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異世界戦記  作者: 日本武尊
第五章
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第五十三話 



 所変わって扶桑国……



  



「わぁ!74式戦車だ!」


 今年で4歳になる息子の響が興奮した様子で目の前の戦車を指差す。


 休暇を取った俺は家族と一緒に陸軍の基地に来ており、後で海軍の軍港に向かう予定だ。


 と言うか休日で自分の職場の見学って、どうなんだろう?まぁ子供たちは喜んでいるからいいか。


 んで、俺たちの目の前には陸軍の最新鋭主力戦車『74式戦車』が何輌も並べられている。


 74式戦車は陸上自衛隊で作られたものより性能は上であり、主砲は新型の110mmライフル砲で、装甲も全体的に数十ミリほど厚くなっている。その上エンジン出力が高くどんな悪路でも速度を落とす事無く疾走出来る。もちろん油圧式サスペンションも搭載している。


「それに61式戦車に五式中戦車!あれはティーガーに四式中戦車まである!」


 響は74式戦車の他に置かれている戦車の名前を言い当てていく。


 今回の為に記念車輌として基地に動態保存されているティーガーの他に訓練車輌の四式中戦車を引っ張り出している。


 61式は74式に並ぶ主力として、五式中戦車は近代化改装が施されて最新鋭の電子機器を試験的に搭載している。


「詳しいな、響」


「うん!辻のお姉ちゃんが暇がある時色々と教えてくれるの!」


 辻ェ。息子に何教えてんだよ……しかも品川も未来に何かと教え込んでいるし、二人揃って何やってんだか……


 そのせいで響は陸軍系、未来は海軍系に興味を持つようになっているんだよねぇ。まぁ両軍の総司令をしている父親としては嬉しい、のかねぇ




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ある程度基地を見回ってから、次に海軍の軍港を訪れた。


「わぁ……!凄い!!」


 今度は未来が目の前に広がる光景に眼を輝かせていた。


 大規模な近代化改装が施された戦艦や巡洋艦、駆逐艦が湾内に停泊しており、港には新鋭の『はるな型護衛艦』に『たちかぜ型護衛艦』『はつゆき型護衛艦』などの様々な新鋭護衛艦が停泊している。


「あれが新鋭の空母なんだ!」


 何より圧巻なのは専用の港に停泊している航空母艦らである。



 計8隻も居る航空母艦らはどれも装甲化されたアングルドデッキの飛行甲板を持ち、カタパルトも全て蒸気式を2基を搭載しており、艦橋には各種電子機器が搭載されている。


 そしてこの8隻の最大の特徴は全て艦載仕様の原子炉を持つ原子力航空母艦であることだろう。


 忘れがちだが、特爆は原子炉の開発過程で生まれた偶然の産物であって、その開発自体は中止になってはいないが、その原子炉の開発速度が特爆の開発によって向上したのは皮肉だろうか……


 そして完成した原子炉を使った発電所第一号は建設後無事に稼動し、現在も既存の発電所のいくつかを残して原子力発電所を建設中である。


 でもって艦船に搭載出来るサイズまで小型化した原子炉の開発に成功し、その艦載型原子炉の試験艦『むつ』を建造し、様々なテストを重ねて実用化した原子炉を完成させた。


 そして原子炉を搭載する航空母艦『赤城型原子力航空母艦』2隻、『加賀型原子力航空母艦』2隻、『蒼龍型原子力航空母艦』2隻が建造され、『翔鶴型原子力航空母艦』2隻が近々就役する予定で、3番艦と4番艦が近い内に竣工する予定だ。

 ちなみに建造資材は先代の赤城型航空母艦に加賀型航空母艦、翔鶴型航空母艦を順に退役してから解体し、それらから得た資材を建造に回している。


 ちなみに蒼龍型航空母艦と飛龍型航空母艦の2隻はグラミアム王国へ売却されて、第二の艦生を送っている。


 各原子力航空母艦の艦載機は艦戦の烈風に艦爆の彗星、艦攻の流星、艦偵の彩雲、そして海軍の新鋭のジェット戦闘機『閃雷』である。


 閃雷の形状は『F-4ファントムⅡ』に酷似してカラーリングは零戦52型以降のカラーリングが施されており、その運動性能はジェット戦闘機としてはかなり高い上に攻撃機として運用が出来る性能を持ち、最大でも各種ミサイルを4基搭載出来る。

