が艦全体に伝わり、提督は倒れそうになるも何とか踏ん張る。


「ひ、被害報告!」


『左舷3番及び5番副砲に直撃!死傷者多数!!』

『されど航行に支障なし!』


「ダメージコントロール!急げ!」


「まさかこうも早く当ててくるとは」


 提督は相手の砲兵の錬度に息を呑む。



 敵戦艦部隊から雨霰の如く砲弾が艦隊に襲い掛かり、トリオンファン、デヴァスタシオンにも砲弾が直撃するも損傷は軽微であった。


 そしてその時は訪れる。



「敵旗艦、サザンクロス、トリオンファン、デヴァスタシオンの有効射程に入りました!」


「よし。目標、敵旗艦!全艦!撃ち方はじめ!!」


「目標、敵旗艦!全艦!撃ち方はじめぇ!!」


 提督の指示を艦長が伝声管に向かって復唱し、サザンクロス級の3隻の戦艦の主砲が敵艦隊に向かって一斉に轟音と共に火を吹く。




「敵艦発砲!!」


「来るか!」


 艦橋から出て指揮所にいる司令官は上空を見上げる。



「だんちゃぁぁぁぁぁぁぁく、今っ!!」



 空気を切り裂く音が徐々に大きくなり、ソビエツカヤ・ロシアの周囲に着弾すると、爆発と共に辺りが火の海と化す。


「な、何だあの砲弾は!?」


「ま、また来ます!!」


 正体不明の砲弾に司令官は驚愕するも続けて砲弾が飛来し、ソビエツカヤ・ロシアの周囲に着弾して辺り一面を火の海にする。


「これは、まさか――――」


「敵艦発砲!」


 司令官が最後まで言い終える前に更に敵艦が砲撃する。


「これは、近いぞ」


 徐々に近付いてくる飛翔音に司令官は息を呑む。



 そして直後にソビエツカヤ・ロシアの周囲に着弾して爆発と共に炎上し、その内2発が直撃する。


「ぬぉっ!?」


 その瞬間爆発が起きて艦全体に衝撃が走り、更に甲板上で炎が上がる。


「ひ、被害報告!」


『甲板上及び艦内で火災発生!速射砲及び機銃群の弾薬が爆発しています!!』


 次々と報告が防空指揮所に上がって来て直後に左舷の速射砲群が次々と爆発を起こす。


「やはりこれは、ナパームか!?」


「司令!ここは危険です!中にお入りください!!」


 司令官は副長に押されながら艦内に入れられると、直後に飛翔音が響く。 


 そしてソビエツカヤ・ロシアにいくつかの砲弾が直撃し、忽ち炎に包まれる。




『敵旗艦に直撃!甲板上で火災発生!大炎上です!』


「おぉ!!」と艦橋要員たちが声を上げる。


「さすが『五式複合弾』ですな」


「うむ。扶桑海軍から性能は聞かされていたが、まさかこれほどとはな」


 炎上する敵旗艦を見ながら提督と艦長はサザンクロス級が放った砲弾を思い出す。


 五式複合弾は徹甲弾に榴弾、焼夷弾の三種類の砲弾を一つに纏めた砲弾で、敵艦を貫徹した後内臓された可燃物を艦内部に撒き散らし、最後に爆発を起こして辺り一面を炎の海にすると、極めて攻撃的な砲弾である。

 元々扶桑海軍で開発されていた物で、試験運用を兼ねてグラミアム海軍にいくつかが提供され、サザンクロス級に搭載されていた。


「艦長!ベルキューズ級の有効射程距離に入りました!」


「よし!敵旗艦に集中攻撃!このまま沈めるぞ!」


 

 その後ベルキューズ級戦艦も含めた戦艦群の砲撃が一斉に開始され、炎上するソビエツカヤ・ロシアに砲弾の雨が降り注ぐ。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――