 内蔵武装は機首の新型20mm機関砲一基で、連射速度が従来のものとは比べ物にならない速度を誇る。


 ちなみに海軍や空軍では今も尚レシプロ機が現役で使用されている。


 なぜかと言うと、別にジェット機を使うまでも無い場面が多いのだ。


 かなりの近場への緊急発進はジェット機では速過ぎたり、対処しづらいと言うパイロットからの問題があって、その場合はレシプロ機が対応すると言うのは海軍ととある組織で少数であったのだが、ここ最近緊急発進の件数がかなり多いので予備役となっていたレシプロ機の運用を本格的にしたのだ。


 海軍の場合はジェット機への機首変更を頑なに拒んでいるパイロットが多く、長い説得にも全く応じず結局上が折れる形でレシプロ機の運用を続けているのだ。

 ってか海軍の場合理由がしょうもないって言うなよ。そのパイロット達の迫力って言うのが半端じゃないんだからな。


 とまぁそんな事があってレシプロ機は今も尚近代化改装が施されて現役で空を飛んでいる。


 そのレシプロ機だが、近代化改装が施された事で既存の主力レシプロ機の性能は先の大戦時の倍以上の性能に向上しているので、ジェット機に引けを劣らない活躍を見せている。



「空母も凄いけど、やっぱり大和や紀伊が一番だね!」


 4歳になる娘の未来が停泊している大和型や紀伊型を見て興奮する。


「あぁ。近代化改装がされた分大きく変わってしまったが、まぁそれでもあの船が一番なのに変わりは無いな」


 新鋭の護衛艦に搭載されている武装や電子機器の一部を搭載する為の近代化改装が施された大和型や紀伊型の他の軍艦の姿はかなり変わっている。

 特に大和型や紀伊型は副砲を『オート・メラーラ127mm砲』の形状をした127mm単装速射砲に、高角砲は全て『MK42 5インチ砲』の形状をした105mm単装速射砲に、一部機銃は撤去されて残りは形状をそのまま中身は新鋭の25mm三連装機関砲に換装されており、艦橋には各種電探を各所と煙突と艦橋の間のスペースに棒状のタイプを搭載しているので、パッと見るとかなり大掛かりな改造が加えられているのが分かる。



「?ねぇお父さん」


「何だ?」


「どうしてあの駆逐艦や巡洋艦は一箇所に集められているの?」


「あぁ……あれか」


 未来の指差す方向には、軍港の一角に集められた駆逐艦や軽巡、重巡が並べられており、俺はその姿を見て一瞬悲しい気分が過ぎる。


「役目を終えて、解体を待っているんだよ」


「解体?」


「バラバラにする事だ」


「……」


 それを聞き未来は悲しい表情を浮かべる。


「どうして?残しておけないの?」


「あぁ。残念だが、あの艦達は改造しても性能向上は見込めないんだ」


 新鋭の護衛艦が次々と建造されている中、どうしても性能に低さが目立ち始めている型の古い船は近代化改装を施しても性能向上は見込めれず、それらは一部は退役しては解体されるか、グラミアムへ売却されているのだ。


 神風 Ⅱ型駆逐艦に睦月型駆逐艦の前期生産型、川内型軽巡洋艦3番艦の那珂が該当しており、今工廠ではネームシップ以外で最後の神風Ⅱ型駆逐艦が解体されている頃だろう。

 残されたネームシップは記念艦としてとある場所に移されている。


 ちなみに那珂は元々グラミアム王国へ売却される予定だったが、移送途中で暗礁に乗り上げて座礁したことによる損傷で修復不可と判断され、解体が決定している。


(やっぱり、今まで戦ってくれた軍艦を解体するのは、悲しいものだ)


 特に最初期から共に戦った軍艦らとあって、気の引ける思いだ。


「だが、あの艦達が解体されて出た資源は今後建造される新鋭艦の糧になる。決して無駄にはしない」


「そうなんだ」


 しかしそれでも未来の表情に変化は見られない。


(品川め。未来に何を吹き込んだんだ)


 自分は休暇中の身であっても以前とは別の場所に移設した総司令部で仕事をしている品川に文句を向けずにはいられなかった。





 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――





 所変わって海中……




 本土から22海里以上の海域、扶桑海軍の新鋭潜水艦『うずしお型潜水艦』の1番艦『うずしお』、3番艦『いそしお』、5番艦『くろしお』、6番艦『たかしお』が艦と艦の間を大きく開けて陣形を組み、海中を静かに航行していた。



「あ~、あっちぃし暇だな~」


 その中のくろしおの艦内、電子パネルの光のみの薄暗いブリッジでかつて潜水艦伊58の艦長をしていた女性艦長は海上自衛隊の制服のデザインに似た海軍の新制服の襟を持ってばたつかせて風を起こす。


「そう言わんでくださいよ、艦長。こうした哨戒任務も我々の得意分野じゃありませんか」

「それに以前と比べれば空調が効いているじゃないですか」


 副長は苦笑いしながらそう答える。


 以前の伊号潜水艦と比べると空調が付いている最近の潜水艦はまさに潜水艦乗りにとっては天国と言えるだろう。


「そうは言っても、暇なものは暇なんだよ。まぁ暇な事は平和で良いんだがな」


 苦虫を噛んだかのような表情を浮かべて首を鳴らす。


「とは言っても、帰っても暇なだけだよなぁ」


 潜水艦による哨戒は数隻一組で構成して一回につき一週間行われ、その後次の班の艦隊と交代して港へ帰還すると言う流れとなっている。

 そして彼女は帰っても何かがあるわけでもないので、暇でしょうがないのだ。


「なぁ副長。帰ったら私と付き合うか?」


「いくらなんでも唐突過ぎるでしょう、それ」


「だよな~」


 彼女は冗談のつもりで言ったのだろうが、言われた側には少しドキッとする内容ゆえに副長は頬を赤くし、周りではニヤニヤとしている。


「……何か面白い事でも起きないものかねぇ」


「縁起でもないこと言わないでくださいよ。本当に何か起きたらどうするんですか」


 副長は苦笑いを浮かべる。





 しかしメタい話、人はそれをフラグと呼ぶのだ。





「ん?」


 聴音機に着いていた聴音手はヘッドフォンを片方の手で押さえつけてもう片方で聴音機の感度を上げる。


「これは……艦長!」


「どうした?」


「2時の方向距離は大体7km先でスクリュー音を捉えました!」


「何?」


「味方艦ではないのか?」


「それが、スクリュー音にエンジン音が微妙に違います。何よりこの辺りに味方は随伴艦以外はいませんよ」


「……」


『……』


 副長を含めた全員が艦長をジト目で見る。


「な、何だその目は?」


「あーあ。艦長がフラグめいた事言うから」


「俺はしーらないっと」


「う、うるさいうるさい!誰だって考えている事だ!私のせいじゃないぞ!」


「だからって口にすることじゃないんじゃないですか?」


「艦長日頃そういう事ばかり言っていますからねぇ」


「口は災いの元って言うけど、ホントなんですねぇ」


「ぐぅ……」


 事実故に艦長は言い返せれなかった。


「と、兎に角だ!潜望鏡深度まで浮上!接近しつつ正体を確認する!随伴艦にも打電しろ!」


『了解!』


 顔を赤くしつつ艦長は指示を飛ばして船員はすぐさま行動を起こす。



「機関停止!潜望鏡上げ!」

 

 艦長の号令でくろしおの機関が停止して潜望鏡が海面へ突き出る。


「さてと、何が見えるかな」


 制帽を前後逆にして潜望鏡を覗く。


 空は雲がちらほらある晴れで、視界は良好であった。


「こっちにはいないか」


 左に旋回して何も無いのを確認した後、右に旋回させる。


「っ!」


 そして潜望鏡から見えた光景に艦長は目を見開く。


「な、なんだよあれ」


「艦長?」


「副長も見てみろ!」


 艦長と代わって副長が潜望鏡を覗く。


「か、艦隊!?しかも何だあの数は!?」


 その視線の先には多くの軍艦が陣形を組んで航行していた。


「うずしおより入電!艦隊は見たことの無い国旗を掲げていると!」


「知っている国の艦隊、じゃないのか」


「……」


「艦長」 


「分かっている。潜望鏡下ろせ!急速潜航!至急総司令部に打電だ!」


「了解!」


 通信手はすぐさま暗号電文にて総司令部へ打電する。


「静かに後を追うぞ。もし何かあった場合は」


「えぇ。準備はさせておきます」


 副長は魚雷室へ魚雷装填を指示する。


「……」


 そうして潜水艦隊は密かに国籍不明艦隊の後を追う。





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