「見えた!敵機動部隊だ!」


 空母から飛び立った攻撃隊はロヴィエア連邦国海軍の機動部隊を捉える。


「いいか!狙うは空母だ!それ以外は空母が無理と判断した機が狙え!!」


 ジル攻撃機に乗る攻撃隊の総隊長は各機にそう告げる。


「っ!マートより敵機発見との報告が!」


「来たか!戦闘機隊に連絡!相手をしてやれ!」


「ハッ!」


 すぐに攻撃隊の周囲を飛ぶ戦闘機隊が増装を切り離して速度と高度を上げて敵戦闘機の迎撃に向かう。


「行くぞ!訓練通り這う様に!!」


 攻撃隊は急降下爆撃機と雷撃機と分かれてそれぞれの攻撃高度へと向かう。





 攻撃隊が敵機動部隊へと向かう中、ロヴィエア海軍とグラミアム海軍の戦闘機隊が接敵し、激しい空戦が繰り広げられていた。


「くそっ!振り切れん!」


 ロヴィエア海軍の主力戦闘機『Yak-9』とグラミアム海軍のジークとファルコが飛び交い、Yak-9がジークに追い回されている。


 ジークに巴戦を仕掛けようとYak-9が旋回するも、運動性能ではジークの方が遥かに上であっという間にジークがYak-9の背後に付く。


「若干古いが、ジークを舐めんなよ!」


 ジークを操る搭乗員は20mm機関砲の引金を引き、両翼の20mm機関砲が火を吹いてYak-9の右翼を蜂の巣にして破壊し、機体は回転を起こして海へと落下する。


「どうだ!」


 落ちていく機体を確認すると敵機に追われている味方機を見つけてすぐに救援へと向かう。


「くそっ!気をつけろ!こいつら手強いぞ!」


 Yak-9のパイロットは他のパイロットに警告するも直後にファルコが直上から両翼の30mm機関砲と機首の20mm機関砲を放ち、敵機体を蜂の巣にする。


「っ!」


 ファルコの搭乗員は上昇するべく操縦桿を後ろに倒して上昇しようとするも敵機が後ろから迫って来るのを勘で察してとっさに操縦桿とフットペダルを右に倒して機体が右方向へ傾きつつ針路を変え、それによって攻撃を加えようと敵機が機銃を放つも全てかわされる。


「馬鹿な!?今のをかわしただと!?」


 Yak-9のパイロットは驚愕の表情を浮かべ、直後に後ろから迫ってきた別のファルコの機銃掃射を受けて蜂の巣にされ、炎を吹き出して落ちていく。


「すげぇ!このファルコ、ジークより凄いぞ!」


 ファルコの性能に搭乗員は驚きを隠せなかったが、すぐさま気持ちを切り替えて手近の敵機を探す。





「撃て撃て!!やつらを叩き落せ!!」


 ロヴィエア海軍の機動部隊は攻撃隊の襲撃を受け、各艦から対空兵装や両用砲から無数の弾や砲弾が放たれ、密度のある弾幕が張られる。



 海面すれすれの超低空飛行で機動部隊へと迫るジル雷撃隊は海面に砲弾が着弾したことで発生する水柱や衝撃波に襲われながらも突き進む。


「こ、これが実戦の空気か!」


 訓練と異なる実戦の空気にジルの搭乗員は身体を強張らせて息を呑む。


「だ、だが!扶桑海軍との合同訓練の時の弾幕と比べれば!なんて事は無い!!」


 直後榴弾の着弾で上がった水柱に巻き込まれたジルが海面に叩きつけられる機が現れ、更には運悪く榴弾の直撃を受けたジルが爆散する。


「3番機と5番機、8番機が墜ちました!」


「くっ!」


 機銃から雨霰の如く放たれる弾や破片がジル攻撃機に襲い掛かるも、直撃直前で何かに弾かれたかのように弾や破片はあらぬ方向へ飛んでいく。


「ディック!魚雷を投下するまで頑張れ!!」


「了解!」


 操縦席に座る搭乗員は後ろの席で集中している搭乗員が返事を返す。


 グラミアム海軍の雷撃機と急降下爆撃機の乗員数は操縦員に通信員兼偵察員、後部機銃手の計3名で構成されている。この点は扶桑海軍でも同じだ。しかしグラミアム海軍では、通信員兼偵察員は魔術師である事が絶対条件で、理由は魔法障壁を張る為である。

 魔法障壁は使用する魔力の量を増やすごとに強度が上がり、その強度は80mmクラスの高射砲の直撃に耐えられるが、その分維持できる時間も長くは無い。


 だが、今回は小口径の弾と榴弾の破片らしく、障壁が消える気配は無い。



『こちら6番機!巡洋艦が前に来た為、このまま投下します!』


 敵機動部隊に迫る雷撃隊だが、それを護衛艦が見逃すはずも無く、盾になるべく雷撃隊の針路に立ち塞がる。それにより空母攻撃を断念した雷撃機3機が魚雷を投下して一足先に離脱する。

 投下した魚雷3本は一直線に走り、針路を塞ぎに来たロヴィエア海軍の『キーロフ級巡洋艦』の1番艦『キーロフ』に全て命中し、キーロフの右舷に三本の水柱が上がり、船体は三箇所を大きく抉られる。


「さすがにタダで通してくれるわけ無いか!」


 激しい弾幕を回避して命中しそうになる弾や破片は魔法障壁で弾いて雷撃隊は空母に向かう。




「えぇい!なぜだ!?なぜ敵機を落とせんのだ!?」


 ウクライナ級航空母艦の艦長は攻撃を受けても向かって来る雷撃隊に狼狽していた。


「敵機の目の前でなぜか弾が弾かれています!恐らく敵機は何らかの障壁を張っている模様!」


「そんな馬鹿な事があってたまるか!障壁程度で防げれるものではないぞ!?第一どうやって――――」




『敵機急降下ぁっ!!』


「っ!?」


 監視所からの叫び声の様な報告がブリッジに響き、直後にジュディ爆撃機が機首を真下に向け空母へと急降下する。


「撃て撃て!!撃ち落せ!!」


 指揮官の怒号を掻き消す轟音が機銃と両用砲から放たれ空母の上空に弾幕を張る。



「……」


 急降下中のジュディの搭乗員は榴弾の爆発時の衝撃波により機体が振動するのを感じながら空母を見据える。


 自分の機体の周りには同じく急降下するジュディ爆撃機が空母を目指すも、運悪く榴弾の直撃を受けた隣の機体が爆散する。


(まだだ……まだだ……!)


 空母が迫りつつある中搭乗員は投下レバーを握り締めてタイミングを待つ。



『隊長!急降下爆撃隊です!』


「っ!」


 急降下爆撃隊に気付いた雷撃隊のジル1機の搭乗員が隊長機に報告し、隊長機の操縦手は顔を上げる。


「チャンスだ!空母が回避行動を取っている!」


 急降下する爆撃機からの爆撃を回避しようと空母が回頭を始めていた。雷撃隊にとってはまたもないチャンスだ。


「このチャンスを逃すな!全機!突撃せよ!!」


 雷撃隊は弾幕と護衛艦の合間を潜り抜け空母へ向かう。



「投下ッ!!」


 そして目と鼻の先まで空母が迫る中、搭乗員は投下レバーを引き、開かれた爆弾倉から50番爆弾と両翼の25番爆弾が投下されてとっさに操縦桿を後ろに倒し、ジュディは急上昇する。


 他の機体も爆弾を投下して上昇し、投下された爆弾15発は6つ海上に落ちて爆発して水柱を上げるが、残り9つは空母の飛行甲板に命中し、爆発を起こす。


「ぬぉっ!?」


 衝撃が艦全体を揺らし艦橋に居た艦長はバランスを崩し前に倒れる。


「くっ!被害報告!!」


「飛行甲板に直撃弾が9!航空機離着艦不能!!」


「くぅ!甲板をやられたか!」


 近くにあった机にしがみつきながら艦長は立ち上がり机を叩き付ける。


「っ!レーニングラード及びミンスクにも直撃弾!あぁ!ノヴォロシースクにまで!!」


 すると他の空母もに急降下爆撃隊や雷撃隊の攻撃が襲い掛かり、それぞれ損傷を受ける。


「艦長!我が艦を含め、全ての空母が!」


「なんという事だ。これでは……」




「投下ぁっ!!」


 有効射程内に入った雷撃隊はそれぞれが抱えている魚雷を投下し、重荷がなくなった事によって機体が浮かび上がってそれを利用してジル雷撃機は一斉に離脱する。


 しかし遅れた1機が弾や破片の直撃を受けて機体全体から火を吹く。


「っ!ランド!!」


 友人の乗る機体が炎上して離脱したジルの搭乗員は思わず叫ぶ。


 彼の乗るジルは火達磨になりつつも離脱せずそのまま敵空母へと直進し、機銃から放たれる弾に機体を撃ち抜かれながらも驀進し、ついには敵空母の艦橋に衝突して爆散する。


「……ランド」


 体当たりをして散った友人の名前を漏らし、搭乗員はグラミアム海軍式の拳を作った右手を左胸に置いた敬礼を向ける。



 投下された計5本の魚雷は回避行動を取る空母へと向かって行き、1本は先を読み過ぎて外れるが残り4本は空母の右舷に直撃し水柱を轟音と共に高く上げる。


 同じく他の空母も2本から3本の水柱を轟音と共に上げ、同時に空母に辿り着けれなかった雷撃機が護衛艦に向けて投下した魚雷が護衛艦に命中して水柱を上げると同時に船体に深刻なダメージを負わせる。


「あれじゃそう長くは持たんだろう。これより帰還する」


 ジル雷撃隊とジュディ爆撃隊は沈み行く敵機動部隊を一瞥して母艦へと向かっていく。






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